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バーチャルダンジョン攻略部!  作者: 夏畑スイカ
11/28

第十一話 ボーナスドロップ

「タイマン張りてぇだぁ? 元からバカだったけど、本格的にイカレたか?」

「時間がないんだ」

「ったくしゃーねぇな」


 しぶしぶといった様子で健吾はボスから距離をとっていく。

 彩華さんが無言でこっちをじっと見てくる。心配しないでくれ、きっとうまくいくから。うまくいかなくても、ゲームなんだから死ぬわけじゃない。だからそんな顔しないでほしい。


 俺以外の三人がボスから距離をとったことで、ボスのターゲットは自然と俺だけに絞られる。ボスの攻撃を回避しながら、ボスを部屋の端へと誘導していく。

 来た、絶好のポイントだ。この位置ならうまくいく。頼む、うまくいってくれ。


 俺は壁に背中をくっつけてまっすぐ立つ。そんな俺に対して、ボスは突進を仕掛けてくる。見た目通りなら、かなりの重さがあるはずだ。そしてこのスピードが生み出す、圧倒的な威力を持った突進。今からそれらを、すべて跳ね返す。


 装備しているひのきの棒を股に挟む。そしてひのきの棒がボスの方をまっすぐ向くように手を添える。左手は、添えるだけ。


「なんだあのふざけた構えは! やる気あんのかあのバカ野郎」

「股間の構えと名付けましょう」


 外野が色々うるさいがそれにかまっている暇はない。

 ひのきの棒のつか頭は壁に当てておく。これで準備は整った。さあ、来い!


 岩のカタマリが俺へと迫ってくる。十五メートル、十メートル、五メートル。岩は速度を殺さないまま俺へと近づいてくる。怖い。しかし俺はその場から動かない。

 突進が命中する少し手前で、岩は構えていたひのきの棒に盛大にぶつかった。

 自分の突進の威力により、深くひのきの棒が内部へと突き刺さる。ボスは俺の目の前で停止して、そして俺の視界は真っ白な光に包まれた。


『おめでとうございます。ダンジョンボス・ロックスライムを討伐しました!』


 ひのきの棒が、耐久力の設定されていない装備だったから。そしてボス部屋の壁が、ゲームでよくある破壊不能オブジェクトだったからこそできた方法だ。

 クリアタイムは二十九分五十五秒。俺たちは、三十分を切ることに成功した。


「うおおおお、アイツやりやがったぜ!」

「本当に倒してしまうとは、やりますね祐介君」

「さすがよ祐介! 私が見込んだだけあるわ!」

「よっしゃあああ!」


 ようやくクリアできたことがうれしかったので、俺もついつい勝利の雄たけびを上げてしまった。おっと、こんなことをしている場合じゃない。それよりもアイテムの確認だ。

 インベントリを開きアイテムを確認すると、そこには今まで見たこともないアイテムがあった。


『ロックスライムの破片』


 残念だけど装備品ではなかった。それにロックスライムの破片って、ボスを倒したらその辺にいっぱい散らばるだろう。もっとも、散らばった破片はしばらくしたら消えてしまうけど。

 アイテムの説明部分に貴重品と書いてあったので、試しに店に売ってみる。すると、グリーンスライムを倒すよりもはるかにたくさんのお金を手に入れることができた。つまりこのアイテムは換金アイテムだ。これを売って装備を買う足しにしろっていう、そういうアイテムなんだろう。


「これで新しい装備に一歩近づけたな」

「そうね。ただの破片がこんな値段で売れるなんてビックリだわ。こうしちゃいられないわ」


 彩華さんは急いで落ちているボスの破片を拾おうとしているけど、拾った先から光になって消えてしまっている。

 それでも諦めずに一生懸命破片を拾おうとしている彩華さんは、まるでひまわりの種を集めようとしているハムスター的な小動物のような感じだ。


「どういうことだよおい」

「僕に聞かれても困ります」

「どうかしたのか健吾?」

「どうかしたも何も、ボーナスドロップが何もなかったんだよ」

「僕もです。手に入ったのは、品質の低いポーションだけでした」


 あれ、俺と彩華さんは手に入ったのに健吾と匠は手に入らなかったのか? なるほど、そういうことか。


「日頃の行いが悪いから手に入らなかったんだな。だから悪いのは頭だけにしておけといっただろ健吾? 匠はその、運が悪かったんだよ」

「なんだとクソバカ野郎。テメーは頭に加えて顔もわりーだろ。そもそも俺が見た書き込みには、必ずボーナスドロップがあるって書いてあったぞ」


 健吾のひどい言いようも今は簡単に受け流せる。これが勝者の余裕というやつだ。それに顔だって悪くない。何を隠そう、俺は南高一のイケメンだと俺の中で評判の男だからだ。つまり自称なわけだが、まあそのうちみんなわかってくれるだろ。


「その書き込みというのが気になります。もう一度読んでみましょう」


 匠に言われ、健吾が書き込みを確認しなおす。しばらくスマホを操作していた健吾だったが、突然無表情になり俺たちにスマホを見せてきた。


 1:紅のソードダンサー 1日前

 初心者の方に朗報です。初心者用ダンジョンの岩の迷宮を三十分以内にクリアすると、クリアボーナスとしてレアアイテムがドロップします。どんなアイテムかは手に入れてからのお楽しみです。初心者のみなさん、一緒に攻略頑張っていきましょう!


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 22:越前もち 3時間前

 嘘乙 そんなアイテム手に入らないから。みんな騙されるなよ。


 23:鳥太郎 3時間前

 レアドロップなんてあったっけと思って久々に岩の迷宮潜ってみたけどなんも落ちなかった。まあランク的に当たり前だがな。ちなみにタイムは二十九分ジャスト。


 24:山本ああああ 3時間前

 俺も俺も。ちなみに俺は二十八分でクリアしたわ。


 25:漆黒のゆうた 2時間前

 俺も手に入らなかったわwww てか初心者の俺には三十分以内にクリアとかムリゲーwww

 

 26:山本ああああ 2時間前

 ≫25 ランクの高い武器手に入れれば楽勝だぞ。Dランクの武器なら数分殴ればすぐ倒せる。


 27:鳥太郎 2時間前

 ≫25 D+ランクの武器なら楽勝だぞ。D+ランクの武器なら


 28:山本ああああ 2時間前

 ≫27 クリアタイム負けたこと根に持ってんじゃねぇよw


 29:漆黒のゆうた 2時間前

 みんな強いっすねwww了解wwww精進しますwwwwww



「つまりデマだったってことか?」

「紅のソードダンサー許さねぇ。コイツのせいで俺の出席日数が減ったんだからよ」

「それはどう考えても俺たちの責任だろ。ノリノリでサボってたよな健吾」

「待ってください。デマだと決めつけるのは早いのではないでしょうか」

「デマ以外の何物でもねぇだろ。俺だけじゃねぇ、他にも手に入らなかったヤツがいっぱいいるんだしよ」

「しかし、祐介君と二階堂さんはボーナスアイテムを手に入れています」


 そうだ、俺と彩華さんは手に入れている。もしも本当にデマだとしたら、説明がつかない。


「じゃあ何か、掲示板の連中が嘘をついてるってことか?」

「いえ、それも違うと思います。僕の予想なんですけど、使用した装備に理由があるんじゃないでしょうか」

「どういうことだ?」

「ネットゲームでたまにあるでしょう? 敵とのレベル差があると、ドロップアイテムや経験値にマイナス補正がかかるというものが」

「あるな、そういうゲーム」

「今回のこともそれと似たようなものじゃないでしょうか。掲示板を見る限り、三十分を切るタイムでクリアした人は高ランクの武器を使っているようですからね」

「武器のランクとモンスターのランクに差がありすぎるから、アイテムを落とさなかったってことか」

「そうです。ちゃんとランクの近い武器で倒せば、一定の確率でボーナスドロップを得られると思います」

「つまり健吾たちがボーナスドロップを手に入れられなかったのは、運が悪かったってこと?」

「そうでしょうね」


 つまり何度も繰り返してクリアすれば、みんなアイテムを手に入れられるということか。どのみちボーナスアイテムを一個売ったくらいじゃ装備を買うお金に全然届かなかったんだ。また明日みんなで岩の迷宮を周回すればいいだろう。


「一つ気になったことを言ってもいい健吾?」

「おう、なんだよ」

「さっきの書き込み、どこにも必ずボーナスドロップが手に入るなんて書いてなくない?」

「……誰にでも勘違いはあるだろ」

「あれだけ大騒ぎしておいて勘違いってダサいぞ」

「ほう、祐介。命をドロップしたいなら俺が手伝ってやろうか?」


 健吾が一人や二人殺っててもおかしくない目つきで睨んでくる。ちょっと言い過ぎたかもしれない、素直に謝っておこう。触らぬ健吾にたたりなしだ。


「ごめんごめん、ちょっと浮かれてたよ」

「ふん、今回だけは許してやる。ところで、腕ひしぎ十字固めとアキレス腱固め、お前はどっちが好きだ?」

「……なんでそんなこと聞くの?」

「プレゼントはやっぱり好きなモノの方がいいかと思ってよ」

「どっちもノーサンキューだから! というか絶対許してないよね!?」


 こんな危険人物とは一緒にいられない。俺は帰らせてもらうぞ。


「それじゃみんなまた明日!」

「逃げるのかよ!」

「バイバイ祐介」

「お疲れ様です。また明日やりましょう」


 別れの挨拶もそこそこに、いち早くログアウトして一直線に走り出す。

 ゴブリンの住処攻略のための第一歩を踏み出せたのは大きい。今のペースで行けば、試練の塔なんてすぐにクリアできるかもしれない。いや、クリアして見せる。そのためには、やはり装備を買うために岩の迷宮を周回プレイするのが一番だ。これからの目標を頭に浮かべながら、俺は家へと帰宅した。


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