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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第一章 とりかえばや、とりかえばや
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STEP6 逃走劇

「っ! もうバレたのでしょうか?」


 サラは怯えたように後ずさる。


「違うな。バレてんならこんな穏やかじゃないさ。多分しらみつぶしに当たってんだろ」

「でしょうね。数に物言わせた人海戦術ってことですか」


 ひっきりなしにドアが叩かれ鍵が緩み始めている。


「ま、逃げるしかないな」


 エミリアが窓から降りようとするが、ネロは留まったままだ。


「……おい、どーした?」

「見捨てるんですか?」

「別にそこまでして助ける必要もないけどな」


 あくまで盗みの助けになるかと思っただけで全力で守ろうとするつもりはなかった。


「ほら、行くぞ」

「だったら俺は行きません、一人で逃げてください」

「はぁ!? 何言ってんのさ!」

「困ってる女の子を見捨てることができないんで」


 鍵が今にも壊れそうになっている。僅かな隙間から外の様子が見える。


「ったく! キミは昔っからかわいい子に弱いねぇ!」


 エミリアは苛立ちと呆れ出しつつ背を向けてしゃがむ。


「ほら」

「…………?」


 サラはきょとんとした様子でそれを見つめる。


「早く乗りな。飛び降りれないだろ?」

「いいのですか?」

「かわいいネロ君のわがままに付き合ってやるだけさ。急げ、時間がない」


 ドアが鍵穴を支点にゆがむ。大きく開いた隙間に指が突っ込まれる。


「あ、ではお願いします」


 ちゃんと背負えたことを確認し窓枠に足を掛ける。


「行くぞ!」

「了解!」


 エミリアがひらりと外へ身を投げ出す。

 ネロもそれに続こうとするも、バトラが動こうとしないのに気付く。


「何してんだ?」

「囮が必要だ。それに私なら姫が攫われたことにできる」

「そっか、悪いな」

「姫のわがままをできる限り聞くのが私の役目だ。……ご武運を」


 ドアが開け放たれた。

 返事をする暇もなく窓から飛び出した。






















☆☆☆


「さーてお車を拝借♪」


 地上に降り立つと路肩に止めてあったホバーカーに近寄る。


「え……盗むのですか!?」

「借りるだけ借りるだけ♪ ……んふふ~こーしてこーすると」


 どんなに技術が進歩しても鍵穴がなくなることはない。無論、鍵なし(キーレス)タイプも重宝されるが何かあったときのために前者が主流である。


「はい、御開帳~」


 エミリアにとって錠前破りは朝飯前である。

 後部座席にサラを押し込むと今度はエンジンに取り掛かる。

 何世紀も前はキーシリンダーを強引に抜き取っていじると始動出来たそうだが今ではそんなことができない。AI制御の自動運転が主流だからだ。起動にはパスコードが必要である。


「さぁさぁゲロってちょーだいな」


 端末からハッキングしコードを解析する。


「――急げ! 追っ手が来てる」


 ネロが黒服の連中に追われながらこちらへ駆けてくる。

 画面上の数字が目まぐるしく変わっている。


「急げ~」


 と、口で言ったところでスピードは変わらない。

 幾つか数字が確定していく。


「はふぅ……こりゃ一戦交えるしかなさそーだ」


 エミリアは端末を放り出し外に出る。


「先に乗って!」

「了解ッ!」


 ネロとすれ違うように黒服たちと対峙する。


「カモ~ン♡」


 来い来いと相手を挑発する。

 黒服達は一瞬ためらうもずぐさま銃を抜き放つ。消音器サプレッサー付きの拳銃だ。威力は空気銃に劣るものの速射性に長けている。

 銃口がエミリアに向けられる。


「……まじっすか」


 音もなく銃弾が発射される。

 ――風が吹いた。


「出会い様に撃つのはマナー違反だな」


 全弾が摘み取られている。

 がそんなことなどお構いなしに黒服達の突撃。


「だからっ!」


 一人の攻撃をバックステップで、空振った手が地面をえぐる。


「そういうのはッ!」


 二人組が挟み撃ちを仕掛ける。それを跳んで躱す。


「良く――ないッ!!」


 躱した瞬間にスッた空気銃を残りに向ける。


「こいつは弾切れじゃないだろ? 武器を捨てな」


 残党たちが武器を棄てていくのを見ながら後ずさっていく。

 コード解析は終わったのか、ホバーカーはアイドリング状態になっている。


「じゃぁね!」


 エミリアは背中から乗り込み発車させた。

 

















☆☆☆


警告ウォーニング手動運転マニュアルモードに移行します』


「ちょっ! マニュアルの免許あるんですか?」


 後ろからサラの怯えた声がする。


「ん? 無いよ」

「ええっ!?」

「まー心配すんなって。こういうのは感覚センスだろ?」


 エミリアは手慣れたようにハンドルを切る。

 車体から微細な振動が伝わってくる。


「思いっきり擦れてますね」

「うっつ」

「大丈夫なんですか!?」


 危なっかしい運転に抗議するサラ。


「うっせー気が散る」

「ならオートに戻してくださいッ!」

「機械サマに逃走を任せられんよ」

「て、訳だから。諦めて腹くくった方がいいよ」


 ネロの一言がトドメとなったのかサラはお祈りを始めてしまった。


「……追っ手が来ましたよ」


 彼は窓を開けるとエミリアが盗ってきた空気銃を構える。


「なっ……」

「どうした?」

「装甲車ですッ!」

「はははーそんな馬鹿な」


 エミリアもちらっと後ろを確認。

 ゴツい車が追ってくる。前には軍用車が走っている。


「たかがオヒメサマ救出に大所帯すぎだなッ!?」

「もしかしたらこの機に……」

「死 ぬ 気 で 逃 げ る ぞォッ!!」


 アクセルが思いっきり踏み込まれた。

 超加速する中ネロはけん制に空気銃を放つ。

 対人用のゴム弾が地面を跳ねる。


「ッ」


 急カーブしたのでネロは慌てて体をひっこめる。

 リロードし威力を最大に調整してから再び撃つ。

 今度は軍用車の窓に弾かれてしまう。


「くっそターボブーストとか付いてないのかよッ!」

「一般車にそこまで求めちゃダメでしょッ!?」 

「すみません! 端末を貸してくださいッ!!」

「「はぁっ!?」」


 エミリアはハンドルを切りながら、ネロは射撃をしながら問い返した。


「わ、私にだってできることはありますっ!」

「……任せた」


 端末を受け取ったサラは猛スピードで入力を始める。

 荒っぽい運転に何度か頭を打つも涙目になりながら続ける。 

 再びけん制しようとネロが身を乗り出した時だ。

 真ん中を走っていた車が蛇行し始めた。


「――AIにハッキングして運転を乱しました。あと軍の回線にも入れたのでそちらに送ります」


 カーラジオから騒がしい声が流れ始める。ノイズが酷いものの相手の動きが分かるようになる。


「すごいな……こんなこと出来るなんて」

「褒めないでください……やな事を思い出してしまうので」

「いいじゃんいいじゃん。すごい特技――おうわっ!」


 進行方向を大型のトレーラーが横切っていた。

 しかも一本道である。

 このままでは側面にぶつかってしまう!


「ねぇフライトモードってどうやるんだっけぇっ!?」

「知りませんよんなもん!」

「あっ今すぐやりますっ!!」

『ほzzzuzzzgえzzzzzzzzzzyzizzい!!』


 恐らく“砲撃用意”

 撃ってくるっ!


警告ウォーニング・まもなく生存域デンジャーゾーンに突入します・ご注意ください』

 畳みかけるように車体のAIの警告。



 トレーラーまで10メートル。



「出来ましたッ! 移行しますっ!」



 5メートル。



『hzzっsやあああッッ!!』



 砲撃。残り2メートル。



 車体が浮かび上がる。

 着弾して爆発が起きる。

 横倒しになるトレーラーを越える。

 爆風に飲まれて車体が飛んでいく。

 システムによりエアバックが展開された。

 浮遊に遅れて翼が広がるが建物にぶつかってげる。

 まもなく生存域と書かれた看板をへし折って地面にぶつかる。

 ずーっと滑っていき崖の淵のような所で制止する。


『デンジャーゾーンデス・デンジャzzzz-ンdweweweewス・オオリノzzaiiiiiiiiiiiiiゥン』


 AIがショートして活動を停止する。

 エアミリア達は気を失っている。

 ぐらり、と車体が揺れる。 




 風に揺られて崖の底に落ちていった――――

 



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