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弾幕勝負 vs 覚妖怪



もう逃げ出したいです。

いえ、逃げれるなら逃げてますよ。どうゆう状況かというと俺が逃走を図ろうとした結果。扉や窓を塞ぐように大量の武器を古明地さんが召喚し、退路を全て塞いでしまったわけでして...俺は逃げるという選択肢を強制的に消されてしまったわけです。

あれですね。某RPGでいうボス戦ですね。お疲れ!


「って! そんなこと考えてる場合じゃねぇ!!」

「何を一人でブツブツ言ってるんだよ。ほら来るぞ」


余裕そうに腕組みをしているアルマさんが目の前を指差すと古明地さんが何かを撃とうと構えていた。


「ちょ! どうにかしてくださいよ!!」

「あん? 甘えるな。それにあの人の相手めんどくさい」

「私情がバッサリ入ってる!?」


そんな風に喚いていると無情にも古明地さんの手から青色のレーザーが撃たれた。その攻撃はどこかで見たことがあった。いや...あの攻撃はどう見ても...


「想起 《アストロ☆バスター》」

「俺の技じゃん!!」

「ああ、言い忘れてたがさとり様は相手の技をノーリスクで使えるから気をつけろよ」

「忠告が遅い!? だぁもぉ!! 機銃《アストロ☆バスター》!!」


半ば自棄になりながらアストロ☆バスターを放ち、古明地さんの攻撃を相殺した。同じ技なだけあって一瞬拮抗したが結局は相殺。

しかし、こうなるとやばいな。同じ技を使われる内なら泥試合程度で済むがアルマさんのような強者の技をノーリスクで使われたら勝ち目はゼロ。うん。詰んでるよ!?


「そんなものですか人間」

「ま、まだまだぁぁ!」


体内のエネルギーを両手に充填。巨大なエネルギー弾が完成する。だが、今回は一発で終わらない。マシンガンのように何発も充填しておく。

それを機関銃と同等以上の速さで撃ち放つ!


「機関銃《アストロ☆マシンガン》!!」


一発一発が常人ならぶっ飛ぶ威力のエネルギー弾を何十発も撃ったんだ。流石の古明地さんと言えどもこれだけの攻撃は防ぎようがない! そう俺は過信していた。

アルマさんの忠告を忘れていた俺は完全に勝利を確信してしまった。


「想起 《パープル・アイド・モンスター》」


古明地さんの右手に小さな紫色の球体が浮いていた。

それを彼女はポイッと捨てると紫色の球体はピキッという音と共に俺が放ったエネルギー弾を吸い込み始めた。

掃除機さながらの吸引音を立てエネルギー弾を全て飲み込んでしまった。それと比例するように紫色の球体も大きく肥大化した。


「さぁ...チェックメイトです」


パチン! と指を鳴らすと紫色の球体が音を立てヒビが入っていく。

それを見たアルマさんが小さく呟いた。


「あ、やべ」


限界までヒビが入った球体は凄まじい光を放つと想像を絶する爆発を起こした。俺はゆっくりと迫る爆炎を見ながら死を覚悟した。

走馬灯のようなモノが流れると何故か最後に河城のことが思い浮かんだ。

ああ、死ぬ時って素直な感情が生まれるんだな...人間ってのは不思議な生き物だ。

どこか悟ったようなことを思っているといつの間にか迫る爆炎から俺を庇うかのようにアルマさんが立っていた。

思考がまともに追いつかない現状では彼が何をしたいかは想像はつかない。だが、次の瞬間、起こる出来事に俺は目を疑った。


「暴食《紫色の目をした食欲の怪物》」


アルマさんの周りに紫色の霧が発生するとバクン! という音が聞こえた。そして、音が聞こえた後には爆炎は消え去っていた。


「あ、あれ...? 爆炎が消えた...」

「主! 褒めて! 褒めて!」

「はいはい。頑張った頑張った」


爆炎を消し去ったであろうアルマさんはいつの間にかそこに立っていた紫色のロングヘアの白いワンピースを着た紫眼の少女の頭を撫でていた。

なんとなく雰囲気がアルマさんに似ている気がした。


「ア、アルマさん...その子は...」

「ん? こいつは俺の暴食だ。とりあえず暴食。お前は戻れ」

「は〜い」


元気に返事をする暴食と呼ばれた少女は紫色の霧となって霧散した。い、いったいなんなんだ? アルマさんって召喚士的な人なの? ファイナルな冒険に出てくるような召喚士なの?

そんなくだらない事を考えていると古明地さんが不機嫌そうにアルマさんを睨んでいた。


「アルマ。なんのつもりですか?」

「理由は一つ。俺を巻き込まないでください。めんどくさいから」

「アレぐらいの爆発。あなたなら痛くも痒くもないでしょう?」

「痛いものは痛いんですが...それに下らない理由で怒らないでください」


ただ冷静に古明地さんを宥めるアルマさん。しかし、彼女の怒りは収まりそうになかった。

そんなに怒る理由かなぁ...気にしたら負けだと思うんだよなぁ...自分の見た目。


「思いの減らない人間ですね...?」

「お前...少しは自重しろよ...」

「あ...忘れてた...」

「死ぬ覚悟がお有りと取らせてもらいましょうか...?」


古明地さんの第三の目から燃え出していた黒い炎は液状化し涙のように床に垂れた。その液体が垂れた場所は焼けるような溶かすような音を立てて床から煙を出した。

うん。何あの危険物質。

黒い涙は止めどなく溢れ出し、床にどんどん溜まっていった。

いやいやいや...マジで何あれ!? 絶対人体に影響及ぼす奴でしょ!? しかも気のせいか古明地さんの両目もさっきより黒くなって真っ黒になってるし! 怖過ぎでしょ!?


「うわぁ...めんどくさいことになって来た...」

「なんなんですかあれ!?」

「あれは感情解放。自分の感情を意図的に解放し身体強化、特殊効果を付与する技だ。今のさとり様は憤怒を解放してる。あの人は煮えたぎる憤怒をマグマに変えて放つことができるんだ」


ということはあれか? 古明地さんがさっきから出している黒い涙はマグマってこと? マグマの涙とか危なすぎるでしょ!?


「加えて以上な破壊力も身につくから近づいたら危ないね」

「そんな呑気な!?」

「元はと言えばお前が蒔いた種だろ? 俺が関与する筋合いはない」

「そんなこと言わずに助けてくださいよ!!」

「やだ」


即答で、しかもたった二文字で拒否されたよ! 分かりきってたことだけどさ!!

もうこうなったらヤケクソだぁぁぁぁ!


「機銃《アストロ☆バスター》!」

「憤怒《煮え滾る怒りはマグマの如し》」


俺が放ったアストロ☆バスターを古明地さんはマグマの涙を操り大きな壁を作り出した。その壁に俺の攻撃が直撃すると周りにマグマが飛び散った。

壁をどうにか貫通できないか俺は攻撃を続けたがどうゆうわけか壁を貫けず、むしろ壁はさらに厚みを増しているように見えた。


「無駄ですよ。私の怒りが尽きぬ限り壁は消えません」

「なら...機雷《アストロ☆ボム》!」


自分の中の力を圧縮した小さな球体を幾つか作りマグマの壁に向けてばら撒いた。そして、どこからか取り出したスイッチを押した。

カチン! と何か音が鳴ったその瞬間。マグマの壁が爆発した。それは一回で終わらず俺がばら撒いた球体の数だけ爆発を起こし、壁は完全に破壊された。

俺が壁に向けて撒いたのは一種の爆弾だ。限界まで圧縮された力は元に戻ろうとする力によってとんでもないエネルギーを放ち爆発する。それを何個も投げたんだ再生する壁といえど破壊できる。


「腹立たしいぃ...憤怒の獄《破壊のパラライズ》」


一瞬、モスキート音のようなものが聞こえると俺の体に軽い痛みが走った。それと同時に古明地さん周辺の壁や床が大きな音を立ててヒビが入った。何か超音波的な何かで破壊したようだ。

彼女から離れるほどヒビは弱まっていったのを見ると俺は多少距離があったおかげで軽い痛みで済んだが近距離であれを喰らっていたかと思うとゾッとする。


「だが、ビビってられるかよ!!」


右腕に触れ剣の形に改造。俺は古明地さんに接近戦を持ち込もうとした。もしかしたら、さっきの技をやられるかもしれない。だからと言って近づかないわけにはいかない。


「愚か...憤怒の獄《憤慨のカタストロフ》」

「改造 《フル・メタリック》!」


古明地さんの背後に黒く輝く魔法陣が現れた。それは見える範囲だけでも数十個はあった。どうみても危険な香りしかしない。

俺は能力を使い全身を限界まで硬化させた。それはダイヤをも凌駕する。しかし、全身を硬化させるとなると多少時間がかかる。況してや、硬化中の俺は動くことは不可能。無防備の状態を怒り沸騰の古明地さんが見逃す訳がない。

そして、俺の思った通り全ての魔法陣から多種多様な銃火器が現れて銃口が全て俺に向けられた。

うん...ヤバいなこれ。


「撃て」


その声とともに一斉射撃が始まった。

多種多様な銃火器から放たれた銃弾は速さ、威力、弾道全てがバラバラ。これは間に合うかな...?

まだ全身を硬化できていない。要所要所は変化しているが生身の部分は残っている。そうこうしているうちに一発目が当たった。ライフルで撃たれた銃弾がまだ生身の肩を撃ち抜いた。服に血が滲み、熱を帯びていった。痛くて叫びそうになったが歯を食いしばる。

そして、二発目、三発目と銃弾は飛んできた。生身の部分に当たるたびに痛みと熱が帯びる。

だが、時間を追うごとに硬化した部分は拡がっていき銃弾を食らう確率は減ってきた。

それでもまだ生身の部分は残っている。徐々に撃ち抜かれる俺は大量に血を流していた。

頭がクラクラしてきた。それでも耐える。

撃ち抜かれた部分は感覚が無くなってきた。それでも耐える。

耐える事数分...銃弾の雨は収まりを見せた。やっと終わったと思った矢先に額に何かを押し付けられた。それは拳銃だった。


「あの一斉射撃を耐えた事には驚きました。ですが、これで終わりです」

「なあ...勝ちを確信した時、それを覆されたらそいつはどんな心情だと思う...?」

「さぁ...? そうとう悔しいのでは?」

「そうか...」

「無駄話は終わり。死になさい」


そう言って古明地さんは拳銃の引き金を引いた。

ガァン!! という大きな音が響いた。その音に近くにいたアルマさんは驚いた表情を見せ、古明地さんは拳銃を握っていた腕を抑え俺をキッと睨んだ。


「じゃあ、古明地さんは今。とても悔しい訳だ」


俺はケラケラと嘲笑うように言った。

ギリギリ間に合ったぜ。全身硬化。最後の無駄話をしたおかげだ。あの数秒が無ければ頭のてっぺんにまで硬化は行き通らなかっただろう。


「やってくれましたね...!!」

「それはこっちのセリフでもあるんだけどな」

「なら...次の手でーーーーー」

「はぁい。終了!」


パァン! と俺たちの間に割り込んでアルマさんが手を鳴らした。


「そろそろ終わってくださいよさとり様。十分怒り収まったでしょ? 新月少年もその怪我じゃあ戦えんだろ」

「悪いのですが私はーーーー」

「イラとリティアと一日中過ごしていいですよ」

「怒りは完全に収まりましたのでこんな下らない戦いはやめましょうか」


あっさりと引き下がった!?


「新月少年もいいよな?」

「ま、まあ...はい...」


なんか釈然としない終わり方だが古明地さんとの戦いはアルマさんの制止によって終わりを告げた。そして俺は糸が切れたかのように地面に倒れ意識を闇に手放した。

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