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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
魔女狩り信徒
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ゲシュペンスト(1)

 一行は、先程の峡谷から首都スドビオの冒険者ギルドへと場所を移していた。


 カウンターの向こうでは、先程のレイドのリーダーらしいパーティ『ペペロンチーノ』が、戦果報告をしていた。


 ていうか。

 『ペペロンチーノ』って絶対適当だろ。


「いや~、それにしてもお嬢ちゃん。アンタこんなにちっちぇえのにつよいんだなぁ!委員会のお偉いさんはみんなあんななのか?」


「んなわけねぇだろwww何言ってんだよゴルバチョフさんよ!お嬢、家名マクトリカってんだって?魔法の名門だよな、あそこ。なんか秘法でもあんじゃねぇの?」


「バッカ!そんなこと聞いちゃわりぃだろ?秘法は隠すから秘法なんだよ!」


「んあ?そうだっけか?ガハハハハハハハ!」


 うわぁ、酒くせぇ……。

 特にこのオッサン!

 ニンニク食いながら笑うなよ!


 俺は愛想笑いを浮かべながら、心の中で愚痴を叫んだ。


 なぜこんなにギルドが騒がしいかというと、オークを倒した報酬で、かなりの金がレイドに降りてきたからだ。

 それを皮切りに、んじゃこれから宴会しようぜ!レイドのやつら強制で驕りな!とかいうノリに発展し、現在に至るのである。


 因みに、どうやってオークの数を判別したのか、疑問に思って受付の人に聞いてみたところ「企業秘密です」とあっさり流されてしまった。


 そりゃな。

 そんな技術があれば、討伐数を誤魔化したりするなんて悪用者が出てくるかもしれないしな。


 よくわからんが、そういうことだろう。


 しばらく俺がジョンの影からオッサンたちの相手をしていると、『ペペロンチーノ』のメンバーがこちらへと帰ってきた。


「おまたせ~♪待った?」


 声の方を向くと、肩にそれなりの大きさの銭袋を担いだラフィーが手を振っていた。


「うわ、それいくら入ってるんだ?」


「んっとネ~、龍車一台は余裕で買えるくらいかナ~♪」


 ふふ~ん♪と、機嫌良さそうに、彼女は俺の質問に答える。


「へぇ、そんなに」


 龍車は現代の車並み、もしくはそれ以上の価値があるので、そこそこいい値段がする。

 それを一台は余裕で買えるくらいの報酬。


 すごい成果だ。


「うんうん♪これで一ヶ月は遊び呆けられるネ♪」


「いいや、ラフィーの嬢ちゃん。今日はレイド参加のやつらは強制で驕りだぜ?ワンパーティだけ抜け駆けは許さねぇ!」


「えーっ!?それは横暴ダヨ~!?」


 そんな彼らのやり取りを見て、不覚にも思ってしまう。


(いいな、ああいうの。俺も、仲間たちとそんなことができればいいのに)


 俺は、そんな彼らの様子を見て、少し寂しくなってしまった。


 なんだか、ここにいると息苦しい感じがする。


 俺はジョンの服の裾を引っ張ると彼の顔を見上げた。


「どうしたんです、隊長?もしかして酔いましたか?」


「いや、そうじゃないけど……。ちょっと、外の風に当たってくる」


「そうですか。あまり遠くには行かないでくださいよ?」


「うん」


 俺はそう返事を返すと、その場を抜け出して、ギルドから離れた。















 外は静かだった。

 夜の街が、街灯に照らされてキラキラと輝いていた。

 それがなんだか、とても懐かしいような感じがした。


 夏の夜の風は、昼間に比べて涼しかった。

 遠くではセミの鳴き声かコオロギの鳴き声が聞こえている。


 奥にある大きな噴水の音がたまに響いて、夜空の星も相まって、なんだか気分が落ち着いた。


 ふと、懐かしい感じが心に浮かんできた。

 どこかで見たことがあるような景色。

 まぁ、今日はここらを何回も通ったから、それは当たり前なのだけれど……。


 もっと前に、俺はここへ来たことがあるような、そんな感じが──


 ──ザーッ。


 ふと、砂嵐の音が聞こえた。


 同時に、街が一瞬だけ、真っ白になって見えた。


「っ!!」


 一瞬、息を飲んだ。


 そうだ、ここには何度も来たことがあった。


 遠い昔だ。

 それに、最近にもここへ訪れた記憶が──。


 しかし、そんな感覚は一瞬の後に、淡く消え去っていった。


(そうか……。ここが──)


 俺は石のベンチから立ち上がると、ギルドの横に備え付けられていた階段から、二階にある宿の部屋まで駆け登っていった。



















「──それで、そこをピーターが助けたってわけさ!な、ラフィー?」


「ちょっと、やめてヨ~♪それ、昔の話だからサ?」


「だってさ、ピーター!ガハハハハ!」


「へぇ、そうなんですか~」


 俺は『ペペロンチーノ』のメンバーの話を聞いていた。

 みんな楽しそうに話してくれる。

 それは、少し酒に酔っているということもあるのだろうが……。


 本当に、みんな楽しそうだ。


 俺は笑顔を浮かべると、グラスに口をつけた。


 すると、その時ふと目の端に、何か急いだ様子で二階へ上がっていくロットの姿が映った。


(何かあったのだろうか?)


「すみません、ちょっとトイレ行ってきます」


 俺は一言そう告げると、二階に上がる階段を上っていった。


「おう、出してこい!」


「もう、ガニーさんってば下品!」


「ガハハハハ!そうかそうか!」


「も~」


















 階段を駆け上がると、どうやら既に彼女は部屋に戻った後のようだった。


「たしか、二〇六号室だっけ」


 俺は部屋の扉の前へと駆け寄ると、ノックをした。


「なんだ?」


「さっき走って帰るのが見えたので。何かあったのかと」


「……何もないよ」


「そうですか」


 やつぱり、何かおかしい。


 そう不思議に思っていると、一階からピーターが上がってきた。


「ピーターさん」


「エインズワースさん。どうしてこんなところに?トイレなら一階にも……何か別の理由で?」


 すると彼は、何か覚ったようにそう質問した。


「あー、いや。もう用事は済みました。ピーターさんこそなぜ?」


「二階に上がっていくのを見て、ちょっと。そういうことでしたら、そろそろ戻りません?もうすぐゴルバチョフさんの手品が始まりますよ」


 彼はそう言うと、踵を返して階段の方へと歩いて行った。


(隊長のこと、少し気になるけど……)


 何もないなら、これ以上突っ込むのも無粋か。


 俺はそう結論をつけると、彼についてその場をあとにした。

 次回、ゲシュペンスト(2)

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