1 プロローグ
おれの友だちは生首だ。
これは比喩でもなければ例えでもない。彼女は正真正銘の生首だ。
この言葉を聞いて、おれの事を頭がおかしな奴だと思ったのなら、すぐに立ち去る事を勧める。
これからおれが語る物語は、そうした《おかしな》話だからだ。無理に聞いても信じられないだろう。
逆に、おれの話に興味が持てると思ってくれたなら、このままゆっくり楽な姿勢で聞いてほしい。
では、そうだな――まずは友だちがどんな奴なのか、そこから話すことにするよ。
あいつの名前は『アイ』。歳は16。性別は女性だ。(ちなみに、おれの妹はアイの事を可愛いと言うが、おれは正直そうは思わない。下の上といった所か?)
おれ達の出会いは突然だった。
おれはその日、いつものように朝起きて、飯食って、家族と会話を楽しみ、クラスメイトに妹との仲の良さを茶化されたりといった日常を過ごしていた。
今日もこのままいつもどおりの毎日を楽しめるんだなと思っていた。信じて疑わなかった。
だが、日常はあっさりと瓦解した。
教室に入ると、おれの席に女性の生首が置かれていたんだ。
しかもおれ以外には視えていないらしい。
それが、おれとアイの出会いだった。
そして今からおれが語るこの物語は、この出会いから始まるんだ。
これは、おれの友だちが、生首から幽霊になる物語だ。