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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
魔女狩り信徒
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オーク・ロード(2)

「くそっ!量多すぎだろ!?」


 オレは大振りに剣を振るってくるオークを受け流しながら、愚痴を叫んだ。


「文句言わずに、手を動かすデスヨ、ピーター!」


 そんなオレとは対照的に、幼なじみでシーフのラフィーは、キリキリと素早い動きで迫り来るオークの群れを捌いていた。


「範囲魔法撃つぞ!引けーっ!」


 後方で支援を担当しているメイジ隊の隊長、ゴルバチョフが、よく通る声で指示を飛ばした。


 オレたちはその指示を聞くと、即座に撤退行動をとった。

 その直後、ゴルバチョフの指揮が、メイジ隊に響いた。


「「グラン・ジェル!」」


 赤い閃光と共に弾き出された魔力弾が、オークの群れの中に着弾し、爆発する。


 ──ズゴォォォオオオオオ!!!!


 オークの死骸が弾け飛び、空から奴等の残骸が雨のように降り注いでくる。


「「ブレイク!」」


 続けて、その降り注ぐ残骸へ向かってさらに魔力弾が発射され、それに応じて、その残骸は敵陣地へと弾丸のように飛来した。


 しかし、それでもまだ決定打には届かない。


「ピーター!後ろ!」


 絶壁の凹みに体を埋めて弓を引いていたアーチャーのテリーから、警告が飛ぶ。


「!?『バッシュ』!」


 その警告を便りに、後ろから石槍を突いてくる歩兵オークの懐に潜り込み、すかさずスキル技を叩き込んだ。


 ──バシャッ!


 オークの頭蓋が割れて、生臭い脳漿が飛び散った。


「あ~っ!くっせーデスヨ、ピーター!」


「生きてるだけマシだ!」


 そう言いつつも、ニヤニヤと破顔して、俺たちはオークを狩り続けた。


 と、その直後。


 ──バァァァアアン!!


「ぐはっ!?」


「なぶっ!?」


「うわっ!?」


 凄まじい衝撃波が、群れの中心から発生した。


「おい、誰のだ!?」


「違う!俺たちのじゃねぇぞ!あそこ見ろ!」


 口々に叫ぶ後衛の声に気をとられた俺たちは、その方角を見て唖然とした。

 そして驚くべきことに、その轟音にオークたちの視線が釘付けになっていた。


「上出来だ。よく一目見ただけでコピー出来たな、ジョン?」


「まぁ、あれくらいなら出来ますよ」


 そんな、周りにいるオークの事なんてまるで眼中にないかのように、そんな他愛ない会話を繰り広げている二人の姿が、そこにはあった。


















 上手くジョンが滅結を発動し、そこにできた空間に着地した俺たちは、その場で打ち合わせを始めた。


「んじゃ、mapを貸すから、ジョンはあそこの集団の救出を頼む。あとは俺一人で十分だから」


「え!?」


 そう提案してきた俺に対して、驚愕の表情を浮かべるジョン。


「何か不満でも?」


「……いえ、何でもありません」


「じゃ、そっちよろしく」


 簡単に打ち合わせを終わらせると、mapを二十機ほど創造して、彼を向こうで固まっているレイドに向けて転移させた。


「終わったらギルドで落ち合おう!」


 ──さて、邪魔は居なくなったところだし、さっさと始めるとしよう。


 そうだな。

 ただ討伐するのも面白くないし、タイムアタックにしよう。

 どうせだし、縛りプレイってのもいいな。


 そうだな。

 改編魔法と範囲魔法の禁止縛りにしよう。


 改編魔法禁止ということは、分身の利用を縛るってことになるけど、まぁ大丈夫だろ。


 身体能力強化だけで、この数を相手にするなら……リミットは一時間、いや、三十分あればいけるか?


 俺は顎に指を当てながら、周囲をぐるりと囲むようにしてこちらに意識を向けているオークたちを観察した。


 この現状は、相手からすればおそらく魔物たちの街を攻め落とそうと考えて行軍中に、運悪く魔王クラスの魔物に鉢合わせた的な感じだろうか。


 自分で自分のことを魔王クラスとか言うのはちょっとアレだけど、古代の魔女なんて魔王とそんな変わらないだろう。


 俺は創造魔法で時計を創ると、タイマーを設定した。


「さて、楽しもうか」
























 この数なら、身体能力強化オンリーで、三十分もあれば捌けると思っていたときが俺にもありました。


「あーっ!くっそ、めんどくせーぇっ!!」


 もう持久力がそろそろ心もとなく感じてきた頃だった。


 俺は空中へ待避しながらそう叫んだ。


「くっそ、一人でこの数を相手にするのがどれだけきついか……。正直舐めてたわ……」


 俺は防御魔法を展開しながら、盛大にため息をついた。


 もういい。

 縛りプレイとかもうやめだ、やめ。


 もう、一瞬で方をつけよう。

 そうだよ。

 俺は殲滅が担当なんだ。

 広域の範囲魔法で、面制圧を一瞬で済ませるのが俺の得意分野なのに。


 ていうか、俺ってそれ以外だとホントダメだな。


 俺は、そろそろ吊りそうな肩を回して、体の力を一旦抜いた。

 といっても、浮遊と防御の二つの魔法を制御し続ける為の精神力は保っている。


 これがどれだけ難しい行為かといえば、人の話を十人同時に聞き取り、十人の話すべてを理解するくらい難しい。


 といっても、彼女には脳内のあらゆる情報の交流を完全に制御するという人間離れした特技があるので、これはあくまで常人がした場合の難易度というはなしになる。


 三大欲求の抑制試練を受け、完遂したもののみが習得できる業なので仕方がない。


 俺は深く息を吸い込むと、魔力喰いによって得た魔力を、次々と練り始めた。


 魔力を練るという行為は、ほぼすべての魔法において必要な過程ではあるが、彼女の場合は別である。


 彼女は思考の中に魔法の式を構築するという方法をとっており、この方法によって構築から発動までの時間を短縮しているのだ。

 因みにこの方法は、以前カギネに習ったものだ。


 そんな俺が魔力を練るという行為をするということは、つまりその分魔力の放出量が増えるということでありつまり威力の増大なのである。


 俺は練り上げた魔力を奴らに侵食させていった。


 そして、その次の瞬間。


 巨大な破裂音と共に、その峡谷は真っ赤になった。


 ……が。


「どうやら、手加減しすぎたか」


 ポツリ、そう呟いた彼女の視線の先には、目を白くして、口から血を吹き出しているオーク・ロードの変異種だった。


 この説明だと、もうほとんど死んでいるように見えるが、他のやつらは体が跡形もなく暴散しているのに対して、こいつはまだ体の肉が繋がっていたのだ。


 やつらは元は人間。

 人間ならこのレベルに耐えられるはずがない。


 予測するに、変異種は人を越えてしまった存在とでも言うべきか。


 俺はもう近づくことすら面倒に思えたので、防御魔法を応用した魔法、インビジブルを使って、丁寧に細切れにしておいた。


 しばらくすると、こちらに向かってくる大勢の足音が聞こえた。


「うわっ、何これ、血ですか!?」


 彼はそう言うと、ぎょっとした表情で辺りを見渡した。


 辺りには鮮血で染め上げられているため、とても生臭い、鉄臭い匂いが広がっていた。


「ジョン……。待っててくれてもよかったんだが」


「いえ。隊長にしては戦闘が長かったので」


 俺はふと設定していたタイマーに目をやると、既に一時間ほど延長している表示が現れていた。


(殲滅には一分も使ってないんだけどな……)


 俺は苦笑いを浮かべると、向こうで口々に話している冒険者の方を眺めた。

 すると、向こうも俺に気がついたのか、二人組の男女がこちらへ駆け寄ってきた。


「あ、あの!委員会の人ですよね?助けていただいてありがとうございます!オレ、ピーターっていいます!」


「ボクはラフィーダヨ!」


 ピーターと名乗った男性は、鉄製の軽装鎧を身に纏っていた。装備からして、ジョブは剣士ソードマンか。

 ラフィーも同じ防具だ。武器は大きめのナイフ。これは剣士というよりもシーフに近いかな。


 にしても、装備がまんま異世界ファンタジーだな。

 今までそういった感じのものをほとんど見なかったから、少し感動した。


 因みにギトでは板金ではなく革の方が主流だ。

 ていうかそもそも、特位制度のおかげでギトはそういうのは役人の仕事みたいになっているから、こうして民間企業(?)みたいになってるのはすごい新鮮な感じがする。


「俺はロットだ。ロット・マクトリカ。よろしくな」


 俺はそういうと、二人に両手を差し出した。


「よ、よろしくおねがいしますっ!」


「ヨロシク~♪」


 よし。

 自己紹介も済んだことだし、本題に移るとしようか。


「あー、ところでピーター。なんでこんな狭いところにこんな、大量のオークが行軍してきたか思い当たることはないか?」


 彼らはレイドを組んで、この峡谷でオークの軍勢とぶつかっていた。

 戦闘の様相からして、奇襲をかけられた風にも、かけた風にも見えなかった。


 つまり、レイドを組んでいた理由は別にあると考えることもできる。


 レイドというのは、いくつかのパーティが集まってつくる、一つの臨時的な集合みたいなものだ。

 その目的の多くは、一つのパーティでは狩れないレベルの魔物を狩りに行くときや、今回のように大きな群れを率いている魔物を殲滅したりするときである。


 もし、今回のオーク騒動が別の何かに起因するものだとしたら──。


「多分、アレしかないヨネ、ピーター?」


「ああ」


 やはり。

 これは何かあるな。


「アレとは?」


 隣で、同じことを考えていたらしいジョンが、二人に尋ねた。


「「ゲシュペンスト」」

 次回、ゲシュペンスト(1)

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