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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
魔女狩り信徒
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墓の下に在るものは。

「あ!先輩こんなところにいたんですね!」


 丁度墓石の掃除が終わって、一休みしていた頃。

 頭の上から、そんなエリンの声が聞こえてきた。


「レヴィアさん、ホントその鼻どうなってるんですか?」


「その気になれば、地底国の草の匂いまで嗅ぎ分けられるぞ?成分分析もある程度なら可能だ」


 続いて、呆れたような声音でレヴィアと話をする二人の話し声が聞こえてきた。


 時刻は朝日が上って少ししたくらいの時間帯だ。

 夏の大気が、夜の清涼から一変し、海の香りを連れて、夏の湿った暑い風が、その草原に吹いた。


「お墓、ですか?」


「あぁ。かなり放置されていたらしかったからな……」


 ここは、元は標高の高い山の上だったらしい。

 それが、地震か何かの影響を受けて、大陸の沿岸部が海中に沈み、こうしてこの場所は少し低いところに落ち着いていた。──というのも、徐々に取り戻しつつある、太古の記憶から推測した事でしかないのだが……。

 まぁ、大方それが正解に近いだろう。


 そのお陰か、ある程度墓下の遺体も綺麗な状態で保存されている。

 地下の石室を透視してみてわかったことだが、かなり保存上体も良いものだった。


 ……だけど。


「中は調べたんですか?」


「調べたよ。でも、空っぽだった。おそらく、墓荒らしでも来たんだろうね」


 俺は、そう尋ねてくるエリンに、嘘を吐いた。


 そんな少女の表情は、どこか寂しそうで、何か、そこではない遠くを見ているような目付きだった。


「……」


(黙っておいてやるか)


 そんな彼女の顔を見て、レヴィアはふとそんなことを考えた。

 同情か、もしくは空気でも読んだのか。

 レヴィアにはそれがどういうものかは、解らない。

 その必要もなかった。

 なぜなら、別にどうでもいいことなのだから。


「さて、朝食にしようか!」


 俺は、気持ちを切り替えるようにそう呟くと、寝そべっていたシーツの面積を拡大した。


「おぉう!そうだな!ご飯にしよう、ご飯!」


 その行動に乗るようにして、レヴィアが広げたシーツの上に胡座をかいた。


「そうですね、先輩。朝食にしましょう!私、獲物を狩ってきます!」


「いや、待ちたまえエリン君!その必要はないぞ!」


「な、なんですとぉ!?」


 そんなエリンとレヴィアの小芝居に苦笑いしつつ、俺はその場に創造魔法で弁当を作成した。


 何にしようかな。

 そういえば、昨日、レヴィアが唐揚げに興味津々だったし、それでいいや。


「……む、これは!?まさか、これが噂のカラッ揚げか!?」


 それが目の前に現れた瞬間、レヴィアの目に星が映った。


「うわぁ!先輩!この唐揚げ、再現度高いですよ!」


「なるほど、これは虜になるのも頷けるのぅ!この色艶!芳ばしい匂い!食べずともこの美味しさが解るってものだ!いや、食べるけど!食べずにはいられないけど!」


 そう言って、早速手掴みでそれを口へ放り込もうとするレヴィア。

 その様はまるで彗星のごとく、流星のごとく俊敏で、獲物を狩る獣のような手つきだった。


 だが、しかし。

 それは意外にもエリンの手によって防がれてしまう。


「ダメですよレヴィアたん!食べる前には、ちゃんといただきますを言わないと!」


「ぐぬっ……で、でも私は仏教徒じゃ──」


「──どこの誰であっても、食事に感謝するのは当然です!」


 確かに、レヴィアタンは仏教じゃないな。

 あれはどこの神話だったっけ……。


 でも、まぁそうだよな。


「感謝することは大切だよ」


 俺はそう言うと、両手を合わせて、いただきますを唱えた。




















 食事が終わり、少しの休憩の後、俺たちは再び探索を開始した。

 探索はサクサクと進む。

 何と言っても、レヴィアという強い味方がいるのだ。罠なんて路肩の石ころのように無視されている。


 おそらくこれを創ったのであろう白の兄も、まさかレヴィアタンによる攻略なんて、夢にも思ってなかった事だろう。

 そう考えると、何となく気の毒なような気がして、俺は彼に心の中で詫びるのだった。


 遺跡の構造は、今朝の内に魔力反射の法と透視を掛け合わせて、既にデータは徴収済みだった。

 徴収、と言うと、なんだか悪いことをしたような気分になるけど、まああながち間違ってもいないだろう。

 情報とは金である。とは、よく言ったものだ。


 構造的な情報以外にも手に入れた情報は沢山ある。

 例えば、昨夜どらちゃんを使ってデータ収集を行っていた、あのガラス版型データ端末。

 あの中には、古代の魔法に関する文献や、魔力、霊力、呪力、生命力、妖力などの、およそ精霊が関係していると思われる力の事などが含まれていた。


 妖力、というのは、言うなれば神気(生命力=HPロンと魔力の混合物)のベクトルがマイナスになったもの、とそこには書かれていた。

 意味はよくわからないけど。


 おそらく、黒白論の応用と思われる。

 黒白論は、この世界は存在と非在に分けられており、すべての物体は、観測という行為によりこれらのどちらかを選択している、とする仮説。

 精霊と呼ばれる概念生命体はこれに干渉して、魔力素子を発生させ、人々に魔法の行使を可能にしていると言われている。


 まぁともかく、そんな難しいこの世界の設定が書き留められた、いわば神様の手記ってことだね、あのガラス版は。


 閑話休題。


 それから俺たちは例の最奥部まで辿り着いた。

 図にして、ちょうどあの墓の真下に当たるだろう。


 その部屋を守るように、何か巨大な魔物が寝息を立てていた。


「うわっ、大きい……」


 思わず、エリンがそう呟いた。

 そう呟いてしまうのも無理はない。

 普通の大型の魔物なら、大きくても四、五メートルほどの体長があるのだが、そこで荒い寝息をたてているそのデカブツは、優に十メートルほどの巨体を持っていたのだ。


 そう言って、その部屋へ入り込もうとするエリンの肩を、ジョンが後ろへ引いた。


「ひゃっ!?な、何するんですか委員長!」


「シッ。あまり大きな声を出すな。あいつの様子が変だ」


(様子が……変?)


 エリンは今の彼の言葉を聞いて、今度は注意深くその巨大な生き物を観察してみる。


 すると──


「……先輩、委員長の鼻息が荒くてくすぐったいんですけど」


「エリン、安心しろ。そいつはロリコンだからお前には無害だ」


「それ、レヴィアたんと先輩は安心できなさそうですね……」


「いやいやいや、勝手にロリコンとか言わないでもらえませんか隊長!?」


 そんなやり取りを聞き流しながら、俺はジョンの言っている異変の原因を探ってみることにした。

 すると、俺はその部屋にもう一人の人影があることに気がついた。


「あら、お客さんかしら?」


 その言葉が広い部屋に響いたとき、その十メートルもあろうかという巨体が、ポリゴンの破片となって、ガラスのように砕け散っていった。


「「!?」」


 そして、その残り火の後ろから現れたのは、短い黒髪と銀色の瞳、それから紫色の口紅を着けた、中年の女性だった。

 次回、会合

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