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ゲームと現実を混ぜてはいけないはずなのに!  作者: 八城
1章、不具合だらけの一週間
5/11

することがないので旅に出る

〈フィールド:王都セスティルフィーズィア、東門近郊〉


 案の定、王都郊外にある街や村をつなぐ転移陣も使えませんでした。

 転移陣自体は風化せずにちゃんと残っていたんですけどね、転移陣を維持管理するNPCがいなかったので。


 少し考え、ギルドホールは諦めるとして。

 街や村へなら歩けば行けるので、歩いていこうと思います。

 遠いからと移動手段がどーのこーのと言っていましたが、狩りもクエストもできず、転移陣も使えないのです。

 一縷の望みをかけ、NPCでもプレイヤーでもどちらでもいいから人を求める旅に出ようと思います。

 乗り物アイテムは使えるから、歩くのに飽きたらそれを出してもいいからね。


 んで、旅に出るにあたって装備を再確認。




武器:新緑と星の杖

   (世界樹の枝と星の欠片から作られた魔法使い用の杖。魔法の威力を100%アップする)

防具

 頭:---

 首:新緑のネクタイ

   (グリーンドラゴンの鱗と世界樹の葉を特殊な技術で加工して作られたネクタイ。魔法攻撃力アップ。竜族の好感度アップ。被ダメージ50%カット)

 背:新緑のロングコート

   (世界樹の新芽と花弁を編みこんで作られたロングコート。冷熱効果を遮断する)

 胴:蜘蛛糸のシャツ

   (暗闇蜘蛛の糸だけで織り上げた布でできたシャツ。布とは思えない程の防御力を誇る。)

 腰:魔狼の皮ズボン

   (魔狼イルフの皮をなめして作られたズボン。HPを上昇させる)

 腕:絹の手袋

   (絹で作られた手袋。気品アップ)

 足:新緑のブーツ

   (世界樹の枝と世界樹の葉を使って作られたブーツ。足が速くなる。)

 

 指輪(8個まで装備可能):

  呪われた魔法使いの指輪

  (魔法攻撃力100%アップ、すべての攻撃に呪いを付加。この装備は外す事ができない)

  新緑の指輪

  (世界樹の小枝を加工した指輪。あらゆる状態異常から身を守ってくれる)

  身代わりの指輪

  (HPが0以下になった時、一度だけ蘇生してくれる。効果が発動した後、ロストする)

  星の指輪

  (神話の時代にあった星の欠片を使って作られたと言われる指輪。幸運アップ)


セットアイテム効果

 新緑の魔法使いシリーズ(新緑と星の杖、新緑のネクタイ、新緑のロングコート、新緑のブーツ、新緑の指輪)を全て装備している時、常時発動する。

 (魔法発動速度上昇、魔法威力上昇、魔法攻撃吸収100%、魔法罠無効化、致命傷無効、常時HP回復20%)



 いつ見ても新緑シリーズのセット効果はある意味壊れている。

 しかし、これを全部入手するのは大変なので、それを思えばこのくらいあってもいいよねとも思うのだ。


 何しろ、新緑シリーズは”新緑の森、中央”と呼ばれるフィールドにいる特殊ボスモンスターを倒してしか入手ができない。

 ただのボスモンスターではない。特殊(・・)ボスモンスターなのだ。

 ある一定の条件下でしか出現せず、出現したとしてもレベルが1500。

 プレイヤーのレベル上限が1000レベルなのでそれより高く、それ故に倒すのにも苦労する。

 そして倒せば必ずドロップするというわけでもなく、確率は限りなく0に近い。

 運良くドロップができたとしても、ドロップ数は常にひとつで、欲しい装備が出るとは限らない。

 ドロップ率が低いのに、数ある”新緑の〇〇”シリーズの装備アイテムの中からひとつしか出ないのだ。


 私がセット全てを持てたのは運が良かったのもあるが、新緑の魔獣使いシリーズを集めていた友人が魔法使いシリーズは集めていないからと格安で売ってくれた事が大きい。

 それがなければおそらく、未だにシリーズを揃えられずにドロップ狙いで森に通っていただろう。

 友人サマサマである。


 アイテムボックスから、体力回復ポーション(中)と魔力回復ポーション(大)を2個ずつ取り出し、ロングコートのポケットへ、魔力回復ポーション(大)だけをしまう。

 ズボンのベルトにも引っ掛けられるようにもなっているので、体力回復ポーション(中)はそこへ引っ掛ける。

 これでいざという時、倒せないモンスターが出たとしても逃げるだけならなんとかなるだろう。


「準備完了!って事で、出たいんだけどどうすればいいかな?」


 装備の確認を終え、王都の入り口のひとつである西門を見上げる。

 門も、門から王都を囲うように伸びている壁も、どちらも見上げれば首が痛くなるほどに高い。

 王都内の建物同様に壁や門の扉も傷んではいる。傷んではいるのだが、それでも多少つついたくらいでは壊れないだろう。

 仕掛けはあるのだろうが、どういう仕掛けで、どういう風に何を操作すればいいのか、わからない。


 私は何かないかと辺りを見回し、門の傍にある建物に目がとまる。

 門よりは低いが、それでも門の上が見えるくらいには高いように思える。


 早速その建物へと入り、階段を探して上る。

 ボロボロではあるが崩れる様子がない。

 王都には崩れかけた建物が多くあり、それを見てきただけに、この建物は他のものと建て方や材料が違ったりするのだろうか。


 階段を上り切ると天井が低く暗い部屋へたどり着いた。

 腰を少し曲げないと頭がぶつかるので注意して、扉か窓かわからないが、隙間から光がもれている方へと進む。

 近くまでくるとそれが扉である事がわかる。

 おそらく目的の場所だろうと思い、扉に手をかける。

 が、風化したのか錆びたのか、立て付けが悪くなったらしい扉は動きそうで動かない。


 これが昔ながらのブラウザ式RPGであれば開ける事のできない扉であるのだが、今はVRMMORPGの時代だ。

 開けられない窓や扉を開けようとすると”エラー窓”と呼ばれるものが出現し、それが出ない扉や窓はどうにかすれば全て開ける事ができるのである。

 押したり引いたり蹴ってみたりしてもエラー窓が出てこないこの扉は、どうにかすれば開くのである。


 私は少し後ろへと戻り、助走をつけて扉へと体当たりをする。

 開錠の魔法はないの? と聞かれればもちろんあると答えるが、この扉は鍵がかかっているというよりはただ単に立て付けが悪くなっているだけに見える。

 言うまでもないが、開錠の魔法は”鍵を開ける為の魔法”なので、鍵がかかっていない扉には使えない。

 そして他に方法が思いつかない。

 なので、体当たり作戦を実行している訳である。


 一回、二回、三回……。

 七回目辺りで扉が少し凹んだ。

 もう少しと体当たりを続け、十一回目で扉が開いた。

 勢いあまって転びかけるが、なんとか耐える。


 開いた扉から屋上へと出て、門の上側を見る。

 常に表示してあるスキルショートカットと門の上を見比べ、支援魔法”短距離転移(ショートテレポート)”の射程圏内に門の壁の上側が入る事を確認。


 杖を門の上側へと向け、反対の手でショートカットを叩く。

 すると音もなく、一瞬にして私は東門の扉の上へと移動した。

 予想通り、扉の上側は通路になっていて、王都側を見れば町の様子が。その反対側を見れば町の外の様子――一面の深い森と遠くには連なっている高い山々が見えた。


 しかし、おかしい。

 東門から続くはずの道がない。見えない。


 王都が廃墟になった事と関連があるのだろうか。

 やはりイベントなのかなと思うが、クエスト欄のイベント項目を何度見ても何もない。


「……東門の先に”ソソルリィ村”があったと思うんだけど、マップも初期状態に戻ってるんだよね」


 小型マップの表示をオンにする。

 私が今いるであろう位置にはオレンジ色の光が点滅していて、先ほどまでうろうろとさまよっていた王都部分以外の場所は空白のままだった。

 もともと、自分が通った場所しかマップには記録されない、自動マッピング型の地図である。

 私は実装されたフィールド全てのマップを埋めていたはずなのに、今のマップは王都セスティルフィーズィアの部分しか埋まっていない。


 埋めなおし決定?

 いやいやいや。これもきっと不具合だろうから、ログアウトしたら運営にクレーム追加だ。追加。


 それにしても道がないのは予想外でした。

 なんとなく覚えてる方向へ進めば、ソソルリィ村にたどり着けるだろうか。

 それ以前の問題で、ソソルリィ村も廃墟だったらどうしようか……。


 まあ、その時はその時でまた考えればいいか。

 下手な考え休むに似たり、だ。


 アイテムボックスからパラソル(大)を取り出し、ポンッという音をたててひらいて肩に担ぐ。

 杖をしっかりと持ち、道なき道のある方へ、東門の上から飛び降りた。

苦労して埋めたマップが初期化されて埋めなおしとか、規模によっては発狂するレベルだと思います。

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