マリーナタウン(2)
ホットドッグだけでは物足りなかった俺たちは、プールゾーンに出ている屋台を一巡して、水着のまま温泉ゾーンの宿場町エリアへやって来ていた。
宿場町エリアには、宿屋の他に、マリーナタウン以外では入手できないマスコット人形やカップなどが売られていたり、少し高額だが、宝石店などもオープンしている。
また、温泉ゾーンには、森林エリアを設け、その中に秘湯エリアが存在している。
この秘湯エリアは、俺がこっそり増築したもので、創造魔法の特性である、『よくわからない仕組みは、不思議な力でなんとかなる』というものを利用して創った。
この特性を俺は薄気味悪いからとって、スプーキー効果と呼んでいる。
俺がスプーキー効果を発見したのは、創造魔法の創造の範囲はどこまでなのかをこっそり検証したときだった。
それでわかったことを箇条書きすると、次の通りになる。
・構造を知っているもの→創れる
・構造を知らないもの→創れる(スプーキー効果)
・建造物(部屋割り指定あり)→階段を作り忘れると、次の階に上れなかった。
・建造物(階段あり)→部屋割りは外観にあわせてランダムで、かいだんはあり。
・建造物(内装は特に指定しない)→想像している外観にあわせて、ランダムで部屋を配置。階層指定無しだと、どれだけ高くても一階建てになった。
・物理法則と矛盾する設定のもの→創れた(スプーキー効果)
・矛盾する性能をもつ設定のもの→ランダムで片方の性能か、もしくは矛盾する性能が消滅する、又は、矛盾する性能が分離されて、二つ以上になる。
・地形→創れる。
・天候→創れる。
・新しい物質→創れる。
・特殊効果の付与→可能。
・生き物→創れる。
・魔力→創れる。
・龍→創れる。
・etc.
──とまぁ、ほぼ万能な能力を有していたのだ、この創造魔法とやらは。
これはもう、魔法というよりは恩恵に近い性能だった。
近い、というのも、発動にはそれ相応の魔力が必要となるわけだが──それは、必要な魔力を発生させて使用することができるマイクロチップ的なものを創造魔法で創り、体内にインプラントすることで、もうその必要がなくなっているといえる。
閑話休題。
とにもかくにも、俺たちは宿場町エリアを食べ歩きすることにした。
ここで売られている食べ物は、この世界の食べ物がメインではあるが、俺の前世の世界の食べ物もちょくちょく出されている。
相変わらず俺は料理が下手なので、創造魔法に任せて各種レシピを創って配布したのだ。
その中で最も人気を集めているのが、サンドウィッチ系である。
サンドウィッチというのは、確かサンドウィッチ伯爵が考案したから名前がサンドウィッチなのだと聞いたことがある。
この世界にはパンで何かを挟むという発想が無かったらしく、とても好評だった。
そこから派生したのか、型に入れて焼いた白米でハンバーガーっぽいものを作り出す料理人も現れた。
肉でパンを挟んでみたりという、逆の発想の食べ物もあったりして、俺の方も結構楽しかった。
勿論、楽しんでいたのは俺だけではなく、食事のことを殊更楽しんでいたのはメープルだった。
特に気に入っていたのは、カラスバーガーだった。
最初、俺はそれを見て一瞬硬直した。
確かに、この国では一部富裕層ではカラスの肉を食べる。
鶏のささみのような味がするのだが、俺は好んで食べる派ではなかったけど。
メープルはどうやら気に入ったようだった。
ミッドさんやジーナさんは、ジョンと何やら話し込んでいた。
何の話かは特に気にならなかったので、俺はメープルと次は何を食べに行くかの話をしていた。
外国の料理もあった。
最近属国になったレムール共和国の料理で、玉蜀黍を擂り潰したものに、小麦と少量の水を加えて焼いた、甘いパンのようなものと、中華料理のスーミータンに似たスープをセットで食べる。
「美味しい!」
「美味しいよね!これ、何て言うんだろ?」
興奮した面持ちで、そのナンのようなパンのような、その甘いそれを、スーミータンのようなスープに浸けて食べるメープル。
スープがスーミータンと少し違うのは、野菜が沢山入っているところだろうか。
とにかく甘かった。
「レムールの郷土料理だな。パンみたいなやつはコパン。スープの方はタペルと言うんだ」
「へぇ。物知りですね?」
ミッドさんの説明に、ジーナさんが感心した声を出した。
「半世紀くらい前、友達に仕事を頼まれてレムールまで行ったことがあるんだよ」
「ふ~ん」
そうなのか……。
そういえばレムールって、発音がLemurに似てるな。
たしか、Lemurの語源ってLemres(悪霊)だったっけ。
彼のレムリア大陸の語源もたしかLemresだったような。
「んく、んく、んく……っぷはぁ。お腹いっぱい……」
メープルはタペルを飲み干すと、背凭れに背中を預けた。
「メープル、口に玉子ついてる」
俺はそう言うと、隣で伸びていた彼女の口元をティッシュで拭った。
「ありがと、ロットちゃん!」
「どういたしまして」
……さて、これからどうするかな。
俺もお腹膨れてきたし、かといってプールに戻るのもちょっとなぁ。
そう思っていると、ジョンが口を開いた。
「さて、これからどうします?」
「エインズはどうするつもりなんだ?」
ミッドさんは少し考えると、そう聞き返した。
「俺はまだ少しそこらをぶらぶらしますけど」
「なら、付き合おう。話したいこともあるしな」
そう言って、手に持っていたピザ(パンの部分はコパンらしい)を平らげると、席をたった。
「でしたら、私はこの子達を見ておきますね」
そんな彼の様子を見て、微笑みながら答えるジーナさん。
「わかりました。何かあったら、連絡下さい」
「はい、了解です」
そして、短いやり取りが交わされた後に、俺たちは二人と別行動をすることになった。
次回、柩の守護者




