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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
屍霊の襲来
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漁師の町(2)

「全く。酷いですよ、隊長」


 あの後、俺は迫り来る千体のパワースーツを装備したmapの性能試験に付き合わされることになった。


 結果として、パワースーツとmapの双方に装着していたGuardianの強度は、身体能力強化Ⅱの連続攻撃に耐えうる性能を示し、また機動力に於いても、map単体の場合とほぼ同じ性能を見せた。

 パワースーツがここまでの機動力を得たのは、一重に人為飛行・改の魔法をプログラムとして組み込んだことが正解だっただろう。


「mapやパワースーツの性能が合格点だったことがわかったんだ。それくらい許せ」


 そう言いながら、パワースーツとmapを回収していくロット。


 その顔はやけに楽しそうであった。


 それもそうだろう。

 技術開発部が造ったとはいえ、アイデアを考えたのはロットと俺なのだ。

 それが実用に足る出来映えとわかったなら、それは我が子が天荒をスルーしたに等しいのだから。


 パワースーツに搭載された、立体起動モジュール。

 これには、ロットが使う人為飛行を機械の計算によって自動的に行うプログラムが組み込まれている。


 人為飛行は通常、魔力操作による念力法により、自分を空へ飛ばすのだが、今回開発したこの立体起動モジュールには、座標を逐次記録し、一瞬だけ空中で停滞する魔法を連続で行うことにより、飛行を可能にしている。


 これの利用に慣れるには、それなりの訓練が必要だが、使えるようになれば、兵たちの生存率も上がることだろう。


 普及はまだ先になるらしいけど。


「そういえばジョン。お前に渡していたGuardianだけど、この際だし、こっちの新型と交換したらどうだ?」


 彼女はそう俺に問いかける。


「そうですね。省館に戻ったらお願いします」


 そう答えて、片付けを再開した。
















 三時間ほどのテストが終わった頃には、日は傾いて西の空を赤く染めていた。


 俺たちはその後、海水浴をすることもなく──ロットは俺がmapの相手をしている間、塩原の近くで遊んでいたが──そそくさと宿ホテルの最上階へと移動した。


 それから特に何かしなければならないということも無かったので、とりあえず着替えをもって温泉に向かうことになった。


「あー、効くねぇ、ここ」


 俺は、向かいで極楽極楽とか呟いている銀髪三白眼の男を睨んだ。


「何でお前がいるんだよ?」


「む、ここまでの旅費は、誰が出したと思ってるんだい?当然の権利だろう」


「……どうせなら美女と入りたかったです」


「無茶を言うねぇ君。隣では俺の部下の女子たちがキャーキャー騒いでいるというのに」


 言いながら、横目にちらりと仕切りを見るアブル。


「……ちっ」


「上官に舌打ちとは、度胸あるんだねぇ?」


「部署が違うでしょう?」


「でも、同じく兵部の人間だ。上下関係というものは、集団行動の上で重要な役割を担っている。違うかい、エインズワース?」


「……すみませんでした」


「わかればよろしい」






 ……いや、誰得だよこのシーン!
















 そこには、熱いお湯の中で何やら考え事をしている金髪の幼女の姿があった。


 可憐な出で立ちに、優雅な佇まいは、正にどこかのお嬢様のような雰囲気まで感じ取れる。


 端的に言って、超絶かわいい。


 こんなにかわいい生き物が、果たして他に存在するのだろうか。


 私はそう思いながら、彼女のその美貌を眺め続けた。


「……見られていると落ち着かないんだが」


「「す、すみません!」」


 不意に開いた桜色の唇が、鈴のような甘い声音で、しかしどこか力の抜けない男勝りな口調が、その場にいた誰もの身動きを操っていた。


 近寄りがたい。

 けど、近寄りたい。

 そんな願望を押さえきれなかったのか、仲間の一人が彼女──ロット・マクトリカ──に声をかけた。


「何を考えていらしたんですか?」


 問うと、彼女は欠伸を一つして、何もと応えた。


「だって、風呂は静かに入るものだろう?」


「……」






 ……何これ。


















「「はぁ……」」


 宛てがわれた部屋に着くなり、二人はため息をついてその場に倒れ込んだ。


「どうしました隊長?」


「そっちこそどうしたんだジョン?」


 互いに俯せになりながら、顔を見合わせる。


 その顔にはどちらにも、先ほど風呂に入って気を安らげた筈なのに、どこか気だるそうな影が差していた。


 というのも、ロットは周囲の女性の視線に耐え抜く為に精神力を強いられ、またジョンの場合は誰得な変な空間に放り込まれたことに対して疲れを覚えていた、なんて互いに知る由もないのである。


((流石に、今日は疲れた……))


 二人してそんなことを思いながら、気づかぬ間に眠りへと就くのであった。

 次回、失策


 魔法紹介。


 人為飛行・改:念力による人為飛行を改善し、機械的な処理によって、魔法による飛行を可能とする魔法。技術的には人為飛行よりも容易になるため、中等魔法に分類される。

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