表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
屍霊の襲来
30/82

逆襲の戦火

 気がつくと、俺は真っ白な空間にいた。


「どこだ……ここ?」


 見渡す限りの白。

 真っ白な街並みの、狭い路地。光も影もない。完全な白。

 輪郭だけはぼんやりとだが理解できた。

 そんな街並みはなんだか閑散としていて、人気がなかった。


 真っ白な外壁に絡まる白い蔦。

 空を見上げても青い空は見えず、白く曇っている。

 ……影はないのに、なぜ曇っているとわかるのか。

 そんな不思議な感覚を覚えながら、俺はその路地を歩いた。


 沢山の格子窓。

 窓際に寄りかかっているのは、あれは人形か何かだろうか。


 酷く冷静で、落ち着いた心境。

 まるで、心までが真っ白になってしまったような──。


 いや、違う。


 真っ白になったんじゃない。

 元から何もなかったんだ。

 最初から何もなかった。


 ──ザーッ。


「……っ!?」


 突如、頭の中にノイズが走った。


 それはまるで、砂嵐になったテレビの画面のような。


 しかし、俺は何かに誘い出されるように、その路地を突き進んだ。

 何かに呼ばれているような、早くそちらに行かないといけないような気がして、知らない間に俺は駆け足になっていた。


 路地の突き当たり。

 大きなアーチを覆い尽くす、巨大な白い蔓草のカーテンを潜ると、そこには自分がいた。


 ……いや、正確には自分ではない。

 それは理解できるのだが、なぜかそれ()自分であるような気がしてならなかった。


 金色の髪。

 白い肌。

 幼い体格。

 ──そして、神々しいまでの魔力と、猛々しいまでの溢れる力。


 それはまるで、神源の様。


「ほしい……」


 気がつけば、そんな言葉が俺の口から迸っていた。


「力が……力が欲しい……!」


 それは、まるで血に飢えた獣の様で──。


「お前が欲しい……!俺のものになれっ!!」


 知らず知らずな間に伸ばしていた手の指先がそれに触れた瞬間、俺の中の何かが崩れ去っていった。















「上手くいったか」


 彪型の獣人は、ロット・マクトリカの肉体から完全にロンが消失し、隣の人形へと注ぎ込まれたことを確認すると、安堵の息をついた。


 この時を待っていた。


 ずっと、ずっと待っていたのだ。


 ……これで、後は必要個数の魂を獲得するだけで、古代の魔女は蘇る。


「フフ、フハハ、フハハハハハハハハハハハハ!!!」


 これで、これで悲願は達するぞ!


 真なる人類への覚醒は、もう目の前だ!


「……いかんいかん。つい油断してしまうところだった」


 ここでしくじっては、一ヶ月間のうつ御霊みたま法儀ほうぎが台無しになってしまう。


 彼は興奮にひきつった頬を撫でながら、荒い息を調えた。


「……さて、まずはこの国、ギト王国から滅ぼして見せようぞ!」


 そして古代の魔女を我が手中へ!さらには世界征服を切りだそうぞ!


 そんな興奮の最中、しかし彼の冷静な部分は、未だに消えぬ不安が一つだけ残っていた。


 そう。


 それは、我が国ノスポール帝国が対神類兵器として、古の書物を元に造り出した殺神兵器、フリューゲルについてだった。


 計算上、全てが迷宮の秘宝クラスの部品で造り上げられているため、天然のフリューゲルに匹敵する高火力を持つとされているのだ。


 現在作製されているのは全部で五百機前後。


 それを相手にするとなると、生半可な火力では相手にならないだろう。


 だがしかしだ!


 だがしかし、完全に力を取り戻した古代の魔女(アルト・ヘクセ)ならば、その現代兵器すら凌駕できるはず。


 ……そうだ、前向きになれ!


 これから世界を手に入れようとする男が、下向きになってどうするんだ!


 そうだ!

 アルト・ヘクセならば問題ない!


 全ては我が野望の為に!


















「……仮、釈放ですか?」


「……そう。……これは、王の命令」


 椅子にくくりつけられ、手枷に足枷をつけられた姿で、俺は上官──いや、元上官であるニュラ一等特級魔導武官を見上げた。


「理由をお聞きしても?」


「……勅命。……それしか、言えない」


 彼女はそれだけを伝えると、隣に立っているアレイスター・クロウリーにバトンタッチした。


「やーやー、キミ?今ってどんな気持ち?」


 炎髪のチャラ男が、俺の口を手袋をした手で押さえつけながら言った。


「……k」


「無視はいけないねぇ?ひょっとしてキミ、反逆罪に掛かってるの知らないの?」


 男は手を離すと、手首を振ってこちらを睥睨した。


「じゃあ、なぜなんです?」


「んなもん知るか。国王の崇高な判断が、我ら下民に理解できる分けねぇだろ。だから俺ァ怒こってんだよ」


 ……なぜ反逆罪かは理解できる。


 では、なぜ国王は俺を死刑にしなかったのか。

 ……まだ使える道があるからということしか頭にない。


 パイモンは果たしてどこまで知ってるんだ?


 と、その時だった。


 ──ズガァン!!


「な、何だ!?」


 巨大な爆発と共に、地面が盛大に揺れた。


 すると、ほぼ同時に向かいの扉をノックする音が聞こえ、兵士の一人が入室した。


「失礼します!只今、パワースーツ装備のmapによる空襲を受けました!」


「クーデターか!?」


「それは未だ判明していないのですが……少なくとも千を越えるパワースーツ装備のmapが、突如ギト王国空域にて観測され、以来現在交戦中であります!」


 アレイスター・クロウリーはその歯切れの悪い報告を聞いて暴言を吐いた。


「くそっ!なぜこんな時に……!」


 そんな中、俺は今までの会話を聞いて、それを操っているのがロットなのではないかということに思い至った。


 しかし、なぜ彼女がそんなことをしているのか。


 ……見当がつかない。


「俺が行く!」


「はっ!」


 そう言うと、彼は兵を引き連れてその部屋を後にした。

 次回、目覚め


 魔法紹介。


 移し御霊の法儀:儀式魔法の一つ。魂と、それに付随するロンを別の器へと移し替える儀式魔法。高等魔法に分類。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ