訪問客(2)
それでは、本日二度目の投稿です。
どうぞ。
「お話は三点ほどあります」
ジーナさんは、指を三本立てると、そう話し始めた。
「まず一点目は、評議会連邦との戦争、及び魔女狩りについて。二点目は、戦争中の防衛策、及び対テロ対策――これは、調停委員会の仕事でもあります。そして三点目はロットちゃん。あなたに対する、国のこれからの意見です」
評議会との戦争、それに魔女狩り……。
やはりそう来たか。
そして三つ目。
やはり国は、俺を実験動物か何か。それに類する用途で利用する気なのだろう。
俺は瞬時にそう解釈すると、首肯して、続きを促した。
「それでは、先ずは戦争について話す前に、あなたがここに左遷された理由を話そうかと思います――」
それから彼女から伝えられた情報は、殆ど俺の予測どおりだった。
戦争の進行についても色々と話してもらったが、どうやら国ごと囲い込んで、外側へ戦力が集中している隙きに、事前に送り込んだ少数精鋭が内側から崩すという作戦らしい。
その時期の合図が、どうやら俺に魔女狩り部隊が派遣され、俺がそれを壊滅させたタイミングらしいのだ。
俺一人でその部隊を壊滅できるとか、普通に思ってるところが、何だか腹が立つ。
言霊の魔女ハンナ・アルトリスの時は、まあなんとかなったし大丈夫だとは思うんだが……。
「続いて二点目です」
一点目の話が終わり、暫く思索に耽っていると、それを打ち切るようにジーナさんは話を続ける。
「先程も申した通り、この戦争には殆どの兵力が費やされる事になります。そうなった時、この国は非常にもろくなります」
なぜなら、この国に常駐させている俺の分身体の殆どが、兵站作成に動員されるからだ。
そうなると、こちらの護りは限りなく薄くなってしまう。
勿論、俺がそれを増やすということも出来なくはないが……。
それにまぁ、使うのは分身じゃなくても、全自動のmap部隊を創れば、問題はないからな。
防御性能とかその他諸々に、チートを組み込んで防衛に回す。
その旨を話すと、彼女は首を横に振った。
「それはさせられません」
「何故?」
「これは三点目の話に食い込みますが……。万が一鹵獲された場合、非常に面倒な事になります。いえ、それ以前に、あなたがそうできるという事は、逆に考えれば、国としてはあなたに守ってもらうのと同時に、同等の火力を持つ兵器を向けられているのと同じなのです。それも、まったく防御できない状況で。他にも色々あります。今でさえ、旧五傑が勢力を抑え込んでいますが、あなたを危険視する声が有力者の間で広がっているのです。あなたを直接的に攻撃できないにしろ、腐った人間共は、あなたの家族や友人たちにまで手を出しかねません」
……なるほどねぇ。
世も世知辛くなったものだ。
ていうか、俺に対する暗殺計画ってもう始まってたんだね。気づかなかった。
とは言うが、まあ聞いた限りじゃ尋常じゃない事態だよなぁ、これ。
もう自分だけなんとかすりゃいいって話じゃ無くなってるしなぁ。
「だったら、防衛はどうするんだ?mapもメルクリウスも使わないんだったら、残る防衛策は旧来の飛空艇と戦車、それから歩兵くらいなものだろう?」
この世界において、力のある歩兵というのはそれだけで戦車一両分の戦術的価値がある。と言っても、それほどのレベルになるには、この国の制度で表すならば三等クラス――大型の魔物に対して、一人で対処できる戦力――が必要になるのだが。
「その件は問題ないよ。さっきロットちゃんが言ったとおり、飛空艇と戦車と歩兵で十分対処できるからね!」
「包囲作戦には二等以上の指揮官達が、七等以下の将兵に指示を出しますからね。アビス・メルクリウスの操作は、十等兵でも訓練さえさせればできますから」
メープルの回答に、そう補足を入れるジーナ。
なるほど。
それなら問題はないかもしれない。
「ですが、それでも防衛ラインを突破されることもあります。ですので、危ないと思ったら、こちらの通信機から指示を出します」
「それで、その指示がくればすぐに出動できるようにしておけと」
「左様」
ふむふむ。
防衛については何となく理解できた。
「じゃあ、テロ対策ってのは?」
俺はジーナさんから、黒色の、少し大きめのラジオっぽい形状をした通信機を受け取ると、ストレージに格納しながら話を進める。
「もう知っていると思いますが、ギト王国が改名して国際調停国となってから、色々と騒動が置きましたよね?」
「ああ。そういえばあったね、そういうの」
そして俺がmap部隊を引き連れて騒動を押し返したり、ギトの属国とか植民地とか色々作ったんだっけね。
今のギトがこれだけ大きいのも、殆どが俺のお陰みたいなものだ。
今思えば、魔女狩りってやつはその頃から既にちょこちょこと動き始めていたのかもしれない。
軍事力の不均衡による、世界支配の兆候は、この頃から現れていた。
「実はあの時起きた一揆は、吸収されたウルバーン帝国が主導で行っていたとの情報があるんです」
「なるほど。それで、今回もこの戦争に乗じて旧ウルバーン帝国が動き出す可能性があると」
「はい」
こりゃ、凄いなぁ。
もしかしてあの国、これを狙って降伏したんじゃなかろうな?
表向きは吸収されたと見せかけて、水面下では復讐の機会を伺いながら、作戦を立て、兵力を高めていく。
そして、一番防御の薄くなったところで、反乱開始。
道理で降伏するのが早かったわけだ。
あの頃は何も考えてなかったが、今こうやって思考してみれば、色んなことが見えてくる。
ウルバーン帝国。秀逸なこった。
「じゃあ、テロ対策ってのはつまり、ウルバーンの行動を見張ればいいわけなんだよな?……できるかな。俺そんなことやったことないし、いまいち勝手が分からないんだよ」
でも、ミッショ○インポッシブルみたいでかっこよくはあるよな。
だが、いまいちどうすればいいかは分からない。
ミッドさんなら何か知ってそうだが、あの人世界中飛び回ってるって言ってたし、今居るかどうか……。
そう思っていると、ジーナさんは首を横に振って、俺の考えを否定した。
「いえ。それは私達の任務ですので、お気になさらず」
「ん?じゃあ何故俺にそのことを?」
「ええ。ですので一つ、魔法道具の作製を頼みたいのです」
ああ、納得。そういうことか。
「わかった。できたら持っていくよ」
「ありがとうございます、ロットちゃん。では、要望は後ほど」
彼女はそう言うと、軽く会釈をした。
閑話休題。
それから俺達は、これから先来るであろう刺客のパターンをある程度予想し、対処をある程度決めておくことにした。
先ずはオーソドックスに監視カメラの設置。
ただカメラを設置するのでは、プロの暗殺者が刺客として送られてくるだろうことを予測して、ナノマシンによる監視を行うことにした。
また、そのナノマシンに、不審者を感知すると、自動追尾して現在地を俺の通信宝珠が組み込まれた端末へと送信するように設定する。
次に、家の敷地にセンサーや結界を敷いてみる。
監視用ナノマシンが不審者を認識すると、容疑者の情報が端末からセンサーに送られ、容疑者を結界に捕縛するのだ。
だが、一つここで問題が出てきた。
不審な行動の定義がわからないのだ。
これでは二つ目の案は使えそうにない。なら、いっそ監視用ナノマシンだけの設置にすればいいのでは?という話になった。
そこで俺はそのナノマシンに、殺意や殺気などの思念を感知すると、失神する程度の電気を相手に流す、所謂スタンガンのような機能を追加してみることにした。
失神した容疑者は、結界で捕縛する様に設定すれば、もし目が冷めても逃げ出したりはできないだろう。
そうして俺たちは、この屋敷にこっそりと、そういう秘密の絡繰を施したのだった。
次回、訪問客(3)




