STEP72 センターオブユニバース
『すべては、直径10Kmの隕石が直撃したせいだった。
それは、地球を支配していた恐竜を死に至らせ、哺乳類の時代をもたらした。
あれから6500万年後、人類もまた、恐竜のように絶滅しようとしていた。
地上には住む場所がなく、食糧生産のできる農地も限界まで開墾したが、時すでに遅し。
最後の悪あがきとして、地下都市の建設に踏み切った矢先の事だった。
地下数十キロの岩盤を掘削していたチームが謎の鉱石を発掘する。すぐさま考古学研究室に回され、隅々まで非破壊方式の検査が実施された。
ありとあらゆる調査が行われたものの、正体は不明どころか、研究に携わった人間が全員昏睡状態に陥ってしまったのだ。
その数年後、彼らは突如目を覚まし――――』
エミリアは端末のカメラを使いその続きの解読を試みたが、文字が掠れてしまっていて認識されない。
「なにさ……肝心な部分が読み取れないじゃぁないか」
「え、エミリアさぁん!」
別の区域を探っていたサラは古めかしい紙の束を抱えてくる。
「G-ドライブの設計図です……!」
「!」
破ってしまわぬように慎重に広げた。
それは素人が模写した風景画のようで、辛うじて各パーツの大きさが分かるといったものだった。
『――重力湾曲機関・設計図』
二枚目はそれをプロが書き直したようで、ちゃんとした設計図だった。
動力源は発掘された謎の鉱石。
2,3センチ大にカットし、組み込みことで半永久的に駆動する仕組みらしい。
「他にめぼしい物は?」
「いえ……植物に浸食されてしまっていて」
「ん、じゃーとっととずらかろうか」
☆☆☆
『――彼らは取りつかれたように何かを書き始めた。形は違えど、皆同一のもの(約一名絵心のない者がおり、彼の書いた図はよくわからなかったが)であり、それは動力機関の設計図だった。誰も工学に精通していなかったが、ただの落書きとも思えず、実際に製造された。
運用実験には勇気ある宇宙飛行士が参加した。
――――
――――――――し、ラピス・ホープ船長は人類で初めて太陽系外惑星に降り立った人物となった。――――彼の発見した――――は――――――』
「だーっ! ぜんっぜん読めないじゃないか!」
エミリアは書類を叩きつけようとし、古文書である事思い出し静かに置いた。
「しっかし、お師匠様が本当に伝説の宇宙飛行士様だったとはな」
ラピス・ホープ。それが本当の名。
G-ドライブの試験運用の際にフェニックスライト発見した、らしい。
『――――彼の発見は世界中に驚きをもたらした。空想の存在であった不老不死や、特殊能力を得る可能性を見つけたのだから。大きな旨味は、権力者を魅了する。各国はこぞってG-ドライブの開発を行い、宇宙へと旅立っていった』
そこまで書かれ終わっていた。
「エミリアさん、整備終わりました」
「ん、わかった」
サラに呼ばれてエンジンルームへ向かう。
丁寧に配線を外されている。予備動力はそこまで長く持たないし、壊れれば一巻の終わりだ。
「こいつは、お師匠様がくれた物なんだ。つまり――G-ドライブの初号機ってとこだ」
「それってつまり」
「ネロが持って行った、センターオブユニバースらしいブツの欠片で動いてるってことさ」
パーツを一つ一つ外していき、コアを露出させる。
「だ、大丈夫ですか……? 専門家でも、内部構造のメンテナンスは限られた人しかできませんよ」
「ん、任せろ。こういうのはセンス、だろ」
「そう言って、昔運転失敗したことありましたよね!?」
「うっせ、気が散る」
慎重に回路をいじって、動力源だった欠片をゆっくりと抜き取る。
彼女の手はプルプルと震え、今にも手を滑らせそうだった。
サラの持つ布の上にそれを置きなおした。
「ふぃ~セーフ」
「よかった、壊れてませんね……」
「うしっ! サラちゃん、これの力を発動させないさいっ!」
「はいっ! ……え?」
「出来るだろ。ブラディオニキス使えたんだから」
無茶ぶりだった。でもやるしかない……?
サラは欠片を見つめ、念じてみる。
「ま、嘘だけど」
釈然としない。
エミリアに欠片を奪われ彼は呆然としていた。
「こいつは方位磁石だ。宇宙の中心だけを示してくれる」
彼女はかつての装置にそれを組み込む。
「ネリーが持ってたのも、G-ドライブのコアだったって事かもな」
一点を示し留まる。
「よしっ! 行こうか」
「復元作業は?」
忘れていた。




