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君は無敵の姫君  作者: violet
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嫁ぐ夜

ジルベール王子の婚約が発表され、多くの女性達が悲鳴をあげることになったが、王として迎えられるという事で納得せざるを得なかった。

レイクリフ、ジルベールと独身の大物が婚約したことで、残る優良物件としてギリアンが数多の女性達から狙われるようになった。



「やあ、これは綺麗だね。」

マーガレットの部屋に入ってきたギリアンが驚いている。

「お兄様。」

ワーグナー公爵家に持って行く荷物を広げていたマーガレットが振り返る。

「マギーが居なくなると寂しいよ。」

「安心して、頻繁に帰ってくる予定だから!」

「それもどうかと思うよ。」

お互い顔を合わせて笑いあう。


「お兄様には、心配ばかりかけたと思うわ。」

「それは否定しないな。

僕だけではない、父上の頭が薄くなったのはマギーのせいだ。」

それは家系がそうなのでは、と言いたいところをこらえる、心配させたのは間違いないから。


「父上が待っている、食事にしよう。」

どうやら、ギリアンは食事に呼びに来たらしい。

マーガレットは、手に持っていたドレスやアクセサリーを侍女に預け、階下の食堂に向かった。


「お兄様はどなたか、想う方はいらっしゃらないの?」

「妹が判断基準だと、誰もが良く見えるし、ダメに見える。難しいものだよ。」

「ひどーい。」

こうやって食堂に向かうのも最後だと、お互いわかっている。


明日は、マーガレットの結婚式だ。


「お父様、珍しいですね。こんなに早くにお帰りとは。」

食堂の席に着くなり、マーガレットが父親の方を見る。

「当たり前だ。明日は娘が嫁ぐのだぞ。」

「大丈夫ですわ、頻繁に戻ってきますから。」

ギリアンに言ったのと同じ事を言う。

「バカ者!

ワーグナー公爵家を取り仕切る立場になる者が、簡単に帰って来てはならん!

それでなくとも、素のお前でよいと言う奇特な男なのだ。愛想をつかされないようにせねばならん。」

公爵もギリアンも、マーガレットが帰ってくると言うのが嬉しいのだ。だが、それでレイクリフの機嫌を損ねてマーガレットが不幸になるのは困る。


「マーガレット、今はワーグナー公爵に好かれているかもしれん。

だがな、愛情とはお互いで育てていくものだ。

お前もワーグナー公爵を大事にするのだぞ。」

我が儘に育ててしまった、とグラント公爵は笑う。


「わかってますってば!」

どうやって大事にするかはわからないが、少しはレイクリフが好きだ。


父親の小言で始まり、ギリアンの仲裁が入って、マーガレットのおしゃべりで終わる、いつもの食事風景である。

嫁ぐ前夜だからと、料理長がマーガレットの好物ばかり作ってある。

これが食べ納めか・・・、やっぱり、頻繁とはいかずとも食事に帰ってこよう。

ゆっくり休むように、と言われ部屋にもどる。



早めに眠る予定だった、レイクリフが壁を登ってこなければ。

「ちょっとは我慢できないの!?

明日は結婚式よ。」

ベランダから入って来たレイクリフの前に仁王立ちするマーガレット。


「だって、明日かと思うと、寝れなくて。」

どこの乙女だお前は?デカイ図体のくせに。

「独身最後の夜を二人で過ごそう。」

そっか、レイクリフには家族はいない。姉は王家に嫁ぎ帰ってくることはない。

「じゃ、今夜は妹役をやってあげる。」


笑いながらレイクリフがマーガレットの頭をコツンとする。

「マギーが妹じゃ、心配ばかりだ。」

「お兄様にもさっき言われたわ、お父様の頭が薄くなったのは私のせいだと。」

「妹役ではなく、恋人役をお願いしたい。」

「これからも、ずっと恋人よ。」

マギー!と呼んで抱きついてきたレイクリフはマーガレットに避けられる。


「妹役だってば!」

ブツブツ、レイクリフが文句を言っているが、マーガレットに聞き入れられるはずもない。

「マーガレットの子供の頃の話を聞かせてくれ。」

諦めたレイクリフが、マーガレットの横に座る。

「想像通りのお転婆だったわ。」

だろうな、急にこうなるとは思えない、レイクリフの呟きはマーガレットに聞こえた。

「毎日、ドレスはドロドロでボロボロ。お母様によく泣かれたわ。

お母様は泣く姿もお美しくって、儚げでね、肌なんて透けるように白かった。」

「マギーだって、黙っておとなしくいれば、十分騙せるぞ。」

「お父様にも言われたわ。外では話すなって。

いつの間にか、身体が弱いから社交には出れない、って噂までたつし。」

レイクリフもひどい事を言っているが、マーガレットも言われ慣れていて気にも留めない。


すくっと立ったマーガレットが時計を見て、レイクリフを追い出しにかかる。

「ちょっと、花嫁が目の下にクマを作るなんて悲惨よ!

早く寝たいの、帰って!」

足でゲシゲシ蹴りながら、ベランダにレイクリフを追いやって行く。

「わかった、もう帰るから。」

そう言いながら、レイクリフはベランダの手すりをまたぎ、縄で滑り降りる。

「お休み。」

馬屋に向かいながら、手を振っている。


「お休み、レイクリフ。

明日からは妻役よ、そして貴方の子供の母親役もしてあげるから。」

マーガレットの声は小さくて、レイクリフには届かない。



お読みくださり、ありがとうございます。

やっと、ここまで来ました。結婚式まで後少しです。

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