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罪と刃継 虚数界

身分を隠し、10隻の大型船のうちの1隻に乗っていた私は自然の脅威と襲って来るモンスターから逃げ延びて異大陸の港に辿り着いた。残った船は私が乗っていた船を含めて3隻。7隻の船は船団を最高責任者だった提督や上級船員と共に海の藻屑と化した。生き残ったことに喜んだ私たちだが本当の試練はこれからだった。大陸間交流の経験者は残った船の中で船長たちだけだった。よって栄えある帝国の精鋭である私たちは異大陸の住民に対して高圧的に話しすぐに洗礼を受けたのだ。

力自慢の船乗りたちが女に投げられ、武器を持った兵が文官に鎮められた。魔法を使うと上位魔導で相殺、いや押し負けた。3隻の船長たちが異大陸の有識者たちと話し合っている間に制圧された私たちは船長たちから大目玉をくらいその場で最終警告を受けた。

港に着いて1日以内で船団員全員が異大陸に恐怖を植え付けられたのだ。


後から聞いた話だが当時の港町は祭りがあり異大陸中から戦士を含めた人々が集まっていたらしい。

祭りは筆舌し難い内容だった。ただ戦士たちは1人1人が覚醒者であり天変地異を息をするように起こしそれら日常の様に受け入れ回避する猛者ばかりだったと記しておく。


これから本国へ帰る。


私の稚拙な航海日誌を家族が読んだとしても誇張や虚構だと思われるだろう。提督たちも生前、私たちに教授してくれたが私たちはそれが自分たちを箔付けるための嘘だと考えていたからだ。

事実は小説よりも奇なり。

過去の文豪が残した言葉は本当だった。

私の航海日誌を信じるのは共に冒険した仲間たちだけ。


ブラウン大陸が見えたらしい。生還したことに喜びを感じた。船長たちから教えられた言葉と共にこの航海を終えるとする。


彼の大陸は天変地異と群雄割拠の大陸。

軍記物語と御伽草子の大陸。

過去から現在、現在から未来へと物語の編纂が続く1つの原稿(ノート)

訪問者はノート大陸と呼ぶ。


記録者:アリアガ・ファン・マゼラン



追記

祭りの最中に出逢ったハイエルフの彼女には機会があれば、また逢いたい。凛々しく気高い流浪の騎士であり柑橘の香りを纏う戦士。


人間系統の進化は困難を極めるが私は諦めない。愛しの騎士姫に再会するために。





お祖父様の夢だったノート大陸への進出と征服のために私は愛剣を握った。

闇に聖剣であり、光の魔剣である。

2つの顔を持つ狭間の剣。

100年前ノート大陸より持ち帰られた灰色の聖魔剣は私が15歳になった時、私を選んだ。


正体不明の金属で出来た剣は折れず、私の魔力を与えれば手入れを必要としない最高峰の剣だ。


剣を握った時から感覚が冴え渡り、兵士との試合やモンスターの討伐戦でも負け知らずだった。


今思えば私は驕っていたのだろう。


ノート大陸に征服軍と共に降り立ち、順調に国を降して行き大陸の中央まで来た。

あったのは小国。

大量のモンスターがひしめき合う人外魔境の地にある大陸最古の国だった。

所詮は小国、1つ前にあった大国もすぐに降伏して征服軍に道を譲ったので、この国も降伏するだろうと思っていた。が、帰って来たのは拒否。国門が4箇所あり、その全てが帝国軍に囲まれているにも関わらずだ。


正気を疑った。

だが、やる事は変わらない。降伏しないなら堕とすだけだ。


兵たちを鼓舞して国門へと攻撃を仕掛けようとした時、奴らが現れた。

ドラゴンよりも大きく高い国門の頂上から飛び降り、軍にクレーターと言う風穴を開けた者たち。


其奴らに帝国軍は蹂躙され始めた。



何人かとすれ違った。奴らは私の事など眼中にない様で一瞬だけすれ違いざまにも私に攻撃を加え結果に関わらず、そのまま別の場所へ移動して行く。


巫山戯ているのか私が皇女だと分かっていながらも余所見をしながらでも余裕で応戦する奴もいた。


今はその後に来た2人の女と戦っている。

1人はライトエルフ族の女。剣から柑橘系の香りしていて剣に当たった鎧の一部が溶けていた。

この鎧、国宝並みに頑丈な筈なんだが…。


もう1人は天使族の女。境灰剣アークティックと似た雰囲気を持つ儀礼用の装飾剣みたいな剣で切ってくる。

背後に薄っすらと戦闘と勝利の神が見えるのは気のせいの筈だ…。



そろそろ切り結んで1時間以上経つ。


2人から目を離さない様に気配を探ると主要な戦力以外がほとんど壊滅しているみたいだ。



今、撤退しなければ本当に全てが終わる。


…。



やるか。



固有スキル

(つみ)刃継(ばつ)

今まで切った罪人の分だけ力が増す聖闇剣アークティックの所持者限定の固有スキル。


虚数界(グレーゾーン)

内外干渉不可能な灰色の世界に入る光魔剣アークティックの所持者限定の固有スキル。


この2つのを使えばこの2人だけでも灰色の世界に道連れ出来る。

剣は置いて行くことになりそうだけど私の命だけで済むなら全滅よりマシだ!



「いろいろ、考えているところ悪いが灰色の世界からの脱出方法は存在するぞ。」


「座標魔導に虚数を入れて二乗してz軸を180度回転させれば出られるよ。」


……。


口に出してないのに作戦内容と攻略を看破された私は無能なのだろうか?


いや、待て。

座標魔導だぞ。

つまり魔導士が居ない限り脱出は不可能。


「ちなみに言うと、あっちで貴女たちの勇者をフルボッコにしてるうちの1人が座標魔導士だから」


「雷速魔導士もいるな。見間違いでなければ桃源郷の十二支將もいるな。」


……。


近くに魔導士がいた私は不幸の星に生まれたのだろうか?


てか勇者、お前嵐を纏ってるのにやられてるのか。同情もしないし助けにもいかないからな。元々、色んな面でウザかったから寧ろ清々してる。



さて、意識を戻して特攻を試みるか。





「私はな、ブリュンヒルデ・フィン・マゼランという名前でこれでもブラウン大陸帝国の第二皇女なんだよ。」


「「「知ってる。」」」


「でな?手の内がバレてても部下たちを逃がすために決死の特攻をしようと思ったんだよ。」


「「「知ってる。」」」


「確かに貴女たちからしたら私は敵で容赦する必要もないんだけどね?」


「「「その通り。」」」


「だからって衣服を全部切り裂いて剥ぐ必要あったか!?」


戦場で皇女なのに裸に剥かれた。しかも女から。動こうとした瞬間に鎧と服が全部落ちて裸に剥かれた。

局所を隠ししゃがみながら後ろを振り返ると種族特徴の赤系の肌を持つアストロレイブの女。


前を見ると笑顔で剣向けてくる2人の女。

もう一度後ろを振り返るとこちらも笑顔で剣を向けてくる女。

アークティックはいつの間にか私の手が届かない範囲に転がっていた。




半泣きで降伏した私は後世で非難されるだろうか?

それとも、哀れまれるのだろうか?






余談だが80年前に行方不明になったとされている大伯父がこの国の宿屋の主人をしていた。

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