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Singalio Rou' Se lef  作者: 篠崎彩人
第二章「縷々たる日」

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終幕「赤」

 私は、世界の眩さに、改めてその意識を取り戻した。後頭部が酷く痛む。先ほど打ちつけてしまった時のものだろう。だがそれは私にとって嬉しい知らせ、生きていることの証だ。悪い気はしない。

 雨もすっかり上がっている。つい今までの印象とは打って変わって、木々と、その葉の間を抜けて降りて来る木漏れ日とは実に爽やかで、何故かしら今まで考えることも気づくこともしていなかった、瑞々しい木々の香りと相侯って、私の目と鼻を楽しませてくれる。木の葉のさんざめきも今や、悪しき暗黒の空間を洗い流している音のように感じられる。人間の感覚とは、斯くも不安定で不思議な物なのかと改めて実感した。

 しかし、そんな物に満足して良いような光景では、決してなかった。ふと地面を見渡すと、そこにはあまりに対照的な異形のものが広がっていた。赤。今までに見たどんな赤よりも、鮮烈で美しく安らいだ、赤。血の赤。いやそれともまた異なるものか。目に入るものが赤いのか、それとも目その物が、全てを赤だと捉えているのか。もしかすれば私は、自ら待ち望んだ、いや手に入れようとついそこまで手を伸ばしていた、快楽の園へと、足を踏み入れたのかもしれない。

 あたりを、静けさと荘厳さとの織り成す私の周囲を見渡してみる。赤く揺れる空。法悦に身をよがらせているかのような木々。ここにあるものは私の自由。あらゆるしがらみから解き放たれた、何物からも束縛されない、幸せを約束された空間の直中に、私は存在しているかのようであった。

 だが、私を許していた者は、どうやら、私だけであったようだ。

 そう、何気ないあるただ一つの

  "生き物" の行動は、

 私の瞳を捉えて離さなかった。

 私は、その生き物のあまりの変わりように、一瞬それが何であるかわからなかった。いや、わからないふりをした。だが、現実はそれを許さなかった。私の正面の、注意を捉えて離さない生き物は、紛れもなく、私の可愛いアイカだった。

 私は何を思う間もなく、アイカの方へと駆け寄った。そして、両の腕でしっかりと抱いた。私の脚を、私の顔を、アイカは殴り傷つけてくる。だが、そんなことは、私にとってはなんでもない。むしろ、贖罪として、受けねばならない物だ。ただ、私はひたすら、懇願した。


The End of Singalio Rou' Se lef Episode 2

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