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Singalio Rou' Se lef  作者: 篠崎彩人
最終章「雪降る野原に、愛を繋いで」

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第二幕「残火」

 アイカは眠りついている。もう夜なのだ。だがしかし、私は安易に眠りつくことのできない精神を抱えていた。ともすれば負の思考を肥大化させてくる脳と闘いながら、私は、激しい渇きに癒しを渇望していた。他に望む物はすでになかった。肉体にとって必要不可欠な物はもうありあまるほどに私を満たしている。だが、私の精神に渦巻く飢餓は、それを以てしてもその心を安息の場に留めて置いてはくれないのだった。

 いたずらに涼しい夜風を顔に浴びながら、荒れ狂う落ち着きのない海に少しでも穏やかな場所を創ろうと専心する。星空、か。昔は塵のように貧相な光の粒が無意味に漂っているだけとしか思わなかったが、今は、気持ちの良い懐かしさを提供してくれる好もしい存在となった。よく観るようになってからは、星々にもそれぞれ随分といろいろな表情があることを知った。明るい星もあれば暗い星もある。今にも消え入りそうな星の周りには、自らの輝きを誇示するような星々がところ狭しと瞬いている。赤い星に緑色に光る星。全天に、毎夜こんなに多彩で巨大な劇が繰り広げられている事実に、私は心から感動している。

 名前をつけた星もある。私の知る名は、思い出となるような物に関してほとんどない。だからそれに因んで名づけられた星の数もそれこそ数えるほどでしかない。が、それでも私は気に入った星に、私の心に残る名をあてがった。大きくて大切な思い出と共に、思いを込めて、縋るように。

 夜空を手に入れたのは、霧が全て飛散して空が晴れ渡ったからだ。自然を、もはや完全な形で手に入れたといっていいのだろう。

 これから、私はどうなっていくのだろう。心に描いた風景に思いを馳せて、その風景のために命を繋いできた私には、何が残されているのだろう。二人で、幸せに生きていく未来が残されているのだろうか、それとも……。

 あの霧に問うこともかなわない。自分に問うことにも星屑ほどの意味もない。それでもこの星空を見上げていると、自分の心がひらけて、光の、希望の無数の粒で満たされていくような気がした。

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