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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第七章 運命の導き
70/80

STEP67 血の想い

☆☆☆


 火花の飛び散る室内。

 不快な煙が充満している。

 焦げた匂いが鼻をかすめる。

 サラは、足元で横たわるモノを抱える。。

 皮膚は焼け、辛うじて人相が分からないほどに傷ついてしまっている。


「デビー、さん……?」


 名前を呼んでも反応は無い。

 辛うじて吐息を感じ取れるが、今にも止まりそうだった。


「――――……」


 何かを、言われた気がした。

 かぼそくて、周りの音にかき消されてしまっていたが確かに何かを言っていた気がした。


「残念だよ……こんな“凡ミス”で終わるなんてね」


 銃口を後頭部に突き付けられた。


「そんな物に気を取られなければ、逃げ切れていたかもしれないのに」

「……あなたは人の命を何だと思っているんですか!」

「仲の良くない人など気にする必要もないね……さようならだ」


 引き金が引かれた。

 その瞬間、銃身が爆発した。


「ッ!? 暴発……」


 フレッドは両手を押さえて後ずさる。


「お母様が言っていました……人の命は、かけがえのないもの――軽々しく扱っていいものではないと」

「人は遅かれ早かれ死ぬものだ。大切に思う必要はないね」

「許せない……!」

「許しを乞う気はないね――スローターカスタム……起動」


 その言葉と共に現れたのは人型兵器のスローター。だがその四肢がばらばらになり、フレッドの体に装着されていく。


「君の死生観は素晴らしいと思うよ。だが……理解する気にはなれないね」

「恩のある人を見捨てたら――お母様に叱られますっ!」

「お母様お母様……君はマザコンというやつかい?」


 全身の装着が完了し、蒸気が発せられる。


「生みの親を敬うのは――当然のことですっ!」


 サラの右足を、彼女――彼自身の血液で覆われ、機能の補助を行う。脳天を貫くような痛みはすでに感じなくなっていた。


「安心したまえ。すぐに彼女の元へ送ってあげよう」

「言ってなさい!」


 ガトリング砲が火を噴く。火花と煙のせいで照準が狂うのか、なかなか当たりそうもない。

 血のシールドを生み出すが、量が多すぎて頭がふらつく。どんな力にも、代償はあるのだ。


「抵抗したところで、いずれ君は失血死。潔く死んだらどうだい?」

「う……るさいっ!!」


 これ以上血を流せば、意識を失ってしまうだろう。だが、防御を薄くしてしまったら致命傷を喰らってしまう。

 何か、逆転の手立ては――


『――彼女を甦らせればいい。機械を破壊するには電気が一番よ!』

「どうやって……」

『オニキスは感情と血の力。あなたの助けたいという感情に、彼女の血は応えてくれるはずよ』


 弾切れになった瞬間、力尽きたように倒れて見せた。

 そして、デビーの体に血を潜り込ませる。


「はあ……だから言ったんだ。いずれは死ぬって」


 わかる。彼女の体の隅々まで、ボロボロで今にも崩れ落ちそうだった。

 ボロボロでも、ここまで来てくれた。自分の為とか、思い上がることはしない。きっと別の用だったかもしれない。でも――助けてくれた。その恩を返さなくてはならない。

 ジャキンッ! とリロードの終わった音がした。


「いずれは、僕も君の元へ行くよ」

「“させません”」


 機械の椀部が火花を散らした。

 溶けかけの眼鏡が宙を舞う。


「彼は私の物です――勝手に殺させはしません」


 肌の張りは戻り、声の活力はかつてのように強く、だが体は生き血にまみれていた。


「遅いですよ。もっと早く助けなさい。死んだかと思いましたよ」

「そんな……来るってことわかるわけ――――痛い痛いっ! そこケガして――あぐっ!」


 デビーは言い返したサラの足の傷を踏みつけた。


「わ、私の力が無ければあなた死ぬんですからね!? そこ分かってますっ!?」

「死んで結構、あなたに生かされるくらいなら死にます」

「――なら、死んでもらおうかな」


 ミサイルポッドが開く。レーザーのチャージが行われ、一斉砲撃の構えとなる。


「ほら、盾となりなさい」

「無理ですっ!」


 彼女は舌打ちをすると、自家発電を行う。かつては体へのダメージを負うリスクがあったが、サラの回復があるのでそれが無い。全力をためらうことなく発揮できる。


「いいでしょう……決して、前に出ないでください」


 指を銃の形にしてフレッドに向ける。


「おいおい……暴発したらどうするつもりだい?」

「そんなヘマはしません――あなたとは違って」


 彼女の人差し指に、電流が溜まっていく。


「ばん」


 電撃が放たれ、装甲を無力化する。爆発の寸前、フレッドが脱出したのを見て、デビーは追いかける。


「っ!」

「あなたを逃がすと、厄介なので……死んでいただきます」

「はは……ここまでか」


 首の骨が折れる音がした。

 彼女は亡骸を捨て、サラの元へ歩く。


「無茶、し過ぎです」

「はは……お母様に言われましたから――“男らしくなくていい、大切な人を守れる人になりなさい”って」

「いい母を持ったのですね」

「とんでもない! この宇宙で一番怖い人ですよ」


 怒られた時の事を思い出したのか、彼の表情は真っ青だ。


「ありがとう……」


 デビーは、そんな彼を抱きしめた。


「死ぬ前に、あなたともう一度出会えた。それだけで私は幸せです」

「どうしたんですか? かしこまって」

「よくわかりませんが、私はあなたのことが好きなようです」

「へ……?」

「聞こえませんでしたか? ならもう一度言いま――」

「聞こえてますって! どうして急に……?」

「もう一度死ぬ前に、言っておきたかったんです。さ、もういいですよ、何もしないで」


 サラは戸惑っていた。言うべきか、言わないべきか……。


「あの、もうなにもしていないんですけど……」

「は?」

「力が必要だったのは、蘇生の時だけでして――もう、私の力なしで――――っ! いっつつつつ! や、やめ――あうっ!」


 羞恥で顔を真っ赤に染めたデビーの逆襲にあっていた。右足の傷をここぞとばかりにえぐられた。


「私に恥をかかせた罰ですッ! なんでもっと早く言わないんですかッ!」


 これ以上傷つけたらさすがの最先端医療でも治せない。そんな彼(の足)を救ったのは、緊急放送だった。








『れっでぃーすえーんじぇんとるめーん! 連盟のみなさんきこえてますかー!? ワタクシ怪盗のエミリアで~っす!』






――――議長演説まで、あと10分

 


~どーでもいい設定集~


・スローターカスタム

 早い話がアイアンマンだったりする。スローターを装着できるようにしたもの。


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