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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
蒼い海蛇
35/82

マリーナタウン(1)

 ──二週間後。


「ロットの姉御!最後の観覧車の運転試験、及び安全確認終了しやした!オールクリアっす!」


「ん、わかった。じゃあ、他のゾーンの手伝いよろしく」


「わかりやした!では、失礼しやす!」


 威勢よくそう報告をして、その場を去っていく元不良冒険者の背中を眺めて、ふぅと息をついた。


 この二週間で、遊園地とプールの設備は完成した。

 まだ残っているのは、プールと水族館だけだ。


 マリーナタウンは、全ゾーン水着で行き来できるように設計している。

 作った遊園地ゾーンにも、水を多用したアトラクションを多く設置している。

 今はまだ冬だから寒いが、夏になれば繁盛間違いなしだ。


 水族館に入れる魚や海獣の移送とかは、マーメイドらにお願いしている。


 そっちはあと数ヵ月は掛かりそうだが、問題は宿場町だ。


 ここで店を開いたりしたいのだが、なかなかこの企画を信じてもらえず、交渉が進まないのだ。


 ……どうしたものか。


 このままじゃ、オープンできないぞ……。


 と、いうことで親に頼った。

 すると、瞬く間に契約が通ってきた。


 母親のウェンディは、ちゃんと俺のしたいことを理解して、適当な値段で売ってくれる店を用意してくれた。


 そして、季節は巡り、春になった。


「皆、よくここまで働いてくれた!感謝する」


 その一言から始まり、少し長めの話をしたあと、皆にお礼として、年間パスをプレゼントした。


「開園は、今年の夏、七月の一日にしようと思う。皆、それまでに周囲の人たちに宣伝してくれると助かる。では、成功を祈って!」















 ──ということがあって、現在俺は、メープルとミッドさん、それからジーナさんにジョンの五人で、マリーナランドにやって来ていた。


「うわぁ、凄いよロットちゃん!これ、全部ロットちゃんが!?」


「俺は資材を創っただけだよ」


 そう言うと、ジョン以外の三人が驚いたような顔をした。


「資材を創ったって、とうとう創造魔法を習得したの!?」


「すごいな、ロット。やっぱりお前は異常だ」


「やっぱり、ロットちゃんはロットちゃんだね!」


 あの、メープルさん?

 ロットちゃんを形容詞みたいに使わないでくれますかね?ちょっと傷つく。

 あとミッドさん。なんかさらっと悪口言ってないですかそれ?

 ジーナさんも笑ってないで助けてくださいよ!?


 ……なんか、バカにされてないのに、バカにされた気分だ。

 ちらりと横を見ると、眉をハの字にしてこちらを見ているジョンが視界に映った。


「ジョンも見てないで何か言えよ?」


 少しイラついたので、肘で小突く。


「いっ!そこ鳩尾……そうですね……えーっと、ジーナさんが俺とキャラが被ってそうなのが、ちょっと」


「お前なんて、キャラがあって無いようなもんだろうが!」


「酷くないですか、それ!?」


 喚いて、その場に崩れ落ちるジョン。


 まぁ、こいつはそういう奴だし、別に気にしなくてもいいだろ。


 と、そんな時だった。


「あれ、姉御じゃないっすか~!お久しぶりっす!」


 遠くから、何か聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 ふと、そちらを見上げると、焼けた肌に金色の髪をした、いかにもチャラ男といった風情の男が立っていた。


 ……誰だっけ?


 声に聞き覚えはあるんだけど、名前が出てこない。


「ロット、知り合いか?」


 そう思っていると、ミッドさんが助け船を出してくれた。


「いや、覚えてないです」


「ひどいっすよ姉御~!オレっす!オレオレ!」


「わかった!詐欺だ!」


 オレオレと続いたなら、大抵オレオレ詐欺だと相場が決まっている。


 ということを言ってみると


「違いやすって!ほら、遊園地の建設に協力した!」


「すまん、いちいち覚えてないわ」


 あんなに大量にいた労働者の顔と名前を全部覚えろって方が無理だわ。

 俺、そこまで記憶力よくないし。


「そんなぁ!姉御ぉ……」


 言いながら、へたりと崩れ落ちるチャラ男。


「ロットちゃんって、人の心を蹴るの上手だよね!」


「いや、別にそのつもりはなかったんだけど」


 その時、その場にいる誰もが確信した。


((この娘、もしかして天然!?))

















 閑話休題。


「そういえばミッドさんは、どこで隊長とお知り合いに?」


 遠くでビーチボールで遊ぶロットたちを眺めながら、ふと隣で寝転ぶエルフビーストに話しかけた。


「スズリちゃんが連れてきたんだよ」


「……ちゃん?」


「俺の年齢から見れば、アイツはまだガキだよ。あと、俺のことはミッドでいい」


 そう言いながら、ごろりと寝返りを打つミッド。


「わかりました。じゃあ、俺のこともエインズと呼んでくれ。エインズワースだと長いだろ?」


「それもそうだな。お前は?エインズはあのガキとどこで?」


「軍でちょっと」


「ふーん」


「……」


「……」


「……暑いですね」


「お前が脆弱なだけだろ?」


「言いますね?これでも、ノスポールのテロ事件を、単独で制圧したんですよ?」


「それくらいなら、家の弟子でもできる。その程度で威張るな」


「……マジで?」


 エルフビーストって、どれだけ強いんだろう?

 エルフとワービーストの混合種って聞いてたけど、俺でも弱いっていうのか?


 だとしたら、あのジーナって人は、もしかして俺より強いのか?

 華奢で、すらりとして、背が高いけど、実はニュラさん並みに強いとかないよな?


 でも、ワービーストだろ?

 メープルって奴も、それならそれなりに強いって可能性も──


「マジだ。なんなら、メープルと組み手でもしてみるか?」


「……遠慮しておきます」


「脆弱だな」


「人の身には重すぎますよ」


「そんなものか?」


「そんなものですよ」


 そんな会話をしていると、ふと隣に腰かける人物がいた。


「暇か?」


「することも無いですしね。隊長はもう遊ばないんですか?」


 尋ねると、盛大なため息をついてその場に寝転んだ。


「飽きた」


 飽きたって何だよ。

 飽きるものなのか?てか、飽きるほど遊んでないだろ。

 入園してからまだ一、二時間くらいしか経ってないぞ?


 俺は苦笑いを浮かべると、こちらに歩いてくるジーナさんを見て肩を竦めた。


「貴女が企画したんでしょう?」


「俺向けの企画じゃない」


 我儘だなぁ。そんなだからこいつは友達が少ないんじゃないのか?

 企画した時は、娯楽施設が少ないからって言ってたけど、実は裏の理由があって、実際はそっちが……いや、考えすぎか。

 流石にこんな子供に限って、そんなことを考えたりはしないだろう。


「ねぇねぇミッド!さっきのビーチバレーっていうの?見てた!?」


「おう、見てた見てた。ロットが連敗して拗ねるところまでちゃんと見てたよ」


 あ、そういうことか。

 確かに、負け続けたら面白くないとか言いそうだな、この人。


 上体を起こしながら、欠伸を付け加えてコメントする彼の台詞に、肩をびくりと震わせるロット。


「ロットちゃんもまだまだだね!」


「うっさい。見てたなら言えよ」


「お前が気を抜いているからだ。魔力反射の法を受けてることにすら気づかないなら、お前は当分メープルに体術では勝てないな」


 ケケッ、と笑いながら言うミッド。


 ジーナさんはそんなやり取りをクスクスと笑いながら眺めていた。


「む……。そんなことより、腹へった!屋台で何か食おうよ」


「そうだね!私、ホットドッグっていうの?あれ食べたい!」


「じゃあ俺もそれで」


「でしたら、私もそれでお願いします」


「あ、だったら俺もホットドッグで。というわけだから、よろしくな、エインズ」


 ……アレ?

 もしかして、俺パシりにされたのか?

 次回、マリーナタウン(2)

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