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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第一章 とりかえばや、とりかえばや
8/80

STEP7 脱出せよ!

☆☆☆


 生暖かくて柔らかいものを背中に感じた。

 鼻につく、酸っぱい匂いと金属のような匂いがした。

 サラは柔らかい何かに包まれたまま目を覚ます。


「……っここは?」

「ん? 起きたか」


 じっ、とネロがこちらを見ている。

 服装は黒のシャツに黒いズボンだった。いつの間にか着替えていた。

 そして口に布を巻いている。


「これ、つけた方がいい。この辺はガスが充満してるみたいだからな」


 渡されたマスクを着ける。そして辺りをきょろきょろと見回す。


「あの……ここはどこなんでしょう?」

「崖の途中だ。出っ張った所に上手く乗ったみたいだ」

「あとあの女性の方は?」

「お前の下」

「えっ!?」


 サラがはっと体を起こす。車体がぐらりと揺れた。


「ばっ! 下手に動くなって」

「す、すみませんっ!」


 危なげなくバランスをとりつつ下を見る。

 そこには目を閉じたまま動かないエミリアの姿があった。


「あの」

「大丈夫、この人はよほどのことが無い限り死なないから」

「――おいおい、少しは心配してくれよな」


 呻きながら目を覚ます。


「いつから起きてたんです?」

「ネロ君がお着がえしてるときかな」

「なら声を掛けろッ!」

「まぁまぁいいじゃん。一先ずこっから脱出しましょー!」


 エミリアは端末を取り出そうとポケットをまさぐるが。


「……?」

「あ、私が持ってます……?」


 サラの手には何もない。


「……もしかして失くした?」

「す、すみませんっ!」

「何やってんのさ……っこれじゃ脱出できないな」

「え、通信機は無いんですか?」

「あのな、うちの船にはAIが付いてないの。だから呼んでも無駄ってこと」

「なら崖を登ろう。十メートルくらいだし頑張れば」

「無理ですっ! 私が登れませんっ!」


 ネロの提案を全力で拒否したサラ。


「ま、ここで揉めてても仕方ないな。んじゃー自己紹介でもする?」

「の、呑気なこと言ってる場合じゃ」

「ボクはエミリア。宇宙でも五本の指に入る大怪盗さ」

「ネロだ、よろしく」


 怯えるサラを無視して自己紹介を始めるエミリアとネロ。


「で、キミは? 知ってるけど改めて身の上の話をしてほしいな」

「…………サラ・オルタンス・カリナンです。今年で17になります、両親は亡くなっていて家族は双子の兄だけです」


「ふぅん、それでどうして逃げたのか教えてくれる?」

「……その、言いにくいことなんですが」

「ん? 肉体関係求められたとかそんなとこだろ」

「う……それはちょっと、違います。もちろんそれもありますけど……本当は別の理由なんですっ」

「何があったんだ?」

「彼の計画を、聞いてしまったんです。連盟政府を揺るがす恐ろしい計画を」


 サラは覚悟を決めるようにぎゅっとこぶしを握り締める。


「エクセルシアの宝石加工技術がが連盟内で一番なのは知ってますよね?」

「ああ、ボクも結構好きだぜ、ここの職人の作品」

「そしてこれは知られてないのですが……爆薬を扱う技術も連盟で一、二を争うんです」

「鉱山を掘削するためか、理に適ってる」

「時代遅れということでレーザーを用いるのが主流なのですが……大規模な鉱山では爆破した方が手っ取り早いんです。ですから様々な種類の爆弾を作ることができて……例えば砂粒ほどの大きさで鉄板を破壊できる物とか」

「ははーん読めたぞ。将軍は連盟政府の要人を暗殺しようとしてんだろ?」

「ッ! ……その通りです。方法はわかりませんが確かにそう仰っていました。だから……連盟の方に知らせて、私の事も匿ってもらおうと」

「自分も助かり連盟の危機も避けられる、一石二鳥って訳か。頭良いな、お前」

「でも……この有様です。私がドジをしてしまったばかりにっ!」

「それな、せっかく陰謀が分かってもな……」

「結局そこに戻りますか。やっぱり登りましょう、彼女は俺が背負います」

「んーそだな、んじゃこっから出て――」


 エミリアが起き上がった瞬間さらに車体が揺れた。

 がくん、とずり落ちる。


「出れる?」

「まずは俺から出ます。で、その後彼女を背負います」

「じゃボクが最後!? やだやだ危ないもん!!」


 駄々をこねて暴れると更に車体が傾く。

 サラは怯えたようにネロにしがみついた。


「順番的にも適当です。諦めてください」

「う~」





 紆余曲折あったが三人は崖を登る。正確にはネロとエミリアの二人だが。


「あの……重くないですか?」

「いや、気にするな」


 ネロは慎重に出っ張りを触って崩れないか確認し力を掛ける。

 ガスのせいか指先が痺れる。布当てだけじゃ不十分か。


「おーい! ネロ君大丈夫ー!?」


 一方エミリアはピンピンしている。常人離れした体はこの環境の影響を受けていないようだ。


「なんとか!」


 腕に力が入りにくい。 

 でも集中、最善を尽くす。それだけ。

 ただひたすら腕を動かした。



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