表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第六章 デンジャラスクルーズ
50/80

STEP47 危険な火種

期間限定、増量中

☆☆☆


 夜となり、ディナーの時間となる。

 一応、旅行という名目なのでネロとサラは参加している。

 もしかすると、コードマスターと出会えるかもしれない。それも考慮して。


「ひえぇぇ……」


 サラは顔見知りの方々(各国の要人たち)がいることに驚きを隠せない。


「おいM.I.C.、怪しいの評価基準、訂正しとけ。お忍びで来てたんだろうな、きっと」

【承知いたしました。ですが、その方々を除いてもなお出自の不明な人物が一定数存在しているのでお気を付けください】


 もちろんM.I.C.の音声は外部に聞こえてはいない。

 前菜が運ばれてきたので会話はいったん中断する。

 大きなエビが乗ったサラダだ。


「目玉の星海のオーブはいつお披露目なのかしら?」

「メインディッシュが提供されてからじゃないかな」


 ネロは自分のサラダのエビがなくなっていることに気付き、ため息をついた。


「いくら好きだからって、私の分まで食べないで」

「ご、ごめん……」


 仕方なく残った野菜を食べる。苦みとオリジナルのドレッシングが見事にマッチしている。

 肉料理が運ばれてくると同時に、演壇にスポットライトが当てられる。


『お集まりの皆様方、大変長らくお待たせいたしました。我が社が誇る財宝、星海のオーブをご覧に入れましょう!』


 社長は背後にある布を取り払う。

 透明度の高いケースから、静かな光が漏れている。ついでに社長の禿げあがった頭も輝いている。

 

 きれいな球体。鮮やかに透き通った青で、中を星のようなきらめきが満たしている。


「これは、なかなか綺麗ね」

「うん……」


 会場中からため息が漏れる。

 それもつかの間、何者かが演壇に突撃した。


『え、ちょっ!』

「どけぇっ!」


 その人物はオーブを奪い取ろうとしたが、黒服によって抑え込まれる。


『ほっ……危ないところでした。もし、手に取ってみたくなっても、決してしないでください。優秀な私の部下が、危害を加えてしまうかもしれない』


 社長は額の汗を拭きながら説明した。


「デモンストレーションにしては悪くないね……」

「よく気付いたわね」

「だってあの社長、全然焦っていないんだもの……あれが抑止力にはならなさそうだね」


 サラの言う通り、社長の笑みはとても和やかで、周りの“怪しそうな”人々は値踏みするようにデモンストレーションを見ている。


『なお、展示ルームにて鑑賞は可能ですが、夜間は警備システムが作動しますので。盗もうなんて考えないでくださいよ?』


 本当に盗み出す人が出てきそうだ。デモンストレーションは逆効果のようだった。


























☆☆☆


 シヴァは酒に弱い。俗に言う下戸というやつである。

 そのくせ、気分が上がると飲んでしまうので、タチが悪い。


「うっ……気持ち悪い……おぇっ」


 甲板から海に向かって胃の中身を吐き出した。暗殺者といえど、人の子である。

 船という状況も相まって、酔いは最高潮だった。


「貴様が伝説の暗殺者か?」


 くたびれたスーツの男が船のへりによりかかる彼女に声をかける。

 筋骨隆々としていたのだろうが、頬は痩せこけ、しぼんでしまっているようにも見える。

 この男、エクセルシアの軍を指揮していた、デーク・タイター元将軍。

 名前を偽り、クルーズ船に乗り合わせていたのだ。


「……っぇぇ…………だ、だとしたら?」

「殺してほしい者がいる」


 足下に写真を放り投げる。エミリアとネロ、そしてサラが写っている。


「私の人生を狂わせたものたちだ!」

「……頼み、料は、っ?」

「なにぃ? 女に払う金などないわっ!」


 この男、いまだに懲りていないようだ。

 連盟問わず、男女平等は宇宙の常識である。それをわきまえなければ、どうなるか?


「……恥を知れ」

「うぐっ……!」


 タイター元将軍の体が少し、浮かび上がる。苦しそうに首を押える。


「……労働(ころし)には対価が必要。まして、我が子を殺せというのなら、なおさら」

「ぐ、か、かねならあるっ! お前の力を試したんだ!」


 それを聞き、攻撃の手を緩める。


「全部は、払えん。これは私が逆転するために必要な資金なのだ」

「……一時の名声など、泡となり消える」

「どうとでもいえばいい、ほら」


 スーツの懐から紙幣を数枚放った。


「その、色白の女以外はこの船にいる。殺してくれたらもっと払ってやろう。そのころには、私もきっと、かつての力を取り戻しているからな」

「……あなたに、安らぎがあらんことを」


 シヴァは、写真と紙幣を拾うと、船の中へと消えていった。





























☆☆☆


 元将軍のやろうとしている、人生の大逆転。

 それはこの船のカジノで大勝ちすることを意味している。


「さ、レイズだ。どうすんの?」


 それも、違法なギャンブルが行われている。

 命の危険性と引き換えに、大金を得ることができる。


「……っ!」


 この船に乗っているのは、金のある人間ばかりではない。借金まみれの負債者も、ただただ命を張ったギャンブルのしたい人間も、それを観戦したい人々もいる。

 無論、普通に乗船した人々はそれを知らない。

 いわゆる、VIP専用の特別施設だ。


「わ、わたしは……」


 彼女の首には太いロープが結び付けられ、それは後ろの機械と繋がっている。


「20ミリ、レイズ……!」


 賭けるのは、ロープの長さ。負ければ負ける程、苦しみが増し、焦りから勝負を急げば、命を奪われる。


「おぉ……これは困った……よほど手がいいに違いない」

「う、うるさいわね! さっさと乗るか降りるかしなさいよッ!」

「そうだな、乗るとしよう」


 男は自分の手札を公開する。スペードの3,4,5,6,7――スペードのストレートフラッシュ。

 ポーカーにおいて、ロイヤルストレートフラッシュの次に強い役だ。


「そんな……っ」

「さ、見せてくれ。とはいえ、俺様の勝ちは揺るがないがね」


 女の手から札が零れ落ちる。スペードとダイヤの2,クラブとダイヤ、ハートのJ、フルハウスだ。

 十分、勝負をするに値する良い手役だ。


「どうして……? こんなの、イカサマよ!」

「自分の不運を俺様のせいにすんな。お前が負けた理由はただ一つ」


 機械が約束通り、20ミリを巻き上げていく。


「俺様より運が悪かっただけさ」

「や、やめてっ! わたしには――かぞ、くが……っっ!」


 ロープは容赦なく彼女の首を締めあげ、命を奪わんとしている。


「よーく、伝えておくぜ。思い残すことなく、逝きな」


 次に挑もうとしていた者は、敗者の末路に怖気づき、後ずさる。

 連戦連勝。ただの一度もノーペアを出さず。自分が負ける手の時は確実に降りる。

 本人の言う強運も、あながち嘘ではないと思わせる運の良さ。

 男の名は――


「さあ! どんどんこの俺様に勝負を挑みな! 金のない奴でも、命を張りたい奴も、俺様が握っている連盟政府の秘密を知りたい奴も、純粋に俺様の力が必要な奴も! 勝った奴の望みをかなえてやる!」


 リスクが霞んで見えてしまうほどの報酬に、腰の引けていた者どもも、勝負に前向きとなっている。


「俺様が! コードマスターだッ!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ