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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
狂った王国と反逆の魔王
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オ・フ・ロ♪

 この世界には、科学技術の他に、魔法技術というモノが文明に栄えている。

 魔力を動力源として動くのが魔法道具。対して、そうでないのが科学道具。

 この世界では圧倒的に魔法道具の数が勝っているが、それでも科学技術によって作られた道具がないわけではない。

 むしろ、融合されたりしているから、魔法道具の数が科学技術のみで作られたライフハックが、数の上で劣っているのは当然とも言える。


 その、一つの例が、今俺の目の前に起動している通信宝珠搭載の通信機器……簡単に言えば、PCである。


「ん〜〜っ!終ったぁ……」


 纏めた報告書類の確認を済ませた俺は、魔法文明向上協力委員会へと送信を果たし、座椅子の上で伸びをした。


 現在のこの世界の文明レベルは、俺の居た日本からすれば、下手をすれば平成初期……いや、後期にも匹敵するだろう。

 それもこれも、科学技術よりも扱いやすい魔法技術の存在のおかげである。


 俺はPCの電源を落とすと、プラグを抜いてストレージに放り込んだ。


(……そろそろ、第二段階かなぁ)


 から売り。

 この世界において空売りとは、簡単に言えば「その会社の株を、一番高いときに売りつけて、株価が大暴落した際に買い戻すことで、多額の利益を得るギャンブルのような荒稼ぎ」である。


 経済のことはあまり知らないのだが、アルトリスは確かそんなことを言っていた。


 彼女曰く、今後において大量の資金と、協会に属していない、別の拠点が必要であるとかなんとか言っていたが……。


 まぁ、うちの参謀はアイツなんだし、俺も俺で、作戦立てるとかそんな難しい事はできないから別にいいけどさ。


 そんなことを考えていると、不意に部屋の扉がノックされる音が聞こえてきた。


「ふ、フローラさん。少しいいですか?」


 秘書ちゃんの声だ。

 だが、どうやら今はポリモーフ薬の効果が抜けているらしい。


「いいよ、入って」


「し、失礼します……」


 おずおずと部屋に入ってくる彼女のそれは、まるで初夜を前にした生娘のようだった。


「どうしたの、こんな時間に?」


 因みに、俺の姿はまだポリモーフ薬の効果は抜けておらず、お姉さんフォルムを維持している。


 怪訝に思った俺は、そんな彼女に微笑みかけながら、そう尋ねた。


「えっと……。今日、いつも一緒にお風呂入ってくれてる娘が、夜勤任務みたいで。その……」


 言い淀む秘書ちゃん。


「もしかして、俺と一緒にお風呂入りたいの?」


「は、はい。その、眼鏡取っちゃうと、《石化》が発動しちゃうので、一人じゃ洗えなくて……」


 ふむ。

 つまり秘書ちゃんは俺に、目隠しプレイをご所望と。


 俺は、密かに欲情した心を宥めると、チロリと舌なめずりをした。

 どうやら、制御できなかったようである。


「わかった。そういうことなら、俺がその目隠しプレイの相手になってやろう!」


「め、目隠しプレイ!?」


「なんだ、違うのか?」


 驚いた様相の彼女に、俺は少し不服そうな顔をして尋ねた。


「違います!そもそも、私にそんな趣味はありません!」


「えー、うっそだぁ〜?」


「嘘じゃないです!」


 頬を膨らませて、まるで仔リスのようだ。

 かわいい。


 そんな風に思っていると、秘書ちゃんは肩をすくめて、ため息をついた。


「まったく、フローラさんはちょっと節操がなさすぎです!」


 彼女はそんな風に怒りながら、プイとそっぽを向いた。


「ま、冗談はそのくらいにして」


「それ、全く冗談に聞こえないんですけど」


 ……俺、周りからどんな風に見られてるんだろう?


 少し気になって考えようとしたけど、何だか答えがわかるのがすごく恐ろしい気がして、俺は思考を中断した。



















 それは兎も角として、何とか秘書ちゃんのご機嫌取りに成功した俺は、早速二人で欲情・・へと向かうのだった。


「フローラさん……?」


「違う、誤植だよ誤植。別に深い意味なんてないよ?」


 『浴場』をまさか『欲情』へと意図的に誤植しただなんて、そんなはずないじゃないか!HAHAHAHAHAHA!


「……」


「こほん」


 俺は口元に手を当てて、わざとらしく咳をいた。


 ともあれなんとあれ、二人は無事に、ホテルに取り付けられた浴場へと辿り着くのであった。


 閑話休題。


「それじゃあ、そこに座ってくれるかな」


 更衣室に取り付けられた鏡台の前に、亜空間から椅子を取り出すと、俺はそこに秘書ちゃんが座るように指示を出した。


「はーい」


 ちょこんと椅子に腰掛けると、鏡に向かって可愛らしく返事をする。


 俺はそんな彼女の髪に手をかけると、絡まった毛髪にロンをゆっくりと浸透させながら、先ずは手櫛をかける。


「ふぁ……!?」


 小さな悲鳴を上げる秘書ちゃん。


(ちょっと圧力が高かったか……)


 性感帯をくすぐられるのに似た感覚に襲われたであろうその反応を見て、俺は圧力を落とす。

 あまり圧力が高いと、龍骨ロングーを傷つけてしまうのだ。


 余談だが、微量の生命エネルギーに触れて、髪が自らの位置を思い出したかの如く元に戻るそれは、形状記憶合金のそれにとても似ていると、俺は思った。


「そういえば、いつもお風呂ってどうしてたんだ?その眼鏡外しちゃったら、《石化》が発動するんだろう?」


 丁寧に手櫛をかけながら、ふと気になったことを秘書ちゃんに尋ねてみる。


「いつもは……友達に洗ってもらってました。タオルで目隠しをすれば、《石化》は発動しませんので」


「へぇ、そうなんだ……。そのタオルって、何か特別な術式とか組んでたりするの?」


「いえ、そういったものは別に」


 つまり、《石化》の発動条件はモノを凝視することと、目に光が入ることか。

 この二つが揃って初めて、《石化》は発動すると。


「じゃあ、俺でも大丈夫だな」


「そう……ですね……」


 手櫛から普通の櫛に切り替えて、今度は普通に髪の毛を梳いていく。

 牡丹の花があしらわれた、赤い櫛だ。


「何か不満か?」


「……いえ、なんでもありませんよ。……少し、友達のことを考えてたんです」


「そっか」


 俺は、そう簡単に相槌を打つと、服を脱ぐように指示をして、洗い場へと足を運んだ。

 因みに俺は、髪の毛だけに範囲を固定して、改編魔法の応用で髪を梳かしたので、自分で毛づくろいする必要はない。


 魔法って便利だよね!



















「今日も不正はありませんデスネ……」


 少し残念そうなトーンで、少女は口ずさむ。


「そうね……。あの娘の報告だと、そろそろ調子に乗ってもおかしくないところなんだけれど……」


(そう簡単にはいかないものかしら)


 ハンナ・アルトリスはため息をつくと、首をぐるりと回した。


 背後では、先程交代に来た監視員が、ホライズン・カンパニーの社長を《追尾》スキルで監視している。


「今日は帰りましょうか」


「ハイ、お疲れ様デシタ♪」


 諦めたようにそう呟くと、アルトリスはタッグを組んでいた少女を、協会支部へと転送した。


 少女――ラフィは伸びをすると、いつの間にかたどり着いていたスドビオ西支部(本部もスドビオにあるのだが、街が広いので、東西南北に一つづつ支部が置かれている)の自室へと向かった。


「もう寝ちゃってるカナ……?」


 ラフィは、借りているホテルの部屋の鍵を受付で受け取ると、『パーティ:ペペロンチーノ様(女性)』と書かれた札が掛けてある扉まで移動する。


 扉の前まで来ると、スヤスヤと寝息が聞こえてきた。

 どうやらもう眠っているようである。


「やっぱり、ペティ寝てたんダネ……。あれ、あの人影ハ……」


 新入りのペティを起こさないよう、シーフらしく適正のあった《暗視》を使って、ベッドまで歩を進めていると、見覚えのある来客の姿が見えた。


「あ、お帰りラフィ」


「ただいま、フローラサン♪」


 どうやら、非常勤で雇われていた冒険者だったようだ。

 ラフィの視点では、どうやら彼女はそういう位置づけになっているらしい。


 というのも、アルトリスが「はて、どのようにして貴女のプロフィールを作ろうかしら?」と言って、レイスがその様に提案したからなのだが。


 初めてメンバーと顔合わせをした時、ロットはまさか『ペペロンチーノ』が協会に属しているとは思っていなかったようで、表情を繕うことに苦労したらしいという裏話まである。


「もしかしテ、ペティのお風呂頼まれちゃったデスカ?」


 少しだけ上気しているフローラ(ロット・マクトリカ)の顔を見て、はにかみながらそう尋ねる。


「うん、充分堪能させてもらったよ」


「堪能……?」


 ペティが寝ているので、あまり大きな声を出せないので、心の中でだけツッコミのセリフを入れておく。


(た、堪能ってこの女……!ペティに何したのサ!?)


「それじゃあ、ラフィも戻ってきたことだし、俺はそろそろ行くよ」


 そんな彼女の心情を露知らずに、フローラはそう告げると、彼女の隣を通り過ぎて、その場を後にした。


 斯くして、夜は更けていく。

 次回、謀反


 次回の投稿は七月二十九日になります。

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