1.むかしむかし
むかしむかし、あるところに、お菓子でできた家がありました。
町の人たちは、みんなそれを不思議に思いましたが、しかし中に入ってみようとは思いませんでした。
その家には、小さな、さみしがりやの女の子が住んでいました。
女の子はたくさんのお菓子はにかこまれてすごし、毎日わたがしのベッドで眠りました。 そんな毎日をすごしているものですから、女の子からは、いつも甘いにおいがただよっていました。
女の子には夢がありました。
いつか、このいえのそとのひとにあいたいな。
不思議なちからのせいで、女の子は家から出ることができなかったのです。
だから、女の子はいつも、家に入ってきてくれる人を待っていました。
ある日、ある男の子が、そのお菓子の家のドアを開きました。
外の人に会えて、女の子はよろこびました。そして男の子の方は、一目見てその女の子を好きになりました。
二人はいっしょにくらすことになりました。とても幸せにくらしていました。
家の中にあるたくさんのお菓子は、甘いだけではなく、とても元気になるものでした。ですから、二人はお菓子だけ食べていても、まったくびょうきになることはありませんでした。
しかし、ある日、男の子はたおれてしまいました。
「どうしたの?」女の子は言いました。
「からだにちからが入らないんだ」男の子は答えました。
女の子はたくさんのお菓子を持ってきて、男の子に食べさせました。でも、男の子はいっこうに良くなりません。
男の子は、
「ありがとう、君に会えて幸せだった」と言うと、眠ってしまいました。もう二度と、目をさますことはありませんでした。
女の子はかなしみました。
どうして。さみしいよ。やっとあえたのに。
男の子のからだのまわりに、お花のかわりにたくさんのお菓子をおいてあげました。
その日、女の子はずうっと泣いていました。