3.たずねてきたのは
やがて、町の人たちは、お菓子の家にちかよらなくなりました。そこに入って、かえってきた人は一人もいなかったからです。
みんなが、まだ見たこともない女の子をおそれました。…だれだって、一目見れば好きになってしまうのに。
女の子は、目がさめてもまた泣きはじめました。へやの床には、足のふみばのないほどにお菓子がちらばっていました。
だれか。
わたしのすきまをうめて。
わたしをひとりにしないで。
だれか…
やがて、またお菓子の家のドアがひらかれました。そこからかおを出したのは、自分と同じくらいの女の子でした。
「あくまって、こんなすてきな子だったんだね」
その子が言ったいみが、女の子にはわかりませんでした。
二人の女の子は、すぐになかよくなりました。一緒にたくさんのことをしました。夜には、その子はなみだにぬれる女の子のことをなぐさめてくれました。
…ある日、その子は言いました。
「わたしのお母さんは、ある日とつぜんいなくなっちゃったの。のこったお父さんは、わたしにいたいことするの」
目になみだをうかべながらもほほえんで、その子はつづけましす。
「ここにきたら、らくに消えちゃえるんでしょ」
やがて、その子も、幸せそうに眠りについてしまいました。
どうして。
どうして。
どうして。
どうして…。
…女の子はもう、泣きませんでした。あたまの中は空っぽでした。
ただ何も言わず、ひとりで眠りました。