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Singalio Rou' Se lef  作者: 篠崎彩人
第三章「祈りの聖夜に」

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第二幕「折れた氷を抱くのなら」

 では、傍らにいてくれている、アイカについて語ろう。もう大分昔のことになるが、私はアイカを抱きかかえ、あの全てが赤く塗り尽くされた場所から、外へと向かった。私には、まだ捨てられないものがある。甘い揺らめきの中で、私が自らの意志で、その思いを力強く握り締めた時、私は、外に立ち向かう勇気を、外に向かう一歩を、何物でもない自らの力で勝ち取ることができた。その後に何があったか、語ることはできない。いや、語るべきではない。以前にも類似した内容に触れたが、これこそ私如きの意識の内に収まってくれるような事象ではなく、一つ次元上の世界に、対象を明確にするならば神に憧れるように、かつて触れ得たその世界については夢見るように語る術しか持ち得ないのだろう。

 話が大きく逸れてしまったようだ。いや、あながちそうともいえないか。アイカという一人の他人の中に起こった現象、いうなれば悪夢についてもまた、私は空想に想いを託して手探りすることしかできない。よって私が彼女について語ることというものは、彼女自体ではなく、彼女に対する私の想いということになろうか。

 彼女は言葉を失い、表情を失ってしまった。彼女の心を映し出す鏡は、彼女の心の在り所を示すものは、悲しいかな、全ては一片の氷を打ち砕くように、惨く、脆くも砕け散ってしまった。私の心に、小さな破片を突き刺して、それらの存在は、突然に私の前から姿を消してしまった。彼女の心は天高くして、今や、手の届かないところに……。

 背を背後の岩に凭れて、哀願するように、ただただ開けている地を、雲を、そして空を眺める。遥か向こうに見える、雲の端の方から光が漏れ出している。去来する想いに別れを告げ、私は、その方角へと歩を進めて行った。

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