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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第七章 運命の導き
67/80

STEP64 連盟の本拠地

☆☆☆


 人工惑星、ミルザム。

 製造年度、不明。少なくとも数千年は経過していると思われる。 

 生存可能域100%

 居住域0%





 連盟政府の議会講堂の他、多数の重要施設のある惑星。どのように製造されたのか、誰が設計したのか、など不明な点が多く、宇宙七不思議の一つとして有名である。無許可で上陸、接近することはすなわち連盟政府への敵対を意味する。G-ドライブを使用しない謎の動力源が使用されており、一説では人類とは別の文明の種族が製造したのではないかと言われている。





――――エミリア特製の惑星データファイルより抜粋























「……っと、こんなもんか?」

【一致率99.8%になりました。一卵性双生児と言われても不思議ではありません】


 ネロは鏡に映る自分の姿に苦笑した。ネリーに変装――元の自分と同じ顔にしたが、やはり男と言われるのもうなずける。むしろこっちの方が性別を間違えられないのだから得なのだろうか?



「化粧臭いですね……これではすぐに看破されてしまうでしょう」

「とはいえ、このくらい似せなきゃどのみちバレる」


 連盟の本拠地までもう間もなくだ。船を捨てる覚悟で突入しなくてはならない。


「小娘、おぬしは来てはならん。それ以上消耗すれば死を招くぞ」

「誰が小娘ですか……何と言われようと、私は彼を助けるために行動するまでです。宇宙はあなた方が救ってください」

「自分の不調ぐらい分かっておろうが……」


 ラズワルドが軽くデビーを小突いた。彼女は踏ん張れずに倒れてしまった。


【失礼ながらスキャンさせていただきました。あなたの体は――】

「黙りなさ――ごふっ!」


 湿った咳だった。

 彼女は咄嗟に口を押さえたが、指の間から赤い雫が垂れだす。


【内臓の一部が壊死し、血管は損壊し、神経細胞は大部分が失われています。もしや、恐怖を感じる機能すら失われているのですか?】

「黙りなさい……っ! 機械風情に、私の感情を理解できるものですか」

「恋は盲目、というが……ここまで来れば病気じゃな」


 呆れるラズワルドに、ネロは言った。


「来たいならそうさせればいい。問題は、秘宝をどうやって奪うか、だ」

「それならワシに任せておけ。華麗なテクニックを見せてやるわい」


 M.I.C.がホログラムで惑星の全体を表示させる。


【議長の執務室は惑星緯度42経度08の地点です。特別牢はその付近に存在します。衛星軌道に停泊することは不可能なため私からのサポートは行うことはできません】

「わかった、何とかするよ」

【それと――先程連盟議会が議長演説を緊急で行う声明を発表しました。統一時間で1時間後です】

「マラクめ……始める気じゃな」

「よし、急ごう」































 シャトルは予定通り、執務室の付近に墜落した。

 三人はそれぞれの目的のため、分かれて行動することとしていた。

 ネロはヨミとエドを引き抜き、固く閉ざされたドアを切り裂いた。体のサイズ感と今一つ釣り合っていないが、かつてのように腕を振るえそうだ。


「――まいごの、まいごの、こねこちゃん♪」


 自然と口が動いた。

 ネリーだったとき、ゴミ山から見つけた古代の民謡集の音源で聞いた歌。ネロとなった今でも歌おう。辛い気持ちを紛らわせるために。人助けのためとはいえ、人を殺すという辛い行為を紛らわせるため。


「止まれ! 撃つぞ!」

「あなたの、おうちは、どこですか?♪」


 敵の得物は旧式の拳銃。不具合の起きにくい信頼のできるいい武器だ。

 体が反射的に動き、ヨミの身で銃弾を受け流す。


「なっ……!?」

「おうち、をきいてもわからない♪」


 黄泉(ヨミ)。それはあの世の世界を意味する。

 すれ違いざまにヨミは命を奪う。どんなに血で濡れようと、その漆黒の刀身は決して霞まない。より一層輝きが増す。


「なまえ、をきいてもわからない♪」


 返り血が顔につくが、こすれば化粧が崩れてしまう。

 常駐している護衛を全て屠ったあたりで、嫌な予感がした。

 いつも強い敵や、想定外のことが起こるたびに感じ取っていたものだ。


「どういうつもりだ……ネロ?」

「バレてたか」


 頬をぬぐう。冷汗が止まらない。

 血のにじんだ純白のワンピースを身にまとい、安っぽいサーベルを担いでいる。

 美しい顔を怒りでゆがませながら、亡骸を踏みつけて近づいてくる。


「人の思い出ふみじって、生きて帰れると思うなよ……!」

「はっ! 男にたぶらかされて正気を失っているお前に言われたくないね!」


 しまった、神経を逆なでするようなことを言ってしまった。“ネロ”なら決して言わないことだ。

 今は“ネリー”として接している。

 感情は生まれ変わる前で、容姿は今のままで。


「かかって来いよ! 男にこび売ってる女に負ける気はない!」

「うるさいッ! ()()お前に私の気持ちは――」


 ネロは反射的に飛び出した。

 エドとサーベルがぶつかり合い、つばぜり合いとなる。


「 あ た し は 女 だ ッ ッ !!」




















☆☆☆


「やれやれ、派手にやりおって……」


 ラズワルドは屋上から騒動を目の当たりにし、ため息をつく。

 人手が分散されるのはいいことだが、警戒されてはやりにくい。


「さて……()も本気を出すとするか」


 保守点検用のハッチを開き、ダクトから内部に侵入する。音もなく、蛇のように。

 音で周りの様子を探り、場所を把握する。

 恐らく、演説の準備のため執務室にはおそらくいない。だが演説の会場は同じ建物の中、秘宝も肌身離さず持ち歩いているだろう。

 虚を突き、かすめ取る。腕の見せ所だ。


「!」


 ダクトが急に破壊された。

 急激な明るさの変化で目がよく見えないが、壁ごと破壊されたのが分かる。


「あう……たから、まもる」


 四本の腕が、ラズワルドを掴んでいる。


「くそっ! 俺は6000歳だぞ……少しはいたわってくれよな」

「まもる……」


 柔術の応用で拘束を抜け出す。


「やれやれ……老いぼれにはきついな」






 

 

 

 ――演説開始まで、あと40分。



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