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君は無敵の姫君  作者: violet
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マーガレットの覚悟

そして、ギリアンがマーガレットに殴られたところに戻ります。

ギリアンは、マーガレットの拳を(わず)かに()らして受け、ダメージを軽減させ、返す(きびす)でマーガレットを蹴りにかかる。慌てて体勢を立て直したマーガレットが()らす(すき)に、ギリアンはマーガレットを押さえこんだ。

ヒュー、と一連を見ていたレイクリフとイースが息を吐く。


「マギー、怒りのままに手が出るお前は隙だらけだ。」

首に腕を回され、左手を後ろに(から)め取られているマーガレットは、ギリアンを(にら)むがすぐに目を閉じた。


「お兄様の勝ちです。

敗者は勝者の指示に従いますわ。」

ツーンと顔を横にそむけ、悔しそうにマーガレットが言う。


「すごい兄妹げんかだな。」

レイクリフの言葉にイースも頷く。

「補佐官はとても文官の動きではありません。」

聞こえていたのだろう、ギリアンが苦笑いする。

「軍人に見せるにはお恥ずかしい限りです。

マギーが訓練を絶やさないので、兄としても多少はしますよ。」

多少の訓練ではないことは、レイクリフにもイースにもわかっている。


マーガレットは椅子におとなしく座っている。次の指示を待っているようだ。

敗者となると、実に潔い。

「お兄様が囮が必要と言うならば、なりましょう。

相手が、この男と言うのが嫌なのです。頭ではわかっているのですが、嫌な気持ちが先だってしまって。」

嫌を2回言った。


「マギー、もう貴女だけだ。」

レイクリフが片膝ついて、マーガレットの前に跪く。


「私は出来た女性ではありませんから、過去は過去なんて言えませんわ。

過去と同じように、直ぐに他にも女性を作ると思ってしまうのです。」

レイクリフは立ち上がって、イースを振り返った。

「イース、俺もうダメかもしれん。

マギーが壁を作って話しているように聞こえる。

いつもの、罵声を浴びせられる方がいいと思うなんて。」


「変態。」

マーガレットが(さげす)んだ目でレイクリフを見ている。

イースもギリアンも同じように思ったが、ギリアンに至っては、妹にはこれぐらいがいいのかもしれない、とさえ思っている。


「レイクリフ様、失礼しました。」

マーガレットが、優しく言うと、

「レイクリフ様だって、新鮮だなぁ!」

レイクリフがマーガレットに、たたみかける。

他人行儀に話すマーガレットと、親しく呼んで欲しいレイクリフの攻防戦である。


「デートは目立たないといけないからなぁ。

劇場で1回、夜会で1回、公園の散策に1回。」

あれもこれもと、レイクリフが指折りながら楽しそうに話す。

「俺、デートなんて初めてだ。」

お前は、即ベッドだったのか!マーガレットの頭の中は煮えくり返っている。そういうマーガレットも初めてのデートである。


「レイ、お前将軍だぞ、仕事を3日もサボれん。どれか1日にしろ。」

呆れたようなイースの声が響いた。


「補佐官、デートでどこまで許される?

キスはいいんだろう?」

とうとうマーガレットの堪忍袋の緒が切れた。

「お前は情緒というものがないのか!」

マーガレットがレイクリフを殴りにかかった。


「おおっと。」

殴りにきたマーガレットの拳を逸らして、レイクリフはマーガレットを抱き締めた。

「たしかに、補佐官の言うとおりだ。隙がある。」

マーガレットは怒りと羞恥で、レイクリフに抱かれて真っ赤になっている。

「軍人を嘗めるな、簡単に殴れると思うな。

それにしても可愛いな、真っ赤だ。」

マーガレットの頬を撫でにきたレイクリフの手は()まれた。



笑いが止まらないイースをレイクリフがギロリと睨む。

「隙がありましてよ。」

勝ったとばかりにマーガレットが言うのを横目で見ながら、レイクリフが手の噛み傷をペロリと嘗める。

「間接キスだな。」

マーガレットの蹴りを僅かに逸らしたレイクリフが声を出す。

「どうやったら、その靴で機敏に動けるんだ!?」


「女の靴は武器で、コルセットは防具というのが、マギーの持論だ。」

ギリアンの言葉に、身をもって知っているレイクリフは頷くばかりだ。



改めてレイクリフを見る、顔はいい、女が騒ぐはずだ。公爵という事で財産があり生活に困ることはない、王家のような責務もない。しかも名ばかりの貴族でなく、権力もあるワーグナー公爵家だ。本人は将軍職についているという事は武力は秀でているのだろうが、本当のバカに将軍は務まらない。


あの顔なら、可愛い子供が生まれるだろう。

お兄様の様子を見る限り、この結婚はひっくり返せない、しかも王意だ。

マーガレットはため息をつきながら、いろいろ考える。

いつかは、家の為に結婚しなければならない。

好きでない男の事は、女は冷静に見れるのだ。


きっと軍務で家を多く空けるであろう、凄くいい!

がっしりした羨ましいぐらいの体格だ、あれは好きだ。

しかも、まともに対戦したら勝てないだろう、悔しいが。

そして、昔の女達に言われるのだ、グラント公爵家の力で正妻になったと。


絶対に嫌だ!!


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