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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第六章 デンジャラスクルーズ
53/80

STEP50 第一の島

初レビューもらい、うれしさで小躍りしている。

☆☆☆


 第三エリアの人工島には、アスール社と連携している企業の店が数多く存在している。

 船の補給のため立ち寄る場所だが、ショッピングのために一日滞在することとなっている。

 だが、コードマスターに用があるネロにとっては何の関係もない場所なのだが……。


「ここでも通信はできない、か……」


 まだ電波障害地帯にいるようで、連絡が取れない状態は続いていた。

 船内のカジノは停泊中、使えないようになっている。つまり、このまま粘っていても意味はなさそうだ。

 

【……ス。テス。マスター……すか?】

「M.I.C.か? お前、どうやって」

【たd……きしまして……なんとか接続できています。ただし、マスターとの二人限定ですが】

「丁度よかった。サラの現在位置はわかるか?」

【不明です。特定不能になる前はカジノ周辺に存在していました】

「なにか、報告されているか?」

【いえ、特には――……】

「ん、おい」

【………………】


 再び切断されてしまった。

 どうやら妨害の周波数が変化したようだ。やはり、あの社長が意図的に妨害電波を発生させているに違いない。

 島に下り立つと、煌びやかなデパートが目に入る。服屋や装飾品の店、食事処など色々な店が立ち並んでいる。

 クルーズ船の客だけでなく、従業員の家族も暮らしているのか、とてもにぎわっている。

 どこかの店に入ってみようと見回していると、道の端で蹲っている女の子が見えた。


「……大丈夫?」


 お人よしのネロにとって、どんな変装をしていてもつい誰かを助けたくなってしまう。悪い癖だ。


「……?」

「迷子になったの?」

「う、うん……」


 女の子の頭を撫でていると、消毒薬のような、薬品の匂いがした。


「一緒に、お父さんとお母さん探しまょう」

「うん……」

「名前、教えてくれる?」

「……アン」

「良い名前ね」


 アンの手を引いてやると、素直についてきてくれる。

 子供の手にしては少し皮膚が固い。それに、子供にしては雰囲気が落ち着きすぎている。

 本当に迷子なら、所かまわず泣き叫んでしまうのではないのだろうか?


「どこではぐれたの?」

「こっち……」


 手を引かれて、人気のないところまで連れてこられる。島の端の方だ。

 ますます怪しくなってきた。

 握られる力も強まり、この子が本当に見た目通りの年なのかも怪しくなってきた。


「あなた……」

「ごめんな――」


 右も左もわからない女の子から、凶悪な何かに様変わりし、ナイフを手にネロの首を掻き切ろうと動く。

 だが、彼の反応速度は常人を遥かにしのぐ。

 刃に毒が塗ってあることを警戒し、柄を抑えて受け止める。


「っ!?」

「ま、警戒はするよな……! お前、泣いてなかったからな」

「そ、それだけ、で?」

「あと、薬臭い。どっか、大手術でもしたのか?」


 手をひねりあげて、ナイフを離させる。ネロはそれを蹴り飛ばして海に落とす。


「ぁっ……! やるな……お前!」


 ゴキュッ! 

 関節の外れる音がした。アンの手首が不格好に垂れ下がり、するりとネロの手を離れていく。


「……いつも思うが、痛くはないのか? 関節外す時って」

「手術しすぎて感覚がねぇんだよ。ま、これで諦めはしないけどな――」


 脱兎のごとく、アンは路地の奥へと消えていった。














 あの後、買い物を終えて船に戻ると、部屋のベットでサラが眠っていた。


「おい……」

「んん…………おはよう、ございます」

「カジノで夜通し遊んでたのか? 情報、何か手に入らなかったのか?」


 サラは寝ぼけ眼で何かを考えている。

 何かはあったようだ。


「すいません……普通のギャンブラーの方としか交流できなくて」

「そうか、今日は俺も行ってみることにする」


 お腹の鳴る音が聞こえた。


「……ごはん、食べに行くか」

「はい……」


 何だろうか、この胸の違和感は。

 サラと話しているようで別人と話している気がする。話のくせは、いつもの通りだ。しかし、どこかいつも通り過ぎるのだ。

 昨日と同じ席につき、料理を頼んだ。サラの好きなエビが入っているグラタンだ。

 ほどなく品が提供され、一口食べてから席を立つ。


「ん……ごめんなさい。腹痛が」


 もちろん、お腹など痛くない。あくまで、確認のためだ。席を外して、何をするのかを。

 本物のサラならば、取ってしまうであろう行動を。

 外へ出て時間をつぶし、戻る。


「お腹、大丈夫?」

「ええ……」


 どうやらも食べ終わっているようだ――エビ以外は。

 

「……どうかした?」

「お前、誰だ?」

「え……?」

「俺の知っているサラなら、エビを残すはずはない。人の分横取りするくらい好きだからな」


 偽物は慌てて自分の食べ残しを見て、大きく天を仰ぐ。



「くそっ……やっちまった」

「――アンか……お前」

「はぁ……甲殻類アレルギーだったんだよ、昔。その癖でつい取り除いちまうんだ」


 隠す気の無かった偽物――アンは変装も解いて、昼間ネロの前に姿を現した時の顔に戻る。


「お手上げだ――それに割に合わねぇよ」

「誰の差し金だ?」

「おいおい、オレはまだ死にたくないんでな。秘密、だ……素顔も含めてな」


 どうやら、迷子の女の子の顔すら変装のようだ。


「気をつけな……お前の命を、狙っている奴がいるみたいだぜ」


 アンはネロの肩に触れようとしたが、跳ね除けられて諦める。


「じゃな」

「待てよ……どうやって身長を伸ばしたんだ?」 


 本物のサラはそれなりに背がでかい。小さな女の子の時よりも身長が3,40cm以上は変化しているのだ。しかも、足音からシークレットブーツで嵩増ししているとういわけでもない。


「企業秘密♡」


 彼女は無邪気な笑顔で答えると、人ごみに紛れて消えていった。



































☆☆☆


 人気のない通路。薄暗いあかりの中、アン――アンナ・Z・ミーニャはお金を依頼主につき返していた。


「……これは?」

「キャンセルだよ、あの依頼……どうしてその額で受けようとした? あいつ、そう簡単には殺せそうにない」


 依頼主、シヴァはそれを受け取りため息をついた。


「まさか、自分の子に会いたいからって理由じゃないよな? そうだとしたら、一生の笑いもんだぜ」

「……私は、金の重さで殺しはしない」

「知ってる。その点に関しては()()ボスの方が上だね。オレは、オレの為にこの仕事をしているわけだからな」

「……あの者は危険。すぐに離れた方がいい」

「それができたら、苦労はしないんだがな」


『随分な言い草だな』


 明かりが明滅した。ボイスチェンジャーで変えられた声が二人の耳に響く。


『私の許可なく手下に仕事をさせるのはやめていただきたい』


 その人物は暗がりの中におり、二人のいる位置からは何者かが判別できなかった。


『おっと、貴女の小細工は私には通用しない』


 腕を前に突き出そうとしたシヴァは、それを聞いて動きをキャンセルさせ、傍らに置いてある日傘を手に取った。


『もっとも、貴女が“日傘”を使うのならば、私も全力で応戦しよう』

「……何の、用?」

『警告だよ』


 彼女の手首に放電が行われた。近くにいたアンナもわずかにそれを喰らってしまっている。


『貴女が脱獄囚、デーク・タイターより暗殺の依頼を受けていることは調べがついている。だが、彼らを消したことで受ける火の粉が、関係のない我々に降りかかってきては困るのだ』


 もし仮に、ネロとサラを殺すことができても、現在この場にいないエミリアがそれを知れば、どうなるかは想像するまでもない――破滅が待っているだけだ。


『我々はこの件に一切関わらない。君も、また電気の椅子に座りたくなければ軽率な行動を控えるべきだ』

「へいへい……わかりましたよ、ボス」


 アンナは両手をあげ、降参の意を示す。

 だが、シヴァは違った。


「……運命とは、歯車のようなもの。私の事情とあなたの事情は、本質的に無関係ではない」


 むき出しの殺気を向けた。それに応えるように電球が過電流で砕ける。


『いや、よそう。争う意味はないからな』


 危険をいち早く察知していたアンナはすでにいなくなっており、暗がりからも気配は消えていた。

 彼女は砕けたガラスに気を付けながら、通路を歩いていった。


 

増量は続く。

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