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Singalio Rou' Se lef  作者: 篠崎彩人
最終章「雪降る野原に、愛を繋いで」

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本編/第一幕「歲月」

 あれから、幾年かがたち……。そういえば、随分と似てきたものだと思った。アイカのことだ。どうしても、記憶にある歌姫の姿と今の彼女の姿とが、重なって見えてしまうのだ。いや、私の記憶さえ確かならば、彼女とそれとは全く同一だ。そこで私は、ある驚愕すべきか驚喜すべきかの思考に辿り着いてしまった。つまりは、私の心の中にある、小さな一つの、それでいてその存在は圧倒的な光彩の球となって私を捉えて離さない、微かな恒久の憧れである歌の君の姿そのままが、今こうして何事もないように私の目の前にいるような気がするのだ。 恍惚する精神がある中で、脳裏は確実にその異様さを感じ取っていた。

 そこには、私の胸を締め付けるような、悲しい裏づけが幾つかある。一つには、服。アイカの、締麗な、黒いドレスだ。なぜそうまで艶やかなのかというくらい、清楚で整然としたその衣装は、彼女の髪にも負けず劣らず、その体にとても良く合っている。何故だか、合わさっているのだ。彼女の背丈に合わせて、その服もまた大きくなっているのだ。しばらくは気づかなかったがそのうちになって私は気づいて慄然とした。これじゃまるで.……植物だ。静かで、自らを華やかに見せる力を持っていて、逞しく、他に依る術を知っている力強い、一個体の生命体なのではないか。だとしたら、私は……寄生されているのではないのか。そう思った後すぐに、私は自分の考えの不気味さと醜さに怯えた。

 他にも幾つかある。アイカが意識なく自らという深く暗い海の底の漂流者であった時、彼女は碌に食事をしなかった。植物の液を飲ませたり、水を飲ませたり、そうしたことはできたのだが、ただ、最近ではそれだけではどうしても不十分だったように思えてきた。そして、それらよりも何よりも、私は、決定的にアイカに関する私の知らない何かを意味する光景を、見てしまっているのだ。考えたくもなく、幻覚だとして押し込めていた苦い記憶だが、私は、もうそれを無視することができなくなってしまっていた。

 今、私と向き合って、可愛らしく潤った唇から美しく歌声のような声で語りかけてくるこのか弱そうな可憐な少女は、一体何なのだろう。私は、遂に最愛の人を疑ることとなってしまった。

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