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君は無敵の姫君  作者: violet
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お互いの想い

グラント公爵家とワーグナー公爵家の婚約は、貴族達の間で衝撃が走った。

対立しているわけではないが、中の良くない両家。

現王妃はワーグナー公爵家より嫁ぎ、レイクリフの姉にあたる。

王太后は他国の王家から嫁いできたが、その前の王妃はグラント公爵家より嫁いでいる。

王妃を排出するライバル家といった関係であり、グラント公爵家は代々宰相、ワーグナー公爵家は軍総司令官を数多く輩出していた。

つまり、内務機関と軍属は対立しやすい家柄ということだ。


多くの女性達と浮名を流しているレイクリフと、滅多に社交界に出ず、教会や孤児院に通って奉仕しているマーガレット。

貴公子達の中には、哀れな政略結婚のマーガレット姫を救い出さねばと話が出るほどである。




レイクリフは視察の帰りに街の教会を(のぞ)きに来ていた。

今日は、マーガレットがこの教会で奉仕をしていると聞いていたからだ。

扉の影から気付かれぬように、こっそり中を(のぞ)いた。側にいるイースは、何してんの、と胡散臭(うさんくさ)げである。

中央で神父と話をしているのが王太后である、レイクリフも顔を見てすぐにわかった。

マーガレットは、少し離れた所で掃除をしている。雑巾で椅子を拭いているようだ。黙々と働いているせいか、レイクリフが覗いているのに気が付かないようである。

マーガレットの姿を見つけた時に、はねた胸の音に自分でも驚いた。


「まぁ、マーガレット、とても綺麗になりましたね。」

王太后が声かけると、顔をあげたマーガレットは嬉しそうに微笑んだ。

「王太后様、神父様とお話はお済みですか。

そろそろ戻らねば皆が心配します。」

どこから見ても、清廉な姫君だ。

「マーガレットの作ったレースもこちらに納めますから、飾られたら見に来ましょう。

それにしても、お掃除も上手ね。この間いただいたお菓子も美味しかったわ。」

ありがとうございます、とはにかむマーガレットの横顔にレイクリフは見とれてしまう、もっと近くで見たい。


教会の静寂の中で微笑む姿は、強く優しく美しい聖女のようだ、と思うレイクリフ。この強いは、心が強いではなく腕力の強さになるのだが、レイクリフの中ではどっちでもいい。


今日のマーガレットは薄青色の小花を散らした柄のドレスで繊細なレースのリボンが付いている。巻き毛のブロンドも同じ布とリボンで飾られていて、とても似合っている。

これ見よがしに宝石のついたアクセサリーで着飾った女性ばかり見ているレイクリフには、マーガレットを見ていると、これが本当の美しさなんだろうと思う。

反面、宝石を着けさせたら、どれほど美しいだろうと思い、自分が与えたいと思う。


参拝者にまじっているレイクリフ達に気が付かず、王太后とマーガレットは警備兵に守られて横を通り過ぎた。

マーガレットの後ろ姿を見ているレイクリフにイースが言った。

「レイ、変ですよ。」

「自分でもらしくない、と思うよ。」

行くか、と言ってレイクリフとイースは馬を繋いである方に向かった。




マーガレットは公爵邸にもどると、教会で時間かかった、と言って中庭に走って行く。

剣を手に持ち、素振りを始めた。

マーガレットは武術の訓練を絶やさない、自分が男性に劣る体力と知っているからだ。その分、俊敏に攻撃できるように、特に足腰の訓練に時間をかける。

レイクリフ・ワーグナー将軍、最初の一撃は奇襲だったことで殴れたが、次はかわされた。

さすがとしか、言いようがなかった。

あの最低男より強くなって、叩きのめしたい。


マーガレットもレイクリフも違う思いだが、日に日に強くなっていく。




毎日、レイクリフから花束が届く。

マーガレットからすれば、いやがらせか、と思っているので、レイクリフの想いは全く伝わっていない。

しいて言えば、花好きなマーガレットは花で5ポイント好感が増した、マイナス145点である。

「姫様、プレゼントが付いてます。」

侍女が花束とプレゼントをマーガレットに渡した。

「あら、これ街で人気のチョコレート店のだわ、カードもついている。

『貴女の(しもべ)より』、はぁ?」

カードでマイナス20点、チョコレートでプラス20点、プラスマイナス0で相変わらずマイナス145点のレイクリフの評価。


もうすぐ、嫌な舞踏会が来る、マーガレットはげっそりしていた。

王主催のレイクリフとマーガレットの婚約発表の舞踏会が開催されるのだ。まともに舞踏会どころか夜会にさえ行った事のないマーガレットには不安しかない。

聞こえるように言われるイヤミ、言葉使いにマナー、耐えきれる自信がない。



マーガレットが軍司令部に行った日、王の執務室にグラント公爵が呼ばれていくとレイクリフがいた。

王の前で、レイクリフがマーガレットと結婚すると言いきったのだ。しかも、付き合っている女性達は早々に処理し、マーガレットを大事にすると言われるとグラント公爵も反論できない。

宰相として考えれば、内政安定にはいい方法なのであり、グラント公爵家もワーグナー公爵家も利がある。

ギリアンから将軍執務室の一件を聞いているので、マーガレットの性格や武力を隠す必要もない相手となったのだ。

グラント公爵家とワーグナー公爵家の婚姻が確定した。


だが、本当にマーガレットを大事にするのか、国を(うれ)いて言っているだけではないか。

「そんなの信用できない。複数の女性と同時進行する男なんて、すぐに浮気するに決まっている!」

屋敷に戻り説明した時に、マーガレットが言う事がもっともだと、グラント公爵も思うのだ。



お読みくださり、ありがとうございましす。

キュンキュン胸せつないレイクリフ。

マーガレットは闘志に燃えていて、レイクリフに好かれているなど思いつきもしません。

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