遊園地を作ろう
立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。とはよく言うが、立てば般若座れば鬼神、歩く姿は大魔王。なんて言葉は聞かないだろう。
それはもう、百鬼夜行の長か何かに違いない。
もしかすると、地獄にいるという閻魔大王か。
この、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花というのは、元々は漢方薬の用い方を記した、神農本草経とかいう、人類最古の薬物書に記されたらしいが、今は関係ないだろう。
「す、すみませんでしたぁ!!」
俺は目の前に土下座する冒険者、その中でもやんちゃな部類の人たちを見下ろしながら、ため息をついた。
なぜ、こんなことになっているのかと言うと、時間は少し遡る。
俺はあの後、許可が降りたことをブエルの不動産に連絡した。
そしたら、その伝でとりあえず先にメンバーを紹介するので来てくださいと言われたので、彼が持つ竜車に同乗して、頼んでおいた業者や冒険者、アルバイト・パートが集まっているという彼の邸宅にお邪魔した。
そしたら、いきなり問題が発生した。
冒険者の一人が俺のところまでやって来て、
「おい、おっさんよぉ?こんなちびっこが今回の依頼主ってのか?」
──と挑発してきたのだ。
イラッとしたけど、まぁここは耐えた。
耐えられたんだが
「そうですが、何か問題が?」
と、不動産の人が言い返すと、彼は鼻で笑って、その場にいたメンバーに大声で何か喚き始めたんだ。
最初は聞き流していたんだけど、何か途中、変な方向に話が反れたのか、俺と一対一で喧嘩をすることになった。
不動産の彼は、家の中で暴れるなとか言ってたので、すると冒険者の彼がすぐ近くの広場で『調教』という名前の、一方的ななぶりをすることになった。
当然、なぶられたのは相手の方だったが。
その後、何か気に障ったのか、狂ったように不良冒険者が全員一斉に襲いかかってきたので、無詠唱で鎌鼬を発動させ、全員の頭に五百円玉サイズの水玉模様をつけてやった。
無論、ベースは肌色だけど。
立てば般若座れば鬼神、歩く姿は大魔王。
まさにぴったりだな。
というわけで、色々あったけど、それから俺たちは無事、計画を遂行することができたのだった。
まず、各地方に、海上に作る複合施設──名前をマリーナタウンと決定──への転送装置である量子転移港を設置。
これは、量子テレポーテーションを使って、瞬間的に目的地へと移動するための量子転移門が設置された港のこと。
空港とかそういう感じのアレの、転移門バージョンと思えばいい。
マリーナタウンの入場券はここで購入し、転移門の使用券は別途で購入してもらう。
転移門は全て一方通行で、行きと帰りで門を変える。
なので、マリーナタウンがあるフロートを経由して、他の町へ移動することもできるのだ。
量子転移港(長いからポータル)の設置を終えると、その日は終了。
まだポータルが何かは周りには明かしていない。
翌日、フロートを海上に造った。
陸地面積は六平方キロメートル。だいたいディズニーリゾートの三倍の広さだ。
フロートの基本構成材質は、金属部はヒヒイロカネとアダマンタイト。
地面や砂浜等は樹脂で構成されているが、さすがに街路樹の土は本物を使用した。
座標の固定は、海底に伸ばしたアダマンタイトを芯に、ヒヒイロカネで主柱を作り、カーボンナノチューブワイヤーにより、海流を自動制御してバランスをとる仕組みにした。
フロートの組み立ては、創造魔法で部品を作製し、ドワーフ族やマーメイド族といった他種族と協力して造ってもらった。
また、水中でも呼吸をすることができる支援魔法を連続発動するスーツも創り、業者に建築の手伝いや、ドワーフと協力して、構造の良し悪しなどを監督してもらった。
近くの海獣や大型の魔物は、防水処理を施したmapのパワースーツ部隊によって追い返した。
指揮には、兵部省所属の二等武官数名に手伝ってもらった。
そうして、まずは土台となるフロートを完成させたのだった。
3日で。
普通なら何年と掛かる作業だったのだが、やはりここはドワーフ。というか、さすがドワーフ。人類だけなら、フロートを組み立てるだけでも数年掛かるはずなのに、彼らからすれば、おもちゃを作るような気楽さだったようだ。
ドワーフ、恐るべし技術力。
それも、マーメイドの助けや、mapによる護衛がちゃんとできていたからこそ、なんだろうけど。
いや、それでも3日は早すぎだろう。
そう思っていたが、今ではもう、ドワーフなら楽勝だよね!という気軽さでいた。
フロートが完成すると、遊園地ゾーン、プールゾーン、水族館ゾーン、温泉ゾーンをそれぞれ分担して作業を始めた。
必要な資材は、各チームに一人ずつ派遣した俺の分身が、創造魔法にて作成。
高くて難しい所は、俺が立体起動モジュールを小型化し組み込んだフライングスーツを着用させて移動させた。
フライングスーツには、落下ダメージを×0にする支援魔法の発動器を付け加えておいた。
こうしてサクサクとマリーナタウンは完成へ向けて作られていくのだった。
その報告を聞いたジョンは、深いため息を吐いていた。
(アイツ、何してくれてんの?本当に)
いや、確かに許可はしたけどさ。
ドワーフとかマーメイドを建設に手伝わせるとか、アイツどうかしてるんじゃないのか?
もともと、ドワーフは鍛工が仕事の種族だ。
熱い鍛治仕事をして、カンカンと鉄を打っては熱し、打っては熱しを繰り返して、さまざまな武具や工芸品を造る。
その器用さは高く、現在の最新鋭の機械でも不可能な精密な作業を、手作業で楽々とこなす。
それがドワーフなのだ。
なのに、ロットといったら、ドワーフを建造物の造立に、しかも海中での作業に利用しやがった。
最初の三日でドワーフにマーメイドから泳ぎを教え、器用なあいつらのことだからすぐにものにして、泳げるようになった者から海中での建築作業に利用。
その3日が過ぎた頃にはすでにフロートは完成していた。
基本的に使われていた金属は、造るのが難しいヒヒイロカネやアダマンタイトときた。
確かに、ヒヒイロカネは決して錆びないし、軽いし硬いし、高い熱伝導性も持つ。おまけに磁気を受け付けないという特徴も持っている。
電気系統の高等魔法の攻撃すら、容易く受け流すだろう。
つまり、電気的に不可視な金属を利用することで、要塞としても充分機能させることができるということだ。
それにアダマンタイトには、攻撃性のある魔法の発動を妨害する働きがある。
これを利用することで、園内でのテロの行動を粗方狭めることに成功したと言っていいだろう。
(アイツ、何を目指してるんだ?)
口では娯楽施設と言いながらも、実は何か、もっと別な危険なものを作っているような気がしてならないジョンであった。
次回、マリーナタウン(1)
魔法紹介。
鎌鼬:風圧を高めて風の刃を作り出す魔法。初等魔法に分類。
創造魔法:頭の中に思い浮かべたイメージや、指定した情報を検索材料に、魔力を利用して物体を創り出す魔法。改編魔法の上位互換に位置する。超高等魔方に分類。




