酒吞童子との再会
こちらも更新しないと、ね?
風見さんの花畑から歩くこと数分。俺はある事が気になり、アルマさんに聞いてみる事にした。
「アルマさん」
「どうした?」
「皆さんが言うあいつって誰なんですか?」
俺の質問にアルマさんは顎に手を当て考え込んでいた。もしかして、他人に紹介しにくい人なのかな。
数分考え込んでようやく顎から手を離すとどこか納得した様子で言った。
「実際に会わせた方が早いか。行くぞ! 新月少年!」
「行くって...え? 今から!?」
「善は急げって言うだろ」
「そ、そうですけど!」
「異論は認めん。さぁ行くぞ!!」
ガシッと俺の頭を鷲掴みにするとアルマさんは目にも留まらぬ速さで走り出したのだった。
△▼△
アルマさんに掴まれたまま猛スピードで移動中です。途中、何度も吐きそうになるのを耐え、首に痛みを感じつつ、走馬灯を見ること幾数回。アルマさんの動きが止まった。どうやら目的地に到着したようだ。
そこは妖怪の山の奥の奥。しかもかなりの高度で見渡す景色はなかなかの絶景。とても自然豊かな場所であった。
今いる場所には人が住んでいるであろう一軒家があり、すぐそばで人影が見えた。もしかして、あの人がそうなのか?
その人影はこちらに気付いたようで大きく手を振って近づいて来た。
「アルマさ〜ん!」
「よっ! 久しぶりだな」
「本当ですよ! それで...そちらは?」
「ああ、そうだった。新月少年、紹介するよ。こいつはーーーー」
「仙我...?」
「え?」
黒と茶色が混じった独特な髪型で右目が赤、左目が青のオッドアイの青年。修羅仙我は驚いたような表情をした。
その表情は俺がしたいんだよ。何でこいつがここに居るんだ? いや、それよりもなんか年取ってる!?
「もしかして...黄泉? けど、どうしてここに...」
「こっちのセリフだ! 行方不明になったって聞いた時は心配したんだぞ!!」
「えーっと...知り合い?」
アルマさんは頭をポリポリと掻きながら困ったような顔をしていた。その質問に仙我が答えた。
「えーっと...黄泉と自分は幼馴染なんです。外の世界に居た時はよく一緒にいました」
仙我の言う通り、俺とこいつは外の世界で小さい頃から一緒にいた幼馴染だ。
だが、こいつは2、3年前に突然行方不明になってしまった。その時はショックを受けたさ。警察も誰一人痕跡を見つけられず、仙我は死んだ者とされていた。しかし、まさかこんなところで再開できるとは思わなかった。
ある意味死人と会ってる気分だ。
「てか...お前大きくなったな」
「お前はほとんど変わらないな。10年も立ってるのに」
「は? 10年? お前が行方不明になってから5年も経ってねぇぞ?」
「え?」
俺と仙我が食い合わない話に首を傾げているとアルマさんがその原因を教えてくれた。
「そりゃあそうだ。ここと外の世界の時間軸は違うぞ。多分、外の世界の一年はこっちだと2、3年ぐらいだったかな」
そんなに違うの!? じゃ、じゃあ仙我は知らぬ間に俺よりも年上になってしまったということか。な、なんか複雑だ...!
でも、生きててくれて嬉しい。長年一緒だった親友が死んだと思っていたら知らないところで生きていた。嬉しくないわけがないだろう?
「とにかく...だ。無事でよかったぜ」
「変に心配かけちゃったみたいでごめんな。また会えて嬉しいよ。それで二人はなんでここに?」
「ああ、それはある人をアルマさんに紹介して貰おうとしてて...あれ?」
もしかして、アルマさん達が言っているあいつって、仙我の事か?
「ああ、違うぞ。こいつはその人物と一緒に住んでるだけだ」
「言う前に察しないでくださいよ」
「効率いいだろ。それで今日はあいついるか?」
「残念ですが...今日はお出かけしていて...」
気のせいか。こいつが今後ろの屋敷に視線を移したような気がする。
「そうか。悪いな新月。今日はいないそうだ! 帰るぞ!」
え? そんなあっさりと帰る感じなの!? もうちょっと待つとか、伝言頼むとかないの!?
「また来ればいいじゃん。道も覚えたろ?」
「あんな超スピードの中で道を覚える余裕なんて俺には無いですよ!!」
「え〜おまえ機械人間だったらオートマッピングとかないのかよぉ?」
「そんな便利な機能無いですよ!! 」
いや、むしろ今のうちに入れておけばいいのか? 脳と目をちょっと改造して...ダメだ。なんか失敗した時が怖い。それに俺の体が内部から人間の要素を失っていくのがやだ。というか何で機械とか詳しくなさそうなのに。そういうワード知ってるんだろうこの人。
「だとしても、もうあのスピードを体で受けたくない!」
「わがまま言うな!」
「えぇぇ!?」
「あ、なら自分が送って行きますよ」
俺が理不尽に怒鳴られていると仙我がそう申し出た。
「いいのか?」
「ええ、黄泉とも話したいことがたくさんありますし。それに...」
また後ろの建物に視線を向けた気がしたが、何かいるのか?
「あ〜わかった。じゃあ、新月少年はお前に任せるよ」
「わかりました。行こうか黄泉」
「え...? あ、おう。それじゃあ、アルマさん色々お世話になりました」
「気にすんな。また会おうぜ」
軽い感じのアルマさんに別れを告げて、俺は前を歩く仙我の後を追った。
△▼△
仙我と共に帰っていく新月を見送り、あいつらが完全に見えなくなると仙我の家に入った。
「もう行ったぞ」
誰もいないはずの家に向かって俺は言った。
すると、奥の方から怯えた様子の少女が顔を出した。
「なぁんで、そんな怯えてるんだよ」
「だ、だって...」
「大方。どんな顔して会えばいいか、わからなかったんだろ?」
図星だったようで少女は顔を逸らした。それに対し、俺はため息を零した。
「全く...さとり様から聞いたが、あの件のことがあるんだ。あいつが一番お前に会いにくいんじゃないか?」
「そ、そうだけどぉ...」
「まあ、その問題はお前らが解決しな」
冷たいと思われそうだが、実際のところ俺が割って入ったところで解決に繋がるとは思っていない。だいたいそういう過去のわだかまりみたいなものは当事者達自身が解決するべき問題なんだよ。
故に俺は極力干渉はしない。面倒くさいわけじゃないよ。俺だってそこまで冷徹な存在じゃないです〜超優しいです〜パルスィだけに。
まあ、そんなわけで。
「俺は帰るぞ。後は自分でどうにかしな」
「わ、わかりました...」
「ならいい。そういうことだから俺はもう行くぞ」
さっさとパルスィの元へと戻るために家から出ようとすると、そいつは頭を下げてきた。
「あ、あの...ありがとうございました...!」
「......何が?」
「あの人を一目見せてくれたから...」
「ああ、そんなことか。別に気にすんな。それじゃあ頑張れよ」
「は、はい...!!」
嬉しそうに返事をすると、頭から生えた耳をピクピクと震わせ、お尻の辺りから生えたふさふさの尻尾を横にパタパタと振っていた。
まったく、能力を使うまでもなく感情がわかる奴なんてこいつぐらいだな。
そんなことを考えながら俺は仙我の家を後にした。
察しが良い方は、この少女が誰かわかるね? わからない? じゃあいいです。




