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バーチャルダンジョン攻略部!  作者: 夏畑スイカ
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第七話 サボり

「おはようございます、平田くん」

「あ、ああ、おはよう。委員長」


 寝て起きてから、それから学校へと登校するあいだ、俺の頭はパンドラの迷宮のことでいっぱいだった。早く試練の塔を攻略しないと。そればっかりを考えていた。

 だから委員長に突然あいさつされてすごく驚いてしまった。いつの間にか教室に到着していたようだ。

 

「んー? 今日はまた一段と寝不足だね。ダメだよ、ゲームのやりすぎは」

「ゲームが楽しすぎるのが悪いんだ。俺は悪くない」


 委員長の問いかけに対して適当な返事をする。かわいいと評判の委員長に朝から話しかけられるという素晴らしいイベントだけど、素直に喜べない。

 クラスの男子たちの血走った目が怖いからだ。おや、窓際の席の男子の手元が朝日を反射して一瞬光ったような。俺の見間違いじゃなければ、あれはカッターだったような。


 身の危険を感じた俺は委員長との話を早々に切り上げて、自分の席へと向かう。

 健吾も、匠も、彩華さんもまだ来ていない。昨日深夜遅くまでゲームをしていたのは知っている。もしかして、寝坊だろうか。


「おっ、来たか。おはよー健吾」


 教室の入り口を見ると健吾が入ってきたところだった。こいつが匠よりも早く登校するなんて、珍しいこともあるものだ。もっとも、今日は健吾が早いんじゃなくて、匠が遅いだけなのだが。


「ちょっとションベンいこうぜ。ツラかせや祐介」

「貸してやってもいいけど一時間千円な」

「オメーの汚ねーツラにそんな価値はない。いいからさっさと来いや」

「俺の顔が汚いっていうなら、健吾は作画崩壊レベルだね。それとも福笑いかな?」

「察しのわりーやつだな。はよ来い」


 見ると健吾は片手にスマホを持ち、さりげなくもう片方の手でスマホを指さしている。ああ、パンドラの迷宮の話をしようってことか。教室で堂々とパンドラの迷宮の話をするのは確かにちょっとな。しかたない、付き合ってやるか。


「オメー、これからどうする?」


 健吾が言っている「どうする?」とは、パンドラの迷宮のことだ。もっと言えば、四週間以内に試練の塔を攻略しなければ、アプリが消滅してしまうということについて話そうということだろう。

 それに対しての俺の回答はわかりきったものだ。


「とにかくやりまくって攻略を進めるしかないな。勉強の時間や睡眠時間など、削れるものはどんどん削って攻略に充てるつもりだよ」

「睡眠時間はともかく、オメーは勉強の時間なんて削れねーだろ」

「やっぱり俺って毎日勉強やらなきゃ気が済まない真面目な学生に見える?」

「ゼロをどうやって削るんだよ。バカかよ」


 健吾のいう通り、家では勉強なんてやっていない。けどそんなにストレートにハッキリと言うことないじゃないか。あとバカは余計だ。


「ところでよぉ、ゴブリンの住処には行ったか?」


 トイレには誰もいなかった。だから、安心してパンドラの迷宮の話ができる。


「行ったよ。行った、けど……」

「あー、やっぱりお前もか。ありゃーキツイわ。ソロじゃ無理なんじゃねぇか」


 試練の塔に行くためには、まずゴブリンの住処を攻略する必要があるらしい。なので勢いよくゴブリンの住処に乗り込んだんだけど、勢いよく袋叩きにされてしまった。あいつら、許さん。


「あのクソゴブどもめ。一体一体はよえーくせに集団で集まってきやがってよー。卑怯なんだよクソが」

「俺たちだってビッグスライムを集団でボコボコにしたけどなー」

「俺たちゃ別にいいんだよそれで。特に俺は、いずれ異世界に召喚されて勇者になる予定の男だからな」

「それなんも関係ないよね? 健吾って、異世界で自分のステータス見れるようになったら、かしこさ1とか2とかしかなさそうだよな」

「ああん? やんのか? お?」

「ストップ、ストップ! ションベンしてるときにこっちむくんじゃねぇよ!」

「お、おお、すまん」


 危うく朝から健吾のションベンシャワーを浴びてしまうところだった。一限目から体操服で授業を受けるとか嫌すぎる。


「ん? おい、祐介。ちょっとこれ見てみろ。情報掲示板におもしれーことがのってんぞ」


 ションベンの終わった健吾がスマホを俺に差し出してくる。ションベンしながらスマホを見てたのかよ。意外と器用なヤツだ。それにしても……。


「下半身のひのきの棒をタップした手でスマホをタップしてたのか?」

「いいから早くみろ」


 いや、マジで触りたくないんだが。


「ていうか、健吾が内容を言ってくれればいいだけだよね」

「そういやそうだな。なんか岩の迷宮を一定時間よりも早くクリアすると、ボーナスアイテムがもらえるらしいぞ」

「どれくらいの時間でクリアすればいいんだ?」

「三十分らしい」

「いけるか? それ」


 始まりの迷宮なら、いけるかもしれない。道は完全に覚えているし、スライムを倒すのにもなれた。けど、岩の迷宮は始まりの迷宮よりも上位の迷宮だ。かなり厳しくないか?


「行けなくても気合で行くんだよ。今のままじゃクソゴブの住処をクリアできねーんだからよぉ」


 健吾のいう通りだ。たとえパーティを組んだとしても、今の装備ではゴブリンの巣をクリアするのは厳しい。あそこをクリアするには、ゴブリンの集団に囲まれる前に敵を倒せるだけの攻撃力が必要だ。

 攻撃力を上げるなら、やっぱり新しい武器を買うのが手っ取り早い。クリアボーナスで武器が手に入るならそのまま装備すればいいし、武器が手に入らなかったとしても、手に入ったアイテムを売ればお金になる。そのお金で、武器を買えばいい。


「一回やって見るか。無理そうならその時考えよう。それじゃ俺は右の個室でログインするから、健吾は左の個室な」

「何!? 今からやる気か? 授業はどうすんだよ」

「毎日真面目に出席してるから一回くらいサボっても大丈夫だよ」

「テメェの場合は真面目に出席してるだけで授業の内容は一ミリも頭に残ってねぇだろうが」

「うるさいぞ、やるのかやらないのかどっちなんだよ」

「どうやら本気みてぇだな。面白れぇ、俺も付き合ってやるぜ」


 個室に入ってカギを閉め、便座に座ってパンドラの迷宮を起動させる。健吾にパーティの申請を送ってから、迷宮の選択画面で岩の迷宮を選択。数秒のカウントののち、視界がブラックアウトする。俺の意識は、ダンジョンへと吸い込まれていった。


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