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バーチャルダンジョン攻略部!  作者: 夏畑スイカ
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第二十八話 エピローグ 

「くっそ退屈だなおい。なんか面白れぇことねぇのかよ」


 パソコン部の部室の椅子をギシギシと揺らしながら、健吾がそんなことを言う。

 匠は家から持ってきたエロゲーで忙しそうだし、彩華さんは俺が持ってきた漫画に夢中だ。つまり、健吾の話し相手になれそうなのは俺しかいない。


「昨日のテスト返しはなかなか面白かったよな」

「あれか。アレは久々に最高の気分だったぜ」


 中間テストの日からすでに一週間が過ぎている。

 テストが終わって数日の間は、ちゃんと点数が取れているか心配でドキドキしっぱなしだった。

 しかもクラスのバカどもの間では、俺や健吾が勉強したっていい点数なんて取れるわけないだろとかいう空気が発生していたので、余計に精神衛生上よろしくない数日だった。

 しかしテストが一教科、また一教科と帰ってくるうちにそんな声は小さくなっていき、すべての教科が帰ってくる頃には完全に消え失せていた。


「山本の野郎がよ、テストの点数で勝負しようぜとか言ってきたのが一番の笑いどころだよな」

「自信満々に『負けたら罰ゲームな!』とか言ってたのに、平均点を聞いたら二十五点しかなかったんだもんね。俺たちの半分以下の点数でよく勝負する気になったもんだよ」

「俺たちの点も教えてやろうとしたらさ、先に罰ゲームを決めようとか言いだしやがってよ」

「勝つのが確定してるからって、一週間パシリとして昼にパンを買ってこいってのはどうなんだ健吾?」

「オメーに言われたくねぇな。一週間食堂のカツカレー大盛を奢れってなんなんだよ。昨日山本の野郎涙目だったぞ」

「もしかして罰ゲームに後悔してる?」

「ああ、後悔してるぞ。……もっとキツいヤツにしとけば良かったって意味でな。涙目どまりで終わったことにガッカリだぜ」

「健吾、お前もか。アイツは俺の藁人形に釘を連打するよなヤツだからな。もっと徹底的にやるべきだ」

「テメーはタダでカツカレーを食いたいって理由がでかいんじゃねぇのか?」

「それもあるかな。食堂のカツカレー美味しいし」

「ちくしょー、俺もそっちの命令にしとけば良かったぜ」


 俺の全教科の平均点が五十四点で、健吾が五十三点だ。二人とも、山本にはダブルスコアで勝ったことになる。

 ちなみに彩華さんの平均点が八十五点で、匠が九十六点だ。まったく、あの二人は本当にすごい。

 四人全員が家庭訪問ラインを突破したことで、俺と健吾は肉体の安息が約束され、彩華さんの学歴と匠のワイフたちは無事守られた。


「それにしてもよぉ、マジでなんかないのかよ」

「ファンタジアオンラインでもやるか?」

「それはもう飽きたっつーの」

「とか言いつつゲーム起動してるじゃん」


 健吾の前にあるPCのディスプレイには、ファンタジアオンラインのログイン画面が表示されていた。

 あまり乗り気ではないけど、何もしないよりかはマシって感じなのかもしれない。


「……またやりてぇなぁ、パンドラの迷宮」


 IDとパスワードを打ち込む健吾が、ふとそんな言葉を漏らした。その言葉に、同じくパスワードを入力していた俺の手が止まる。

 俺のスマートフォンには、まだパンドラの迷宮のアイコンが残っている。しかしそれをいくらタップしたところで、ゲームが起動することはない。

 俺たちはあの日、ボスを討伐することに失敗したのだ。

 リスポーン地点に戻った瞬間にゲームから強制ログアウトさせられてしまい、その後はもう二度とゲームが起動することはなかった。


「俺だってやりたいよ。けどやれないもんはしょうがないじゃないか」

「くそぉ、だいぶいい線いってたと思うんだけどよぉ。あとちょっとで倒せたかもしれねぇのに」

「言うなよ。俺だってすっごく悔しかったんだから」


 あの日は悔しさとパンドラの迷宮ができなくなってしまった悲しみで夜も眠れないほどだった。夜中にずっとパンドラの迷宮のアイコンをタップし続けていたらいつの間にか朝になっていたほどだ。

 しかしいつまでもそのことを考えていても仕方ない。気持ちを切り替えていかなきゃ。


「とりあえず今日はまたファンタジアオンラインやろうよ。他にやることもないし」

「あら、ファンタジアオンラインをやるの? それなら私も混ぜてもらおうかしら」

「いいよ、みんなでやろう。昨日と同じような感じで経験値を稼ぎに行くか」


 彩華さんはいつの間にかパソコン部の部員になっており、今では立派なゲーマーに成長している。


「早くログインしろや祐介! おせぇんだよ! 先に狩場に行ってるからな」

「はいはいちょっと待ってろって。ていうか気合入りすぎだろ」

「ファンタジーの世界が俺を呼んでんだよ」

「すぐにログインするから待ってて」


 途中になってたパスワードの打ち込みを終わらせ、俺もゲームにログインする。

 俺のキャラクターが立っている場所は、完全に見飽きてしまった町の中。そこで健吾と彩華さんのキャラクターを探す。


「こっちにいるわよ祐介」

「おせぇぞ早く来い」

「お待たせ」


 パーティも組んだことだし、狩場に向かうとするか。


「僕をのけ者にするつもりですか? まったくひどい友人たちですね」


 そんな言葉と同時に、匠のキャラクターからパーティの加入申請が届く。いつの間にか匠もゲームにログインしていたみたいだ。


「エロゲーはもういいのか?」

「左手でやっていますよ。ファンタジアオンラインは右手でやります」

「……器用だね」


 匠はこの一週間、相変わらずこんな感じだ。パンドラの迷宮を失ったことにショックを受けているかどうかは表情からは読み取れない。ポーカーフェイスというか、常にイケメンスマイル状態だから。


「匠もやっぱりパンドラの迷宮をまたやりたかったりする?」

「当然です。エロゲー王国を作る夢がありますから」


 何気にさらにパワーアップしたよくわからない匠の夢を聞き流しながら、さらに会話を続ける。


「その割にはあんまり落ち込んでないみたいだね」

「そうですね。そうかもしれません。ありきたりな日常ですが、僕は今の状態も気に入っています。ただ集まって目的もなく雑談をするだけというのも楽しいものです」


 みんなで集まって遊ぶだけでも満足している、か。確かにそうなのかもしれない。パンドラの迷宮みたいに刺激的なゲームはなくても、みんなで一緒にゲームをプレイするだけでも楽しい気分になれる。

 ゲームでお金を稼ぐという目標が遠のいたのは残念だけど、日常がつまらなくなってしまったわけじゃない。


「ごめんなさい、私のせいで。パンドラの迷宮があれば祐介の夢がかなったかもしれないのに」

「気にしないでよ彩華さん。別に手段は他にもあるんだから。例えば明日からはFPSゲームを放課後に練習して、FPSのプロゲーマーを目指すとか」

「それなら是非私も手伝わせてもらうわ。明日から早速練習しましょ!」

「僕もお供しますよ。リスポーン地点の防衛は任せてください」

「なんだ? 明日はFPSか? 俺苦手なんだよなぁ」


 そんなことを話しながら狩りを続けていると、スマートフォンに一件の着信が入る。


「あん? 誰だよ今いいとこなのにメールなんか送りやがって」

「あれ? 健吾も?」

「私のスマートフォンにもメールが来たわよ」

「僕もです」


 四人全員が同時にメールを受信したということだろうか。

 あるのだろうか、そんなこと。

 共通の友人からの一斉送信ならあり得るけど、この四人に共通の友人なんていたっけか? なんとなく気になったので、右手でマウスを操作しつつ左手でメールを読む。


「おい、祐介のキャラクターが死んでるぞ。ちゃんと操作しろよ」


 ディスプレイ上では俺のキャラクターが地面に横たわり、そこに群がっていたモンスターが次の獲物を求めウロウロしている。非常にヤバい状況だ。タンクが一人天に召された上にこのモンスターの数。全滅一歩手前と言える。

 しかし今はそんなことを気にしている場合じゃない。それよりも重大なニュースがあるんだ。


「それどころじゃないんだ。みんなメールを見て! 早く!」

「それどころじゃねぇのはコッチも一緒だっつぅの! やべぇ、援軍を呼びやがった。くそ、死んでたまるかぁ!」

「死ねやおらぁああ!」


 ブチンッ。

 隣の席の健吾のパソコンへと俺の腕が伸び、パソコンの起動スイッチを長押ししている。強制終了だ。


「何しやがんだ祐介! テメーの人生も強制終了させてやろうか!?」

「そんなことよりメールを見てよ!」

「ったく、なんなんだよ。つまんねぇことだったらお前の目ん玉を長押ししてやるからな?」


 物騒なことを言いつつも、健吾はメールを読み始めた。

 モンスターにやられ町へと死に戻りした匠と彩華さんも、スマホを操作している。一瞬の静寂。しかし部室はすぐに騒がしさを取り戻す。


「うおおお! マジかよ! どういうことだこれ?」

「本当なのかしら? でも、私たちは確かに失敗したはず」

「一度ログインしてみましょう。そうすればハッキリするはずです」

「今すぐにログインしてみよう。パンドラの迷宮に」


 俺はもう一度確認のために、見たこともないアドレスからのメールに再び目を落とす。


『確認されていた大規模な接続障害は復旧されました。現在は無事接続できることを確認しております。お詫びとしてショップで換金できるアイテムを複数送らせていただきました。今後もパンドラの迷宮をよろしくお願いします。株式会社・ドリームゲーム』


 メールを確認し終わった俺は、半信半疑でパンドラの迷宮のアイコンをタップする。

 アイコンが一瞬光り、ゲームの起動が始まる。一秒が一分にも感じられるようなロード時間が終了し、それと同時にスマホが明滅した。

 そこには見慣れたダンジョンの選択画面が表示されている。俺はすぐにスマホを操作した。


「パーティの申請は送っておいたから。みんな準備はいい? 行くよ」


 みんなからの返事も確認せずに、俺はダンジョンへとログインする。

 一週間しかたってないのに、懐かしく感じる目の前が真っ暗になる感覚。その数秒あとに、光が視界へと戻ってくる。

 落ち着いて、あたりを見回す。俺の体は、確かに始まりの迷宮の小部屋に存在していた。


「やったわ! 本当にログインできたわ!」

「うおおお! マジかよ! うおおおおお!」


 遅れること数秒、彩華さんたちもダンジョンへとログインしてくる。

 健吾は早速武器を取り出し素振りしているし、彩華さんはアイテムの確認をしているようだ。

 俺だって久しぶりのダンジョンの感覚にテンションが上がるのを感じる。しかし一つだけ、どうしても気になることがある。


「ふむ、浮かないかをですね祐介君。何か考えことでも?」

「なんで俺たちはゲームを起動できたのかなって考えてたんだ」

「この一週間ゲームができなかったのは、接続障害のせいだと書いてあったでしょう?」

「そうなんだけど、その前に俺たちは試練の塔をクリアできなかったじゃないか」

「その件ですか。その答えならもう出ているじゃないですか」


 答えが出ている? 俺にはサッパリわからない。一体、どういうことなんだ。


「簡単なことです。僕たちは今ゲームにログインできていますね? ということは、掲示板に書かれた情報はタダのデマだった。それだけのことですよ」

「なんだとぉ! それは本当か匠!」


 熱心に素振りをしていた健吾が、俺と匠の会話に勢いよく食いついてきた。その目は怒りに燃えている。それも当然だ。だって匠の話が本当なら、俺たちは完全に無駄な努力をしていたことになる。


「あなたたちは今こう思っていますね。俺たちの努力はなんだったのか、と」

「当たり前じゃないか! 授業をサボってあんなに一生懸命頑張ったのに、それが無駄だったなんて酷いよ」

「ノリノリで授業をサボり、ノリノリでゲームを楽しんでいたように僕には見えましたが?」

「……。それはそれとして、騙されたことには変わらないよ。そもそもどうして匠は、あの掲示板の書き込みがデマだって断言できるのさ」

「それも簡単なことですよ。これを見てください」


 匠が俺たちに見せてきたのは、自分のスマートフォンだ。そこには何かが表示されている。


「どれどれ、緊急・初心者のプレイヤーは絶対見てください。ああ、俺たちが前に見たスレッドじゃないか」

「そうです。あなたたちは狩りに夢中になるあまり、続きを見ていないでしょう? 是非見てください。そこに答えがあります」


 匠に言われ、書き込みを最初から順に読んでいく。

 スレッドの最初の方は初心者への注意喚起の書き込みであふれていた。頑張ってくださいとか、攻略を諦めるなとか励ましの文を書いてくれている人もいる。みんな優しいなぁ。


 しかしほっこりした気分になったのもつかの間。読み進めていくと、このアプリが消えるなんてことはない、スレ主は嘘をついているという内容の書き込みが増えてきた。

 そして徐々に、最初の方に書き込みをした人と書き込みは嘘派の間で対立が起き始める。あおりあったりネットスラングを使ったりともうめちゃくちゃだ。


 スレッドの書き込みの内容。そして実際にログインできているという現実。ここにきて俺は、ようやく騙されていたのだということを理解し始めた。


「なんなんだよこいつら! ホントにもう、なんなんだよ!」

「落ち着いてください」

「どうして森原はこのことを教えてくれなかったのかしら?」


 黙って俺たちの話を聞いていた彩華さんが匠へと向かって質問する。そうだ、どうして教えてくれなかったんだ。


「匠がもっと早く教えてくれてたら、授業をサボってまでゲームをやらなかったのに!」

「本当ですか?」

「多分……、いやきっと、おそらくはサボらなかったよ!」

「まあいいでしょう。教えなかった理由についてですが、パンドラの迷宮が本当に消える可能性があったからです」

「それは私も理解できるわ」

「スレッド主が本当のことを言っていて、それをデマだと言っていた人が嘘をついていた可能性もありますからね」


 確かに書き込みを見ただけじゃ、どっちが本当のことを言っているのかはわからない。スレッド主が嘘をついていると確信できたのは今実際にゲームができているからであって、書き込みを見た時点でどちらが本当かを判断することは難しかったかもしれない。


「祐介君は勉強を本気ですると決めたとき言いましたね。可能性がある以上、最悪の事態を想定して行動するべきだと」

「つまりデマだってことに確信が持てない以上、俺たちは試練の塔の攻略を目指す必要があったってこと?」

「その通りです。例え掲示板の内容を知ろうが知るまいが、僕たちの行動は変わりません」

「それなら別に知っててもいいじゃないか。大分前に、匠が何か言いかけてやめたことあったよね? それって掲示板のことを言おうとしてたんだろ? なんでその時に言ってくれなかったんだ」


 確か金策の方法について昼休みに弁当を食べながら話していたときだったと思う。匠は何かを言いかけていて、すぐにそれをやめてしまったのだ。


「もっと早く知っていれば、少しは気持ちに余裕が生まれたかもしれないのに」

「それについてはお詫びします。僕の個人的な感情ですよ。祐介君、あなたには本気を出してほしかったのです」

「何言ってるんだ。俺はいつでも本気で生きてるよ」

「そうなのですが、さらにその上があると言いいますか」

「なんか森原の言いたいことがわかってきたわ。祐介って、追い詰められてから行動するタイプでしょ。言い換えると余裕があるときは集中力にかけるというか、そんな感じよね?」

「まさにその通りです。さすが二階堂さん、祐介のことをよく見ていますね」

「たまたま気が付いただけよ! たまたま!」


 集中力にかける? この俺が?


「さて、次になぜこんなスレッドが立ったかの理由についてなのですが」

「待って、まだ話は終わってないよ。俺が集中力にかけるって? そんなわけないじゃないか」

「理由を説明する前に、祐介君に一つ質問があります。よろしいですか?」


 酷い! あっさり流された。


「答えられることなら答えるけど……」

「それでは質問です。あなたは掲示板の住人たちに騙されて攻略をせかされました。さぞ腹が立ったことでしょう。今後あなたは、初心者のプレイヤーに対してどのような書き込みを行いますか?」


 何を書き込むか、か。

 嘘を吹き込まれたせいでいらぬリスクを背負ってしまい、すごく腹が立った。この経験を踏まえて、初心者にはアドバイスをしてあげないとね。


「そんなの決まってるじゃないか。四週間以内に試練の塔をクリアしないとゲームが消えるって書きこまなきゃ!」


 俺たちだけが騙されたなんて許されない。初心者も洗礼を受けるべきだ。


「つまりこういうことです。きっと過去にも似たような書き込みがあったのでしょう。それに騙された人たちが『じゃあ今度は俺たちが初心者を騙すぜ』というようなことを繰り返しているのだと思われます。現にここにも一名いますし」

「クソガァァァァァ! 祐介みてーな人間のクズが存在するせいでこんなに苦労することになったのかよ! 死ね、死にさらせぇ!」


 今の今までずっと自分のスマホを操作していた健吾が、俺に向かって大剣を振り下ろすべく力を貯めている。


「待った健吾! 健吾は騙されたことに腹が立たないのかよ」

「立つに決まってんだろ!」

「それなら怒りをぶつける相手が違うんじゃないかな」


 俺はすっとスマホを健吾の前に出す。俺が出したスマホの画面には例のスレッドの書き込みが表示されている。今でもあおり合いが続いている、あのスレッドだ。


「俺としたことが、危うく敵を見失うとこだったぜ」

「そうだろう、そうだろう」

「確かに祐介は人間のクズでカスでどうしようもないバカだが、実際に初心者を騙す書き込みをしたわけじゃねぇからな」

「ちょっと言い過ぎじゃないか?」

「こうしちゃいられねぇ」


 新たな敵を見つけた健吾は、もう俺の言葉なんて耳に入らないのか勢いよくスマホを操作し始めた。きっとあと十分もしたら、スレはさらに大荒れになることだろう。


「スレッドの人たちに仕返しをするのはともかく、私たちにはもっと先にやることがあるんじゃないかしら?」

「何かあったっけ? テストはもう終わったし、宿題なんてやる気にもならないし」

「リベンジよ。リベンジマッチ! 祐介は試練の塔のボスに負けっぱなしでいいっていうの?」

「良くないに決まってるよ。機会があればボッコボコにしてやりたいと思っていたんだから」

「それなら、あとはわかるわね?」

「そうだね、行こう。今度こそは俺たちが勝つ!」

「もちろん僕も参加しますよ。あれだけ強いモンスターだと、さぞお金を落とすことでしょう」

「そうと決まれば早速リベンジマッチだ。健吾、置いてくぞ。さっさと準備しろ」

「待てや! 今いいとこなんだあと十分、いや五分でいいから」

「置いてくぞー」

「待て、待てコラ!」


 定番のたまり場となった部室で今日も俺たちはゲームをする。きっと明日も、そして明後日も――。


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