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大魔術師ロットの魔法  作者: 記角麒麟
屍霊の襲来
27/82

漁師の町(1)

「やっぱり暑い!だから海行こう、海!」


 それは、扇風機を作ってから数分後の事だった。

 彼女は唐突にそう叫びだしたのだ。


「え、でも大丈夫なんですか?」


「何がだ?」


「空襲とか来たら、出動しないといけないじゃないですか」


「それは問題ない。見回りと称して、ちょっと沿岸地域まで出掛けるだけだし」


 ……ということで、現在俺たちは、ギト王国の沿岸にあるマリンポートと呼ばれる港町にやって来ていた。


「……で、どうしてアブルがいるんだよ?」


 不機嫌そうに、隣に立つ銀髪金色三白眼の男を見上げるロット。


「ちょっと通報があってね。先日のゾンビ騒動を起こしたテロ犯がいるって聞いたからついでにだよ」


 そう言いながら、俺に目配せをするアブル。

 おそらく、テロのことは任せて俺はロットの警護に専念しろとか、そういう意味なんだろうな。


 俺はため息をつくと、頭を振った。


 俺だってあんな奴に会うのは御免だ。

 あんな恐怖を具現化したみたいな存在。考えるだけでも吐き気がする。


 しかし、そうとは知らないロットは、彼の意味深な視線に疑問符を浮かべ、やがて的はずれな結果を想像するのだった。


(まさかあいつに、そっちの気があったとは……)


 そんなことを思いながら、彼女はため息をつくのだった。















 ギト王国沿岸の港町、マリンポート。

 そこは、別名漁師の町とも呼ばれ、多くの海外輸入品が取り扱われていた。

 そして、その中に多くの密輸品や密入国者が紛れていたりもするのは、どこの世も同じなのだろう。


 そのため、港付近には、央都アゼリアから派遣されてきた十等から九等兵に加え、民間警備会社のもろもろが、そういったものの取り締まりを行っている。


 そんな中ロットは、木張りの床を歩きながら珍しい物を眺めていた。


 特に多かったのは貝殻細工だ。


 ネックレスにインク壺、ペンに指環にさまざまな加工品が売られている。


 楽しそうにウィンドウショッピングを楽しむその姿は、いつも気を張っていたのか男調子な雰囲気が抜けて、可愛いげのあるものになっていた。


「おい、今失礼なこと思わなかったか?」


「……いいえ、そんなことは思ってませんよ隊長」


 こいつ、鋭いな……。


 危うく女の子みたいとか口走りそうだった。

 いや、女の子なんだけどな。


「……本当か?」


「本当です。さ、そろそろ宿を取りましょう。日が暮れてからだと混むかもしれません」


 そう言って、俺は話題を反らした。

 たぶん、このままだと余計なことまで口走りそうだし。


 話は変わるが、ロットの服装は軍服ではない。

 勿論、表向きは軍部の出張で、見回りを兼ねた兵器の性能試験なのだが、アブル武官育成委員が──


「近くにもし犯罪組織がいれば、取り逃がしてしまうかもしれないからね」


 ──と言うので、現在は私服姿である。


「それもそうだな。混むと探すのが手間だし」


 そう結論をつけると、彼女はロングスカートを翻してそそくさと宿場エリアへと足を向けた。


「薄手のシャツにロングスカートというラフな姿ではあるのに、その姿は可憐な華の様。そうは思わないかい?」


「アブルさん!?いつの間に……」


 話しかけられるまで全然気がつかなかった。


 彼は俺に人差し指を立てると、静かに告げた。


「今夜、話がある。ロット・マクトリカはうちの部下が警護するから、夜中の二時に白の畔で落ち合おう。では」


 すると、彼は何事もなかったかのようにその場を離れた。
























 水飛沫舞う海岸。


 そこには、波の打ち寄せる音だけが響いていた。


「……人、いませんね?」


「そりゃあな。貸しきりにしたし」


 さらっと何か凄いことを述べる彼女。


 ──マクトリカ家は国王のお気に入りである。ということは、彼女の警護という勅命が発令されていることからも理解できるだろう。


 パイモンには全ての隠し事を見破る力が備わっている。

 マクトリカ家の将来の重要性等を知っているならば、それは当然ということだろう。


 金はいくらでもあるし、さっきみたいに、さらっと高級ホテルを丸々一階を貸しきりにするなど造作もないのだ。


 え、支払い?


 何の事かさっぱりだよ。

 そこまで考えたくはない。

 たぶん、俺の既知の外の出来事なのだから。


 俺はため息をつくと、目の前の彼女を見て、またため息をついた。


「なんだ?ため息なんかついて」


「誰のせいだと思ってるんですか!?」


「逆ギレするなよ!?」


「逆ギレしたくもなりますよ!?どうして貴女はそう平然と極大魔法レベルで環境破壊みたいな魔法使えるんですか!」


 そう叫んで、目の前に広がる広大な白い砂漠を指差した。


「仕方ねぇだろ、楽なんだから!」


「楽だからで海を塩の砂漠に変えられてたまるもんですか!」


 そう。


 今目の前に広がる、白い砂漠、もとい塩原は、先ほど彼女が海から姿を変えたものだった。


「ごちゃごちゃうるさい!わかったら足場の確認!」


 そう言いながら、俺の尻を蹴りあげて、その塩原へと放り込んだ。


「ぐえ、しょっぱい……」


 魔法とは、その効果や威力、範囲によって名称別けされる。

 例えば、攻撃効果を持つものなら攻撃魔法。防御系なら防御魔法。空間効果系なら結界魔法。

 そして、範囲の場合は単体、複数、無差別、広域、極大に分類される。


 今回ロットが使った魔法『蒸発』は、本来は威力レベルは高くなく、お湯をちょっと沸騰させたりするときに使うのだが、現在のそれは、威力レベルとしては戦術級。範囲は極大魔法にあたる。


 ……これはもう、他の魔法と言っても過言ではないよな?


 切にそう思うジョンであった。


 閑話休題。


 さて、そんなことはどうでもいいとばかりに、ロットは事前に記録しておいた情報から、先日考案して完成した魔導歩兵を作成する。


 ジョンの目にはストレージから取り出したように見えるだろうが、そんな細かいことはどうでもいいのだ。

 なぜなら、技術開発部はすでにこの事は周知の事実だからだ。


 その結果、ロットは兵器の量産の為にも兵部省に重宝される事になっていたのは、言うまでもないだろう。


 塩原に作成された魔導歩兵マジックポーン(通称map)は、全部で千体。


 それら全てにパワースーツを着用させ、地上戦闘のデータをとる。


 ……え?俺はどうしたって?


 足場を確認したらすぐに戻ったよ。


 ロット隊長はパワースーツを装備したmapたちを優雅に上空から睥睨してるけどな!


 ……あ、この位置だと上向いたらパンツ見えそう。


「ジョン、上向いたら後で覚えとけよ!」


 お前はサトリか何かか!


「見ませんよ、そんなもの!」


 上から降ってくる勧告に、そう叫び返した。


 ──ヒュッ、トン。


 すると、次の瞬間。

 何かが俺の真横に落下してきた。


「……」


 上を向くと、ニヤリと悪い笑みを浮かべている金髪幼女の顔が映った。


 そして。


「全機、傾注!対象をジョン・エインズワースに変更。協力し、これを無力化せよ!」


「……へ?」


 直後、ガチャリと音を揃えてこちらへと向き直るmap。


「どうやら、そういった動きもできるらしいな?ジョン」


 その言葉が、悪魔の呟きに聞こえた。

 次回、漁師の町(2)


 魔法紹介。


 蒸発:液体の温度を上げて気化させる魔法。初等魔法に分類。


 塩の平原:海水を蒸発させ、塩原を展開する魔法。蒸発の魔法の上位進化版に当たる。高等魔法に分類。

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