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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
魔女狩り信徒
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遺跡探索(1)

「……さ、さあ!気を取り直してどんどん行こう!」


 俺は、冷めた空気を取り戻すため、敢えて大声でそう言って前へと足を踏み出した。


 やや後方では、何だか呆れた様子の三人のため息が聞こえてくるが、気にしてはいけない。

 気にしてたら、俺の心が持ちそうにない……。


 金髪のその少女は、そんな自分の心を騙すように、歌を歌いながら歩を進めた。


 ……その歌というのが、また音痴で、かつ日本語版の散歩だというのだから、三人が呆れているのもまたしかり。


「先輩……歌うならもっと上手に歌ってください」


「む。失礼だなぁ。お前らこの歌を知らないのか?」


「知らないも何も、音痴じゃどんな曲もアウトです」


「むぅ……。そう来るか……」


(こりゃ、カラオケでもつくるべきかな?)


 でもなぁ。

 行ったこと無いしなぁ。

 曲だってアニソンとボカロをたまにちょろっと聴くくらいしかしてなかったし、思い返せば、この世界に産まれ落ちて聞いたことのある歌曲と言えば、音楽の授業で聞いた校歌と国歌、その他古い曲を数曲程度だし。


 最近だと道が整備されるにつれて、吟遊詩人の価値も下がりつつある。

 それでもまだ需要があって、たまに点けるテレビには有名な詩団が出たりするけど……。


「カラオケをつくってみるか……」


「良いですね!名案です先輩!」


「あ、そう?」


 やっぱりそうか。

 うん。

 ……うん?


 いや、えっと、ちょっと待てよ?


 さっき返事したのって誰だ?


 俺は思考を一旦中止して、くるりと後ろを振り返った。

 するとそこには、ニコニコと笑顔を浮かべているエリンと、何の事だかさっぱりわからないジョンの顔があった。


 レヴィアはというと、カラオケってなんだ?食べ物か!?というキラキラした目でこちらとエリンを往復していた。


 ……レヴィアはどうやら、生物兵器の名残からか、最近食べることに趣味嗜好が出てきたようである。


「それで、先輩!どの辺りにつくるんですか!?やっぱり、実験都市のイゾルイですかね?つくるならやはりあそこですよね!?あー、懐かしいなぁ!中学のころよく友達と行ったんですよ!もう、熱気がすごくって、歌ってる途中からもうメガネが曇りっぱなしで!!」


「あ……うん。わかった。わかったから落ち着け」


 俺はどうどうと彼女のまだ言い足りなさそうな口に手を当てて黙らせる。


 ……あー、つまり、こういうことか。


 前に言ってたレヴィアの言う面白い体質ってつまり……転生した人間、もしくはトリップしてきたってこと……なのか?


「なぁエリンよ!カラオケって食べ物なのか!?食えるのか!?」


「そうですねぇ、私は唐揚げが一番好きでしたね!あ、あとリンゴサラダも良かったです!」


 おい、お前はもしかして歌で眼鏡か曇ったんじゃなくて、唐揚げの湯気で曇ったんじゃないのか?


 行ったことないからよくわかんないけど。


「唐揚げだと!?」


「そうそう!鳥の肉を油でカラッと揚げるんです!」


「なるほど!だからカラッ揚げなのか!!」


 ……なんか、カオスな空気が流れてて口を出すタイミングがつかめないなぁ……。


 みんなも考えてみてほしい。


 近未来的デザインの古代遺跡のど真ん中で、蒼い髪の美少女と、メガネのオッパイで背の高い委員長ぽい見た目の少女が、よだれを滴ながら唐揚げの話で盛り上がっているという、カオス。……あ、唐揚げじゃないカラオケだ。


「あ、あの、隊長……。カラオケ、とは何ですか?」


「聞いてくれるな、ジョン」


 俺は一言そう制すると、目をジト目にして深くため息をつくのだった。















 閑話休題。


 そんな一行だったが遺跡の探索は順調すぎるほど順調に進んだ。


 理由は簡単。

 まず、遺跡の防御システム──おそらくは未来の盗賊らを警戒したのだろう凶悪な妨害システム──は、ほぼすべてレヴィアたんの髪の毛によって無力化されていた。


 流石は神代の生物兵器。

 これくらいは目前の火の如く颯爽と見つけては先回りして叩き潰している。


 そのお陰か、罠のほとんどがどんなものかわからなかったけれど、一番驚いたのはやはり、とある大広間から続く入り口を守護していた、巨大なゴーレムを相手にしたときだっただろう。


 レヴィアはゴーレムを見つけるなり罠と一瞬で見抜いて、その枝毛一つ無い綺麗な蒼髪を操って、動けないようにがんじがらめにした後、同時に圧で破壊。修復する隙も与えず一片も残さず焼き尽くしていた。


 それも、部屋の四方の角から現れた四体を同時に相手したのだ。


 速すぎてよく見えなかった。


 ていうか、今さらだけどあの髪の毛伸縮自在なんだな。今度真似してみようか。


 それはさておき。

 そんな事をしていたものだから、こちらによってくる魔物は一匹──いや、一人もいなかった。

 そりゃそうだろう。

 彼女の戦闘力が桁違いなんだ。歯向かう方がどうかしている。


 俺?

 俺も当然、そんな怪物にエンカウントしたら逃げるよ。逃げる間もないだろうけど、とりあえず全力で逃げるよ。


 俺がチートなのは魔法だけだから。

 殲滅が担当だから。


 でもなぁ、こんなこと言ってたら、カギネさんに怒られるんだろうなぁ。


 単能であるな、汎用であれ!って。


 そう思っていると、俺たちはまた一つの部屋にたどり着いた。


「ここは……」


 そこは、大量のガラス板が納められた図書室だった。


 なるほど。

 紙媒体で記録するより、こっちの方が量も多く溜めることができるって算段なのか。


「ガラスですかね、先輩?」


 そのうちの一枚を抜き出して、裏返したり色々しながら調べるエリン。


「いや、タブレットの極薄版だな、これは」


「え、タブレット!?これがですか!?薄すぎません!?」


「いや……俺が想定していたより厚い。ていうか硬い。てっきり、新素材でもつくって、紙も同然な感じに仕上げてると思ってたんだが……」


 加工の問題か?それとも発想が及ばなかった?ビジュアルの問題?


「ま、そんなことはどうでもいいだろ」


 俺は、先程から呆然としているジョンを見て、ニヒルに笑って見せた。


「あの、隊長。さっきから話についていけないんですが……」


「あまり気にするな、ジョン」


「そうですよ委員長!いちいち気にしていたら脳ミソがパンクします!」


「ええぇ……」


 さてさて。

 そんなジョンは放置して、さっさとここにあるものを復元してみよう。

 元データは多分どこかに記録されてるだろうし、それを経由してやればコピーもできるだろ。


「──ということで、ここはスプーキー先生の出番ということで!」


 俺はそう言うと、猫をモチーフにした自動情報解析機を創造した。


「たららたったらーん!猫型自動情報解析機、どらちゃん!」


「……」


「……」


「……」


 あ、はい。

 このネタも没なのね?


「はぁ。せっかくロマンの塊たる遺跡にいるというのに、テンション下がるなぁ……」


 俺はため息をつくと、通称どらちゃんを床に置いた。


「それで、先輩。それはどういうひみつ道具なんですか?」


「……よく聞いてくれたよ。このまま誰も何も聞かずスルーするんじゃないかなって思うと泣きそうだったよ……」


 俺はそういうと、もう一匹どらちゃんを創って床に置いた。


「これは、尻尾で触れたもののアカシックレコードに干渉して、自動でその情報を解析する猫型ロボットだよ」


「……そのわりには、ちゃんと耳がついてるんですね」


「無いとキモいからね」


「……」


「……」

 次回、太古の記憶

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