出会ってしまった二人
俺は生まれてこのかた女に困ったことがない。
落とせなかった女もいない。
いやいや、全然自慢とかじゃないから。ほんとに自慢じゃないよ。
街を歩けば女どもが金魚のフンのように寄ってくる。このイケメンすぎる俺が悪いのだが、さすがにモテすぎるのも疲れてくる。
しかも、モテルだけじゃなく金もあるときた。やれない事なんてほとんど無い。この俺は欠点が無いのだ。
だから、まさかこの世に落とせない女がいるとは思わなかった。
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私は生まれてこのかたこの容姿で落とせない男はいなかった。
姫である私はすでに平民には到底手に入れることのできない巨額の金や地位など色々持っていたにも関わらず、容姿までいいときた。これで落とせない男などいるはずがない。
パーティーに一足出れば、男どもは寄生虫のように鬱陶しいと感じてします程モテル。
だから、新人の執事をこの私が落とせないわけが無いのだ。
なのに、なのに
「どうしてお前は私を好きにならないのだぁー!」
つい大声を屋敷に響かせてしまった。
すると、
「姫様、そんな言葉を使っては豚のようですよ。」
この俺に惚れない女がいるとは、こいつは頭がおかしいのか?それとも本当に豚だから俺のカッコよさに気づいてないのか?どちらにしろ気に食わん!
「私を豚と言ったか!貴様、執事の分際で生意気だぞ!っこのナルシスト!」
この男と喋っていると、つい大声をだしてしまう。なぜこんな奴が私の執事なんかになったのだ。
-----遡ること10日前
「おい、小僧お前に手紙が来てるぞ」
俺のことを小僧と言っているのは、隣に住んでいる爺さんだ。
こいつはなぜか俺の家に郵便受けを勝手にあさり手紙を持ってくる頭のおかしな爺さんだ。
正直いつも何を考えているのかわからない。というか、分かりたくない。
「爺さん、勝手に郵便受けあさるなって何度言えば気が済むんだ」
「すまん、すまん。忘れておったわ」
このやり取りも何度もしたが爺さんは毎回うちのをあさる。
いっそ俺がお前の残り少ない髪の毛をあさってやろうかと思うぐらいだ。
爺さんから手紙を受け取り、家の中で手紙の差出人を見ようと思ったが、名前が書いてなかった。
誰からだ?と思いつつも手紙を開けて読んだ。
結論から言うと、俺に執事をしてほしいと書かれてあった。
しかも、内容を読んで分かったことは、この国の王が直々に頼んできた。
「マジかよ!?」
最初は驚いたが、いい話だ。今の家でも十分といっていいほど裕福な家庭だが、さすがに王族とでは比べ物にならない。そして俺が王族のもとで仕事が出来るなら益々俺の経歴に拍車がかかる。
最高じゃないか!
俺はすぐに支度をして俺の両親も納得の上で城に向かった。
「ふっ、あばよ俺の故郷」
かっこいいセリフを言ったつもりだったが、なぜか見送りに来ていた両親が憐れむような目で俺を見ていた。ん?なぜあんな目をされるのだ、と思いながらも俺を乗せた馬車は故郷を後にした。
俺の故郷から城までは結構な時間がかかる。大体5日くらいだ。
ここから城までに町は無いので、この5日間は野宿をすることになる。
覚悟はしていたつもりだったが、最悪だ。特に俺のライバルといっても過言ではない生き物虫だ!
こいつらはとにかく気持ち悪い。動きといい、見た目といい全てが気持ち悪い。
だが、こんなこと絶対に他の奴らに知られてはならない。
日が暮れて3日目も終わろうとしていた。ご飯は馬車に乗せてくれている、40代くらいの男が作ってくれている。なのだが毎回作るものはおいしくないし、見た目の悪い。
そして今日の夜ご飯は特に酷かった。
「おいっ!?なんだこれは!」
それは俺が一番苦手とする虫だった。
「あんた食べたことないのかい?」
「あるわけないだろ!ゴキ〇リなんて!」
こいつ俺を暗殺するために馬車に乗せてくれたんじゃなだろうな?
俺が警戒していると、男が突然立ち上がり俺の方に近寄ってくる。
その男の手にはゴキ〇リの丸焼きがある。
そして、それは一瞬の出来事だった。なぜか俺の口の中に男が持っていた、ゴキ〇リの丸焼きが入っているではないか。
「うっぷ」
吐き気がして俺はそのまま地面に倒れた。
それからの記憶はない。
-------5日後
「おっ、やっと気づいたか。着いたぞ城に」
あれ何でもう城についているんだ?
確か俺はご飯を食べるところだったはずだが。
まぁ、いいか。
ついに、俺が執事の仕事をする王の城に着いた。
馬車に乗せてくれた男とはそこで別れた。
俺は城の門の前にいる傭兵に手紙の中に入っていた招待状を見せて、城の中に入っていく。そこは、俺の住んでいた家とはレベルがはるかに違ったものだった。
これからこの場所が俺の暮らすところか。
あまりにも凄かったので、俺は城の中を見て回っていた。
すると、
「ちょっと、そこのあなた!そこで何をしているの!」
ヤバッと思い後ろを振り返ってみると、そこには今までで一番といっていいほどの女がいた。
髪が長く、真っすぐな瞳、透き通るような肌
気づいたら俺の本能が体を動かしていた。
「どうも、お嬢さん。俺は今日からこの城で執事をするものです。よかったら今夜食事でもどうですか?」
ニコッと笑いかけながら、言った。
完璧だ俺!かっこよすぎだろ俺!うんうん俺サイコー
これで落ちなかった女はいない。この女もこれで今夜は俺のものだ!
と思いながら返事を待っていると、
「はぁ~、気持ち悪い。寒気がする。」
んっ?今なんかよく聞木とれなかった。
なので、
「すみません、聞き間違えと思うのでもう一度お願いします」
ニコッ
「きんっもい!近寄んないで!」
「誰が気持ち悪だ!このメス豚がぁ~」
つい本音が出てしまった。
これが俺たちが初めて出会った最初の出来事だ。
これからどんなことが起こるのか俺にもわからないが、俺は絶対にこの女を落としてやると、そう決心した。