さあ、炙り出しの時間だ!
さっき確認したら、なんとブックマークが20件に到達してました!
これは、私を応援してくださっている読者様がいるお陰でしょうか?
本当にありがとうございます!
これからも頑張っていく所存ですので、どうぞよろしくお願いします!
──バダン!
「お前たちは包囲されている!……って、そりゃ玄関に居るわけないよな……」
床に倒れている樫の木製の扉を踏みながら、俺は教会の中を見渡した。
中は広い聖堂になっていて、正面にあるカラーガラスの嵌め殺しの窓からは、大分と傾いてきた陽光の日差しが入りんできている。
下手すれば、テロリストを拘束するのは夜明けになるかもしれないな。
そんなことを考えながら、俺は近くのベンチに腰掛けた。
隣に、何の躊躇いもなくニュラが腰を下ろす。
「……どうするつもり?」
「とりあえず、魔力反射の法で教会の中を詮索してみる。怪しいのがいたら分身に向かわせる。対処できないなら、こちらが向かう。途中で邪魔が入れば、無力化して……。今思ったけど、分身と魔力喰いのコンボって敵無しじゃね?」
「……私には、無意味」
「知ってますよ」
ニュラを含む一等特級魔導武官というのは、まさに化け物である。
魔導武官というのは、魔導官であり、尚且つ武官でもあるということ。
魔導官は魔法戦闘に特化しており、おばあちゃん──フローレス・マクトリカ──が宝珠を発明するまでは、後方支援部隊として活躍していた。
しかし現在では、宝珠のお陰で、前衛としての任務も果たすことができるようになったのだ。
言ってみれば、戦闘力的には足軽と戦車を一緒にしたようなもので、実力のあるものは、爆撃機一機に等しい戦闘力となる。
それに会わせて、普通、魔力が無くなれば無能同然となる魔導官が、白兵戦から騎馬戦まで、戦闘の主役となるアタッカーが入ることで、魔導官はさらにその上の戦闘能力を有する。
武官だけでも一等クラスにもなれば、たとえ劣級であろうと、その白兵戦力は一人で一個中隊並となるだろう。
まして、ここにいるのはその双方で一等特級クラス。
一人で軍団クラスの戦闘力といっても過言ではない。
ま、俺は分身があるから、何人でも作って、一人で国家を丸々ひとつ落とすことだってできる……が、ニュラクラスが五人もいるこの国は落とせそうもない。
分身は、念じればそれと本体が入れ替わることもできる。どこかに分身を一体か隠しておけば、ほぼ不死身になれるだろうなぁ。
……やつぱり、分身ってどう考えてもチートだわ。
魔力喰いだけでも、魔力量の制限がほぼなくなるに等しいチートだっていうのに。
話が逸れたな。
閑話休題。
俺は斯くして、結界内に魔力反射の法を用いて、テロリストと思われる人影を探す作業に入るのだった。
魔力反射の法とは、魔力を放射状に放ち、その帰ってくるまでの時間から、周囲の情報を得る透視魔法である。
イルカやコウモリが、音の反射で世界を認識している(エコーロケーションという)のと同じ原理だ。
これは、視覚で間違い探しをするのと同様、そこに意識を向けなければ、よく視ることはできない。
つまり、歩き回って探すより断然効率はいいものの、それなりの時間はかかるってことだ。
ニュラにはその間の俺の敬語を頼んでいる。
何?防御魔法で護ればいいじゃんって?
バカいうなよ。
お前は『ウォー〇ーを探せ』をしながら、難しい高等物理の授業なんかできるのか?
『モン〇ン』を片手操作でリオレ〇スの亜種を討伐しながら、高等化学の教授なんてできるか?
無理だろ。
つまりそういうこと。
俺も、ある程度簡単なものなら同時操作できなくもないが、今回に関しては無理。
にしたって、範囲が広すぎる。
前世に大阪城まで行ったことがあったが、大阪城前公園のあれより一回りか二回りくらい広い。
さらに地下も探さないといけないから(こっちは推理で地上には居ないだろうと思っている)、時間がさらにかかる。
思考速度上げたらって?
無意味さ。
あれは思考速度が早くなるだけで、細かいところまで見れやしない。
俺は一旦休憩するために、魔法をキャンセルして伸びをすることにした。
「疲れる……」
「……バカなの?」
「うぐっ……」
心に深く突き刺さる、その言葉。
「それにしても、見つからないなぁ……」
俺は愚痴を吐くと、こてんとニュラの太股に頭をのせた。
(おぉ、柔らかくて気持ちいい……!これぞ、幼女の特権なり!)
「……逃げられたんじゃないの?」
「あー、そうっぽいかな……」
儀式魔法なら、術者が居なくても発動し続けられる訳だし。
真っ先に調べた、儀式魔術の展開された場所は、蛻けの殻で生体反応は無かった。
もうとっくに逃げられた後、か。
「それじゃあ、ここは分身に任せて、俺たちはゾンビ退治に……ん?」
その時だった。
急に、がらりと聖堂の雰囲気が変わったのだ。
「生体反応はない……。何かの勘違い?」
「……いる」
ニュラはそんな俺の回答を否定して、ベンチから腰をあげた。
そう言って、彼女が指差した方向を見ると、そこには何か、異形なものがいた。
「でかいトカゲ?」
そう。
例えるなら、デカイトカゲ。
恐竜みたいな感じじゃなくて、リオ〇ウスみたいな外見に、紫色の結晶化した刺があちこちから生えている。
そんな感じのトカゲだ。
……いや、認めよう。
こいつはドラゴンだ。
ロンを感じとることができないことから察するに、種類はニーズヘッグ種と呼ばれる、ドラゴンの中でも最凶の一角を占めるドラゴンだ。
つまり、HPがマイナスの魔物、というわけだ。
それなら、一瞬で倒せるな。
そう踏んだ俺は、ニュラにこう言った。
「あのニーズヘッグの相手は任せてください。すぐ終わらせますんで」
そう、豪語して、俺は奴に向き直った。
──グルルルル。
唸り声をあげるニーズヘッグ。
しかし、それがそのドラゴンの最後の台詞となる。
「!」
奴を俺が認識して約十秒の事だった。
ニーズヘッグは俺の分身たちに包囲され、一瞬の内に、それを形成する魔力を吸い付くされて消滅した。
「……秒殺。……ロット、無慈悲ね」
「そうですか?」
ニーズヘッグから搾り取った魔力は、分身体に分配されていく。
元々の魔力と絡み合い、循環を経て、その分身体は魔力を中和させて俺の体内へと送信した。
やがて、役目を終えた分身は、お役御免と塵になる。
「……でも、これで確信した。……君は、魔法戦闘に於いて、誰よりも強者だ」
「お誉めに預かり光栄です」
適当に返答して、俺は一個中隊分の分身を作り出した。
俺とほぼ同等の戦力が、約40人。
驚異でしかないな、本当に。
でもまぁ、その事を自覚しながらも平然とやってのける俺も俺だが。
「班毎に散らばって、城内を調べろ。気になるものがあれば映像なりなんなり、情報を俺に送信すること。一斉送信されると、俺のキャパが持たないから、通信連絡係を各班二名ずつつくり、定期的に連絡を入れるように。以上」
俺はそう命令すると、分身たちは了解の意図をもって頷いた。
「くそっ!」
俺は二、三離れた町のマンホールの蓋を押し開けながら悪態をついた。
なんだ、あれは!
急に増えた大質量と大魔力に危機を覚えた俺は、地下通路を駆け抜けて急いであの場所を離れた。
正解だった。
これほどまでに危険を感じたことは、ここ半世紀くらい無かった出来事だ。
あの予備動作。
間違いなく極大魔法の準備だ。しかもおまけに、逃げられないようにと結界を幾重にも張られてしまうところだった。
もし何秒か遅ければ、俺はあの極大魔法の連射に巻き込まれて命を落とすところだった。
俺は、マンホールからその巨体を引きずり出すと、蓋を閉じて周囲を確認した。
星一つ無い夜空。
冷たい冬の風が、俺の息を白く染める。
……だが、まぁいい。
まだ必要な魂が揃っていないが、祭壇に刻まれた魔法式は既に記録を取ってある。
(次は安全な場所でするべきだな)
そう心に決めて、俺はその場を後にした。
彼の頭の中にあったのは、あの魔王みたいな魔力量の持ち主──おそらく、古代の魔女に匹敵するだろう──と最終的には争うことになるだろうということに対する憂鬱だった。
次回、ある日の日常




