表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
蒼い海蛇
38/82

蒼い蛇の昔話

 虫がいないのに、無視の音が聞こえるというのは、虫嫌いにとっては悪夢だろう。

 だが、これは風情としてのBGMなので、それを消せと言われても、下に売っている耳栓でもつけておけばと、その一言で終わる。


 ……まぁ、何が言いたいかというとだ。


 今現在、それで済むような事ではない事案が発生した、ということだった。


 夜中の二時当たりだろうか。

 その時、それは唐突に訪れた。


 ……いや、本当に。

 何でこんな唐突にって疑問に思うくらい突然だった。


 俺がそれを知覚したのは、フロートの下に取り付けられていた、カーボンナノチューブワイヤーによる索敵網に、何か巨大なものが触れたことを知らせるアラームを聞いたからだ。


 このアラームは非常事態に備えて設置された警報装置で、このフロートに大型の魔物、もしくはテロが発生した際に報知されるものだ。


 必然的に、フロートの全域に警報が鳴り響いた。


「なになになに!?どうしたの、これ!?」


「警報だ。フロートに何か敵性のものが近づいてるんだろう。ちょっと処理してくる」


 俺は、慌てて飛び起きたメープルに制止をかけると、眠い頭を振り払って、布団からのそのそと出ていった。


 と、その瞬間。

 巨大な揺れがフロートを襲った。


「うわぁ!何これ!?」


「波でちょっと揺れただけだよ。気にすんな」


 俺はまたはしゃぐ彼女を制して、欠伸をしながら換装魔法を発動した。

 以前までは難しかった魔法だが、今となっては楽勝で発動できる。


 俺は和装から動きやすい服装になると、面倒くさそうに部屋を出た。


 本当、寝てる間に事件発生とか止めてほしいから。


 そんな感じに伸びをしながらビーチエリアへ向かう。

 異常があったのはここだというのは、フロートの全域に飛ばしている監視用のナノマシン監視カメラが捉えている。


 俺は合成樹脂でできた砂浜の上空をふわりと浮遊しながら、どんな異常かを確認しようとした。


 しかし、そこには何もなかった。


「……おかしいな」


 確かに、ワイヤーに反応があったはずだ。

 だから警報も鳴ったし、誤作動とは考えにくい。


 いや、確かにまだ創造魔法が誤作動を起こすかの確認はしていなかったが……。


 俺はおそらく光波が歪んで見えないのだろうと推測を立てて、発動中の魔力反応を確認することにした。


 すると、数キロメートル遠方に、巨大な魔力反応が発見された。


 大きさは一キロメートル以上ある、その巨大な物体は、静かにこちらへと接近していた。


 速度は秒速十メートルほど。


 到達まで残り数分と少しといったところだろう。


 俺はそれが何かはわからなかったが、とりあえずマリーナタウンを囲むように、五重の結界を形成して、その物体へと飛来した。

























 それが動く度、大波が発生していた。

 俺はそれが何かはわからなかったが、対処は容易いと考えた。


 まず、対象を次元断絶の壁で覆い、捕獲。

 これで動けないだろう。


 そう高をくくっていたが、どうやらそれは甘かったようで、その何かは次元の断層をものともせずに、その結界を破って進行を再開していた。


 ……とすると、mapの部隊は何体いても意味がないな。

 次元断裂をものともしないということは、おそらく次元を修復していたのか、もしくはここに現れているのは本体の一部であり、本体はこの次元ではないどこかにあるとしか考えられないな。


 たとした場合、どういった対処が的確か。


 答えは明白。


 その物体を、転移で亜空間に移動させ、そこにすべてを引きずり込む。

 要は落とし穴だ。


 落とし穴というのはとても便利な罠だ。

 古典的ではあるが、使い方によっては高い戦力になる。


 例えば、だだっ広い合戦地に、巨大な落とし穴を作っておくとしよう。


 あとは、バカでもわかる。


 この世界には魔法なんて便利な道具があるんだ。

 これを利用しないわけにはいかない。


 俺は対象よりも二回りほど大きな魔法陣で対象を挟むと、俺が作り出した亜空間へと転送した。

 その余波は、同質量の水を創って埋めたので、問題はない。


 俺は次に、亜空間に設置しておいた自分の分身に意識を切り替えた。

 ここからが本番だ。


 俺は空間の領域を拡張しながら、そいつをその世界へと引きずり込んだ。


 その体長は数百キロメートルにも及んだ。


 いや、下手すれば千キロを越えるかもしれない。


 キロメートル級の敵とか、本当舐めてるとしか言いようがないだろう。

 これほどデカイと、俺でもさすがにこれが何かは理解できる。


 こいつの正体は、神代の生物兵器だ。


 俺が元いた世界では、レヴィアタン、もしくはリヴァイアサンと呼ばれる、とてつもなく巨大な海蛇、というよりドラゴンだ。


 それは、あらゆる武器を貫通させない強靭な鱗で覆われており、絶対に傷つけることができないという。


 クロノスが使ってたアダマスの鎌と勝負すれば、どちらが勝つか知りたいよね、本当。


 これが矛盾っていうやつだ。

 どんな武器でも通さない『と思えるほど』強靭な鱗。

 ここが抜けているから、矛盾が生まれるんだ。


 つまり、上位極大魔法数発分の高エネルギーでもぶつければ、傷をつけることはできそうかな、と考えるのだ。


「ほう、私にこんなことができたのは、お前が六人目だよ」


 あれから体感で数時間後くらいに、やっとその頭を引きずり出すことに成功した。


 すると、それはそんな風に口を開いて、俺に称賛の声を浴びせた。


「そりゃどうも」


「だが、お前はその六人の中で最も弱いと感じるぞ?」


「まだ十年しか生きてないからな」


 この体では。


 俺は、脳内の魔力を制御しつつ感情を抑えて、そう返答した。

 感情の制御ができなければ、今頃俺の精神は崩壊していたに違いない。


「はっ!それはそうか。失礼した。だが、十年でこれほどまでの力を手に入れるというのも相当なものだぞ、人形」


 人形にんぎょう……?


 リヴァイアサンは称賛すると、そうコメントした。


「そりゃどうも」


 返すと、それは気分良さそうに頷いた。

 するとリヴァイアサンは一瞬の内に姿を一人の少女の姿に変えた。


「あの姿では話辛かろう?気を楽にして、少し話そうじゃないか。長い間独りだったゆえ、話し相手に不足していたのでな」


「話?」


「うむ。昔話だ。お前も好きだろう?コーヒーもあるし、菓子もあるぞ?」


 言うと、彼女はにこやかに笑って、いつの間にか用意されていた椅子の上に腰かけた。


 机の上には、湯気をたてているコーヒーのカップや、様々なクッキーやケーキが置かれていた。


「わかった、聞くよ」


 どうせ退屈だったし、聞く分に関してはかまわないだろう。


 俺はそう返答すると、リヴァイアサンが用意した椅子に腰掛けて、彼女の話を聞くことにした。























 ──彼女が話してくれたのは、この星が、地球と呼ばれていた頃の話だった。


 白の兄や、全てのギフトの基盤となった、アドナイと呼ばれる異能の話。

 全ての始まりから、この世界の形成に至るまで、全部。


 昔、アカシックレコードを閲覧できた者がいた。

 彼は、その一部しか視ることはできなかったが、だがそのおかげで、彼はアドナイを手に入れることができた。

 その時は、それを知らすに死んでいったが、来世、彼はそれを理解した。

 彼は白の兄と呼ばれた。

 白の兄は世界の終焉に対する、抑止力だった。


 だった、と過去形なのには理由がある。

 何せ、最終的には彼自身が、この世界を滅ぼし、造り替えてしまったのだから。


 彼は、終焉そのものだった。


 彼は星の時間を巻き戻すと、パンゲア大陸の某所に、ギト・パンゲアを開国した。


 最初に僕たる最初の人形、古代の魔女を生み出すと、我城の召し使いを始め、さまざまな人形を作り出し、王国を作ったのだ。


 やがて、彼は死期を悟ると、古代の魔女に創造魔法を託し、他の能力を恩恵ギフトとして世界に撒いた。


 最後に彼は、自分の体をミイラとして保管するように彼女に頼むと、自分の魂を輪廻の輪に乗せて還っていった。


 彼は人形を創り出したとき、彼らを人間として創らなかった。


 人間としてもっとも大切な、個性ペルソナを与えなかった。


 そして、ある時自発的にそれを得た人形たちがいた。


 それが、人間。


「──お前を人形と呼んだのは、それが理由だ」


 彼女は話を続けた。


 古代の魔女は、やがて人間たちが人形を虐げるようになっていったことに気がついた。


 アルト・ヘクセは、覚醒した人間たちを危険だと判断し、彼女は人形たちに、彼らは私たちの敵であると教えた。


 これが、魔女の粛清と呼ばれる神話だ。


 彼女はその敵の姿を、醜い魔物の姿に見えるように、人形たちに呪いをかけた。


 逆に、人間たちには人形が魔物に見えるようにもした。

 その理由は今はわからず終いだが。


 そして、人間と人形は対立し、ギト・パンゲアは分裂していった。


「……ということは、貴女も人間、ということ?」


「それは違う。私は白の兄より古い時代から生きておるからの」


 彼女はそう言うと、湯気のたつカップに口をつけた。


 ……つまり、話を整理するとこういうことか。


・この世界は、俺がいた世界の未来の姿。

 つまり俺は、正確にはタイムスリップしてきたということだ。


・白の兄とかいう人が、今のこの世界を創った。


・この世界の住人として、個性なき人形を創った。←個性があるとまた世界が滅びると考えた?


・その最初の人形が、古代の魔女──アルト・ヘクセというわけだ。


・白の兄が死ぬ前に、彼がアルト・ヘクセに創造魔法を授与。

 同時に残りの能力をギフトとして、世界のあちこちにばらまいた。


・白の兄が死んでから、自発的にペルソナを獲得する個体(=人間)が出現した。


・人間が悪さをするので、怒った魔女が彼らを魔物にした。

 逆に、人間から人形が魔物に見えるように呪いをかけた。←理由はわからない。


・人間(魔物)と人形の争いが始まり、国が分裂。

 ギト・パンゲアの崩壊。

   ↓

・現在に至る。



 ……なるほど。


 つまりその白の兄は独占欲というか支配欲というかが強かったんだな?


 そんな風な見解を述べると、彼女はクッキーをコーヒーで流し込んで


「そうかもしれんな」


と答えた。


 ……いや、しかしそれにしても驚いた。


 まさか、魔物の正体が人間だったとはなぁ……。


 ん?

 待てよ?だとすると、ダンジョンは一体何なんだ?


「じゃ、じゃあ、ダンジョンっていうのは何なんだ?」


 アブルに習った記憶が確かなら、ダンジョンの正式名称は『建造物型魔獣』だったはずだ。

 ダンジョン、もしくは迷宮と呼ばれるそれは、分類上は魔物とされていた。


 魔物が人間ならば、ダンジョンはいったい……?


「あれは、白の兄の妹である、黒い妹ブラック・システィを祀る神殿だ」

 魔法紹介。


 次元断絶:高圧の魔力の波動により、一~三次元空間に裂傷を負わせる魔法。高等魔法に分類。


 亜空間転送:ストレージに利用される亜空間とは別の、一時的に創られた別世界へ、物体を転送する魔法。次元と空間の構造に対して、正しい知識がなければ発動できない。超高等魔法に分類。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ