終劇
「さっきから聞いてりゃゴリラゴリラうっせぇんだよ!?手前は小学生か!!」
涕涙しながら叫ぶロットを確認して、ジョンはふっと笑みを溢した。
「何が可笑しい!?」
「いや、正気に戻るの呆気ないなと思いまして」
「っせー!こっちだって意識持ってかれるの今でも耐えてんだ!さっさとしろ!」
赤面する彼女を見て、俺はその情報から、彼女が操られていた線を理解することを余儀なくされた。
てか、知ってたけど。
出てきた時点で知ってましたけど。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
俺は頷くと、アビス・メルクリウスをその場から下げた。
「アレイスターさん!お願いします!」
その言葉を聞くや否や、ケッと地面に唾を吐きかけて、魔法をキャンセルした。
「なんでテメェが知ってんだよ……」
そう言うと、彼はスズリを呼んだ。
「おいスズリ、やるぞ」
彼女はその呼び声にため息をつきながらも、仕方なくといった風にその側へとやって来た。
──穿て、穿て、霹靂
開け、開け、蒼窮
黄金の尾を牽き
迅雷の如く飛翔せよ
夜を切り裂き
一条の矛と成せよ
王牙の一対
はためく万象
十二対の翼を広げ
常夜の闇を統べる者なり
其は天窮の雷虎
爪は破砕
その体躯は世に災禍を招く
穿て、穿てよ虎よ
開け、開けよ厄神
虎の双牙は炎雷の徒
開く爪は王者の印
昆淆たる神魔の遊戯
黒白の灰燼に帰す王権の矢
穿て、穿て、霹靂
開け、開け、蒼窮
黄金の尾を牽き
迅雷の如く飛翔せよ
其は天窮の雷虚なり──
「「──爆ぜろ雷の黄金!!」」
結論から言おう。
その後、スズリがアレイスターの力を借りて発動させた中位の極大魔法は、ロットが何とか意思で抗っていた能力を総動員させて自滅行為を行わせたパワースーツ部隊(アゼリア外にも放出したmap含め、計約三十万機)を一撃で壊滅に追いやった。
そして、その余波は央都アゼリアにある各省館及び王城等主要部を残し、ギト王国の約三割を更地へ還した。
被害はそれだけに留まらず、被害を受けた三割の国土に面した地域には甚大な被害が発生した。
地形が変わるほどの衝撃を受けた地域は、着弾地点を含め、四割に達し、巨大なハリケーンによる被害に相当する地域は一割に達した。
辛うじて元ウルバーン領だった地域の五割は被害を免れたが、それでも辺境諸地域は、暴走した魔力嵐の影響で無傷とはいかず、それなりのダメージを受けた。
これを監視していたノスポール帝国は、これを期に周辺諸国と同盟を結びギト王国を攻めるが、ギト王国側はたった二パーセントほどの被害でこれを退けた。
火事場泥棒とばかりにノスポールと共謀を結んだ元ウルバーン帝国のテログループ、及びクーデターグループは、ギト王国国王直属の部隊によって粛清された。
周辺諸国の同盟軍との戦争は二ヶ月ほど続くが、ノスポールの彪の魔の手を解き払うことに成功したロット・マクトリカ率いる、パワースーツ部隊五百万の元に破れ、ギト王国と統合。
ギト王国は国々を纏め、各国の調停を行うギト国際調停国と名前を改めた。
統合された国家は、これまで通り国としての活動を許されるが、しかし全ての最終的な判断は、新たに治部省に設置された調停委員によって管理されることを余儀なくされた。
同時に、調停委員は各国の軍事テロの討伐に出動できるようにと、兵部省の管轄にも入ることになり、調停委員は治部、兵部の両属となった。
因みに、ロット・マクトリカはジョン・エインズワースと共に、調停委員へ異動になった。
しかしロットはまだ年齢的に未熟なため、書類上の所属として、未だ任務につくことができるのは、更に年を経てからになるだろう。
──そういえば、あの彪型の獣人だが、ノスポールを無力化した後、治部省の諜報部隊が行方を捜索しているが、未だに見つかっていない。
ノスポールの帝王はこちらが不利だと悟れば、国外逃亡を始めたらしいが、どうやら亡命国で待ち伏せていた、ヴァイツスネイクの息がかかった警察組織によって、逃亡から約半年後に捕まったそうだ。
そうだ、というのも、風の噂で聞いた話で、都市伝説的な部分では実は逮捕までいっておらず、捕まえたのは影武者の別人だった、なんて話まである。
俺は報告書を纏めると分身に手渡して現国王となったアグニ国王へ届けるように指示した。
「んーっ……」
伸びをすると、木製の椅子が少し軋んだ。
木製の開いたガラス窓の外に映る紅葉を眺めて、俺は何か満足げな顔をした。
今の俺の仕事は、調停委員として、国の復興を手伝うこと。
幸か不幸か、あの彪人間に操られていたお陰で、今の俺には創造魔法という最高位の魔法を会得していた。
お陰で、物資が不足することなく、また順調に復興は続いている。
今も各地域に放った数千人ほどの俺の分身達が、その魔法を使って復興の手助けをしていることだろう。
「……なんか、色々あったな」
思わず口に出して呟いた。
祖母の死に始まり、入軍試験があって、特位になり。
カギネさんにしごかれて、アグニさんの命令でウルバーン帝国軍を一人で圧倒。
スズリさんとステイシアさんとの喧嘩に巻き込まれたり、森でエルフビーストに出会って龍の使い方を教えてもらったり。
メンバーが俺を含め二人しかいない部隊で小隊長になって、かと思えば街がバイ〇ハザード状態だし、それを止めたかと思えばなんか浚われたし。
挙げ句の果てには操られて国を滅ぼそうとしたり、アレイスターさんとスズリさんの極大魔法で危うく死にかけたり。
あれは、本当に危なかった。
一瞬遅れれば、俺もあの更地の様に何もかもが消滅していただろう。
たとえ、魔力喰いを使っても、吸収しきれずに内から爆散もあり得たかもしれない。
……本当、結界が持ったものだよ。
そんなことを考えていると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「どうぞ」
入室を許可すると、待ってましたとばかりの勢いで扉が開いた。
「ロットちゃーん!遅くなってごめーんっ!」
入ってくるなり、そう叫びながら俺の懐へとダイブしてきたのは、一人のエルフビーストだった。
「うわっ!?」
俺は彼女を受け止めると、その見覚えのある顔を驚愕に染めた。
「メープル!?無事だったのか!」
「もう!無事なもんですかっての!森は荒れるし、看板は飛んでくるしで、危うく大ケガするところだったんだよ?」
頬を膨らませるその少女の頭を撫でながら、俺は微笑んだ。
「そっかそっか。無事ならよかった!」
「えへへ!」
統一歴一年十月十日。
こうして、彼女に日常が戻った。
次回、嵐のような人
魔法紹介。
雷の黄金:雷属性の中位極大魔法。通常のサイズの宝珠では、その圧力に耐えられないため、また必要とする魔力が、他の極大魔法より多いため、使用には新月を司る者等の魔力制限の解除を行う必要があり、また詠唱を必要とする。高等魔法に分類。
※因みに呪文は以下の通りとなっている。
──穿て、穿て、霹靂
開け、開け、蒼窮
黄金の尾を牽き
迅雷の如く飛翔せよ
夜を切り裂き
一条の矛と成せよ
王牙の一対
はためく万象
十二対の翼を広げ
常夜の闇を統べる者なり
其は天窮の雷虎
爪は破砕
その体躯は世に災禍を招く
穿て、穿てよ虎よ
開け、開けよ厄神
虎の双牙は炎雷の徒
開く爪は王者の印
昆淆たる神魔の遊戯
黒白の灰燼に帰す王権の矢
穿て、穿て、霹靂
開け、開け、蒼窮
黄金の尾を牽き
迅雷の如く飛翔せよ
其は天窮の雷虚なり──




