訪問客
家に帰るなり、俺は真っ先にベッドにダイブした。
「ヤバい……もう、限界……」
飛び込んだ衝撃で、バネが軋む音を聞きながら、俺はフカフカのオフトゥンの上で、制服をキャストオフする。
白を基調とした、薄いピンク色の縁取りが施された下着姿に早変わりする。
因みに、もうブラはつけている。サイズは俺に合わせて小さめに作られている。
ただ、これは俺が創ったものでもなければ、買ってきたものでもない。
十二年ほども女をやってきているのだ、これしきのことで動揺なんてしないが、流石にまだ早いんじゃないの?と思ってて先延ばしにしていたところ、母親のウェンディが、昨日誂えてくれたのだ。
なんでも、あの制服にノーブラは、貴族の嗜みとして不似合いだとかなんだとか。
俺にはよくわからんがな。
さて、それでは早速。たまりに溜まった性欲を、この右手で発散しますか。
そう考えて、いざ我が指先をかの秘境の奥地へ!と、その時だった。無粋なノック音が扉の向こうから聞こえてきたのだ。
――コンコンコン。
扉のノックする音を聞きつけた俺は、思考加速の魔法を使って瞬時に普段着へと着替え直した。
「にゃ、にゃにかにゃっ!?」
盛大に噛んでしまった。
扉の向こう側から、怪訝な雰囲気が漂ってくる。
……これは、言い直したほうがいいよね、きっと。
「んっん……。あーっと、何の用かな?」
「お客様がお見えです」
「お客?」
「ロットちゃ〜ん!」
一階ロビーに降りてみると、そこには見慣れた銀髪犬耳の少女が両手を振って待っていた。
言わずもがな。エルフビーストのメープルである。
隣には銀髪のエルフ……じゃない、エルフビーストのジーナさんも居た。
「メープル!久しぶり!ジーナさんも、ご無沙汰してます」
ペコリとお辞儀をして、二人を迎え入れると、必殺『天使の笑顔』で接待することにする。
「えぇ、ご無沙汰してます」
ジーナさんもニコリと、俺よりさらに高次元なレベルの『天使の笑顔』……いや、これは天使じゃねぇ。“女神”だ!『女神の笑顔』だ!
おぉぅ……。
なんと、なんと眩しい笑顔なんだ。
まるで後光が差しているようだ!
そんな軽いカルチャーショックを受けていると、ふふっと笑みをこぼして、ジーナさんが進行を促した。
「挨拶はこのくらいにして、そろそろ話に移りましょうか」
「そうですね。では、こちらへ」
俺はそう言うと、客間へと二人をリードする。
そして、ついでとばかりに、創造魔法で茶会のセットを用意した。
因みに創造魔法は、自身のイメージを元に物体を創り出すので、現れたケーキテーブルや茶菓子、紅茶などは、俺の趣味が全開となっていた。
しかし、二人にそんなことを気にする素振りは見えない。
俺はわからないようにこっそりと胸を撫で下ろすと、ソーサーを手にとって、ティーカップを傾けた。
「うん、いい温度だ。どうぞ召し上がってください」
「それでは、お言葉に甘えて」
そう言って、ジーナさんも紅茶を一口啜る。
「話の前に……防音結界は張りますか?」
「ええ、お願いします」
わざわざ通信用の水晶で話をしてこなかったということには、情報漏洩をできるだけ避けるためなのだろうと予測した提案だったが、どうやら正解だったようだ。
俺は再度創造魔法を発動させて、防音結界を構築させる。
普通の魔法よりもこちらの方が精度は高いし、こちらも集中力を魔法の維持に使わなくて済むのだ。
今更ながら、創造魔法は便利だと思う。
「展開は完了しました。それでは、話しましょうか」
次回、訪問客(2)




