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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
屍霊の襲来
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嵐のような人

 この一年で、調停国の傘下に入った国の数は、二十を越えた。

 まだ世界の一パーセントにも満たない数だが、いずれ全国はギトの傘下に入ることだろう。


 そうなるように、パイモンは運命線を辿らせていた。


 パイモン曰く、この世に偶然なんかない。

 太古の昔、世界の原始から今日に至るまで、それは全て決められた道を辿っているに過ぎないのだ。


 それは、まるでビリヤードの様だと、それは思った。


 この世に起こる全ての事象は、全て見えない何かの条件が複雑に絡み合って、結果的にそういう現象を起こしているにすぎない。


 そう。

 それはこの星が、地球と呼ばれていた頃から、それは既に始まっていた。


 今のこの世界が、あの男の手によって再構築されてからも、ずっと。


 少し、昔話をしよう。


 昔、日本と呼ばれた国に、一人の男がいた。

 彼は、特殊な力をもって産まれたが、ついぞその力に気づくことなく、その一生を終えた。

 つまらない人生だった。

 その力を覚る日も来ず、ただ無闇に普通の人生を送るだけの、下らない人生。


 だが、そんな人生だったが、彼はその中で一つの正解を見いだしていた。

 ……いや、正確には違うか。

 正確に言うならば、それはアカシックレコードの閲覧。


 彼はただ、それをチラリと覗いたに過ぎない。


 アカシックレコードとは、この世の始まり、大宇宙の始祖である神の生誕。その原始から、大宇宙の消失、神の死亡までの全ての事象、思念、記憶等の唯一神の記憶の全てが記録された、概念媒体。


 それは誰にも視ることはできず、触れることもできない。

 どこにもなく、むしろそれ自体がそれであるが故に、人はそれを認識できない。


 一説には、それは思考の中にあるとも言われている。


 アルカナ──大自然の超神秘の中に隠された真実──の集合体。


 元来、魔術師の最終的な目的はこれにあった。


 地球に伝来した(・・・・)魔術や錬金術は、元々アヌンナキと呼ばれる、地球外生命体の持っていた技術だった。


 いや、見方によれば、純血の地球人類が持っていたあの力は、見方によれば魔術──いや、区別するためにここでは呼び名を変えて魔法と呼ぼう──とも呼べたのかもしれないが。


 ──アヌンナキ。

 シュメールの神話に出てくる、天上の神々。

 その本当の姿は、異星ニビルの大気が宇宙へ拡散したことにより、金の粒子によりその拡散を防ごうと、金が豊富にある地球へとやって来た異星人。


 そして、彼らはであった。

 その星に、自分達と似た姿の生命体を。


 彼らは自分の遺伝子を彼らの遺伝子と組み合わせ、人類を造った。


 人類は彼らの労働力として、奴隷として使われた。


 これが、人間が隷属することに幸福を覚える所以である。


 彼らアヌンナキが伝えた魔術や錬金術により、世界には超文明が栄えた。

 数学も元は魔術に由来する。


 エジプトのピラミッドは、元は彼らが円周率を教えるために作らせたものだし、ナスカの地上絵も、人間がアヌンナキから教わった相似や合同を後生に伝えるために描いたものだ。


 いや、エジプトのものは、また違う理由かもしれない。


 実を言えば、あの形をした建造物は、エジプト以外にもある。

 そこにはルーン文字にて、こう書かれているだろう。


『私たちはゲートの向こうから来るものを拒まなければならない』


 これが、魔法使いたちの話だ。


 ……さて、最初に話した男だが、彼はアカシックレコードの一部を閲覧しただけで、この世を去った。


 その男がなぜ話に出てきたか。


 それは、彼が今のこの世界を創ったからだ。


 第五次世界対戦。

 魔術の復興した現世に、彼は再び生を受けた。


 前世と同じ力を得て。


 いや、彼の存在の本質は、その力の存在にあったのだから、それが本当に転生なのかは疑問が生じるが、細かいことはいいだろう。


 彼はその世界で争う人類を、その力を使って沈めた。


 その力の名前は『偉大なる御霊の主(アドナイ)』。


 彼はその力を用いて、世界を一から造り直した。

 その男は、世界から『白の兄』と呼ばれていた。


 『白の兄』は『偉大なる御霊の主(アドナイ)』を使い、世界を造り変えた。

 全ての陸地は一つへと纏まり、パンゲアを再誕させた。

 宇宙の年齢を巻き戻して世界を始めからやり直した。

 『白の兄』はアヌンナキを追い返すと、『偉大なる御霊の主(アドナイ)』で星を覆う可変領域を形成した。


 そして、元々生まれる予定だった地球人類は、可変領域内の精霊に対する耐性を得られず、疫病と称して死滅。


 『白の兄』は、そしてこの世界を統べる王となり、その補佐として最初の人形である『古代の魔女(アルト・ヘクセ)』を作ると、彼女にアドナイの一部である創造魔法を与えて、自分の帝国を作った。


 その帝国の名前は、『ギト・パンゲア』。


 ギト・パンゲアは文明を築くことなく、ただ『白の兄』の命令に動くだけの人形の街と化した。


 やがて、個性ペルソナを自力で獲得した人形が自然発生した。


 やがて『白の兄』は、全権を古代の魔女に託し、この世を去った。


 ──それを知っているのは、アドナイの破片である恩恵ギフトだけであった。


 百代目ギト王国国王であるヴァイツスネイクも、もしかすると気づいていたかもしれないが。




















「と、いうわけで、海上に水族館と遊園地の複合施設を増設したいんだけど、許可貰えるか、ジョン委員長殿?」


 執務室に入るなり、そう言って企画書を提出するロット。


「その『と、いうわけで』は、どこから続いてたんですか」


 俺は、さらっとその海上というフレーズをスルーして、呆れたように問いかけた。


「気にしな~い、気にしな~い♪」


「はぁ……」


 ま、いっか。

 先ずは話を聞こう。


「それで、その複合施設っていうのは?」


 すると彼女は、待ってましたと言わんばかりに、無い胸を反って、熱弁した。


「ふっふっふーん!よく聞いてくれたなジョン君!実はだな。かねてから思っていたけど、この国には娯楽施設が少なすぎるんだよ!?遊園地やテーマパークは大都市に一個あるかないかしか無いし、ゲームセンターも、ましてや携帯ゲームすらない。普通家にある娯楽と言えば、白黒のテレビか難しい書物か雑誌くらいだ。遊園地に行ったとしても、平民がいつでも行けるほど安い値段ではないし、地方の小規模な町や村じゃ、1種の都市伝説とも呼べるくらい縁がない。それくらいの規模の町や村にある外の娯楽施設は、せいぜいデカイ空き地に適当に作られたアスレチックのある公園か、小さな銭湯くらいなものだ。これだけじゃ、彼らの日々のストレスを解消しきるには足りないと思うのだ!先日、家に顔を出すついでに、暇潰しに作ったカードゲームを家のメイドらに見せたら大興奮だった。ついでに簡単なボードゲームも教えたらさらに興奮していたし、翌日ブエルの町を散歩していたら、そこら中でカードゲームの話で盛り上がっていた。ためしに雑貨屋にそのカードゲームのセットを百セットほど売ったら、あっという間にうりきれた。つまり、これが示すところは、娯楽の不足ということだ。そこで俺は考えた。もし、そういった地方に、一つでも平民が遊べるレベルの娯楽施設があったなら、どうなるのか。ジョン、お前ならわかるだろう?」


 ……。


 ……いや、言いたいことはわかったけどさ。


 確かに、そんな施設ができたのから、少ない金額でも多大な利益が舞い込むことになるだろう。

 それを期に観光客も増える。活気が出る。国民のストレスが減る。国も安定。


 悪いことがあるとすれば、これはカジノと同じだな。


 執心し過ぎるために、それによって身を滅ぼす。

 不良民が増える。


 ……いや、違うな。

 それはカジノだからだ。


 ただ普通に遊ぶくらいなら、そんなことはない……とは思いたい。


 でも、まあ彼女の言うことにも一理ある。


「わかりました、建設を認めます。ですが、今は復興行事中でしょう?そんな暇なんて無いはずですが」


「何、問題ない!建設に関しては、ブエルの不動産屋が建設業者を派遣してくれる手筈になってるし、土地も海上に人工浮島フロートを造る予定だ。資材は俺の創造魔法があるし、移動なら俺が量子転移港りょうしてんいこうを設置するから、船の用意はしないでいい。コスト的にも、通常の何倍も安くできるし、足りない人数分は、調停属諸国の土木系の冒険者やアルバイト・パートを雇うよ。ああそうだ。ついでに水泳施設と大浴場付きの宿場町も合わせて作るけど、別にいいよな?」


 ……。


 もう、何を言う気も失せたわ……。


「そこまで言うなら、好きにしてください。その代わり、きちんと最後までやり通してくださいよ?人件費だってただじゃないんですから」


「わかってるって!ありがとう、ジョン!やっぱりお前はいい奴だよ!」


 そう言うと、彼女は眩しいまでの笑顔を見せて、その場を後にした。


 ……嵐のような人とは、正にこの事だな。


 俺は頬を緩めると、少し伸びをして天井を仰いだ。


「そういえばさらっと何か凄いこと言ってたようなきがするけど、あれって何のことだったんだろ?」


 ま、いっか。


 俺は頭を切り替えると、その企画書に許可の判子を押した。


 しかしその数日後、誰もが頭が痛くなるような出来事が起こるとは、その時は誰も予想することができなかった。

 次回、遊園地を作ろう

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