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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
魔女狩り信徒
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会合

 明るい木のテーブルに、人数分用意された湯気の立つ紅茶。真ん中にケーキテーブルが置かれ、宝石のようなケーキがセッティングされている。


 先程までいた、埃っぽい遺跡の中とは違い、石造りの小綺麗な喫茶店の中に、俺たちは居た。


「あそこで立ち話もなんでしょう、創造の魔女?会えて光栄だわ」


(転移魔法……いや、魔力の流れは感じなかった)


 俺は一行の顔色をうかがった。

 レヴィアは目の前のケーキに目を輝かせてうずうずしている。

 こいつは論外だな。

 ジョンは驚きに満ちた顔で、立ったまま気絶している。

 エリンは気絶こそしないものの、額に手を当てて立ち眩みに耐えているような素振りだ。


 確かに、車酔いと眼前暗黒感が合わさったような、気持ちの悪い感覚はする。

 三大欲求の抑制試練を受けたこの体ならなんともないが、そうでないエリンやジョンにとっては、少しきつかったかもしれない。


「リヴァイアサンでしたっけ?食べたいのならどうぞ。お代わりはお好きに頼んでもらって構わないわ」


 レヴィアの様子に失笑しながら、その女は彼女に許可を出した。


「なら遠慮なく」


(ぶれないな、この生物兵器)


 それほど余裕があるってことなんだろうけど。


「……そういえば、さっき創造の魔女って言ってたけど、あれはどういうことなんだ?」


 俺は、席について無遠慮にケーキにパクつくレヴィアの隣に腰を下ろすと、先程の疑問を口に出した。


「あら、ご存知ないかしら?古代の魔女(アルト・ヘクセ)は、貴女と、それから私を含めて七人居るのよ」


 ……どういうこと?

 古代の魔女って、この間レヴィアが話してた昔話のアレ一人だけじゃないのか?


 そんな俺の疑惑の視線に気がついたのか、レヴィアは紅茶を一口啜って、俺に返答をした。


「一番有名なのが、その話ってだけだよ。マイナーだけど、あと五人くらい魔女の文献が残ってる」


「ふーん……」


 ちょっと理解か追い付かないけど、今はそういうことにしておこうか。


 俺は出されていたカップに口をつけると、一息ついた。


「それで、用件は?」


「話が早くて助かるわ。ズバリ単刀直入に申します。貴女、協会に参加してくれませんかしら?」


「協会?」


 協会。

 正式な名称は、魔法技術文明向上協力委員会。


 曰く、全国的な魔法文明の向上を目的に、およそ百年前に東欧レムリア王国のスドビオに設立された組織。

 主に各国への魔法指南者の派遣と、魔法技術産業によって、目的を遂行している委員会である。


「それが、どうしてあんなところに?」


「実は、ギトの派遣した調査部隊が、何者かに撃退されたという噂を聞いたの。それで、気になって私たちも調査員を何組か派遣したのだけれど、結果は同じ。費用がもったいないものだから、私が直々にやって来たってところかしらね」


「それで?その原因は判ったのか?」


 俺がそう聞き返すと、テーブルの上に何かを取り出した。


「ええ。これよ」


 それは、紅く輝く、涙型の結晶だった。


「これは……紅白金か?」


 紅白金こうはくきんとは、プラチナに過剰な魔圧をかけ、高温高圧の空間に閉じ込めることによって生成する人工の魔法鉱石の1種である。


「それがどうしたって言うんだ?」


 聞くと、彼女は紅茶を一口啜って、問いに答えた。


「あそこの主であるあの魔物に、それが刺さっていたわ。正確には、埋め込まれていた、かしらね?」


 彼女は更に詳細を語った。


 この紅白金には、埋め込まれた生体の精神を凶暴化させる魔法式が組み込まれていたこと。

 それがあのような巨大な魔物に埋め込まれていたということは、人為的な手段によるものと考えられること。

 あのまま放っておけば、いずれは街に出てきて、災いをもたらしていたであろうということ。

 降りてきた場合、一番被害が出ると予想されるのはスドビオであること。

 その場合、協会には多大な被害が被り、それによって得する組織が存在するということ。

 以上の事から、これは一つのテロの一部であるということ。


「それで、ちょうどいいタイミングで、貴女がやって来たのよ」


 なるほど。

 つまり俺を誘った主な理由は、組織の防衛手段ということか。


「どうかしら。私たちに協力してくれないかしら?」


「冒険者として、個人的に引き受ける程度なら問題ないと思うよ」


 俺は彼女にそう答えると、その魔女はにこりと薄い微笑みを浮かべて、その手を差し出した。


「私は言霊の魔女、ハンナ・アルトリスよ。契約は成立したことでいいかしら?」


「勿論だ。改めまして、想像の魔女、ロット・マクトリカだ。これからよろしくな、アルトリス」


 そう言って、俺が彼女の手を握ろうとしたその瞬間。

 轟音と閃光がその部屋を満たした。


「「「!?」」」


 

 次回、閑話 バレンタイン

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