STEP43 私らしい私
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「あ……か、かってに入っちゃ」
「緊急事態なんだ、許せ」
ネロはサラ(レン)とともに民家に押し入る。幸い……というか当然人はいなかったので不法侵入となる。
だが、背中の傷を止血しなくては危険だ。薬箱を勝手に開け、包帯と消毒液を拝借する。
「ひ、人のものをとっちゃだめですよっ!」
「ん、そうだな……」
注意を受け、メモ用紙に“借ります”と書いて治療を再開する。
マフラー、剣、ワンピースとすべてを脱ぎ去り下着姿となる。姿見を使って背中を確認する。腰のあたりに大きな弾痕がある。さすがは殺し屋、場数を踏んでいるようだ。
鞘で多少守られたのか、想定していたより傷は浅い。
消毒液を付けようとするのだが、微妙に届かない。上からやっても、下からやっても。
「ぁ……んっ」
「か、かしてください」
悪戦苦闘しているのを見かねたサラ(レン)が代わりにやってくれる。
「ひ、人のものをとったらお母さまにしかられます……で、でもっ、こまっている人を見すてたらもっとしかられますっ!」
「……ありがっ!?」
かなりしみる。痛いが堪えた。
包帯を巻いて止血を完了させると、着替えを済ませ(服は勝手に拝借した)戦闘準備を完了させる。
「よし……!」
「い、行くのですか?」
「ああ……この惨状を、放ってはおけない」
「で、でもっ……私は、どうすれば……?」
「怖いならここにいればいい。ついて来いと言った覚えはない」
「っいやです! ここで私をまもってください!」
子供らしい我が儘だ。つい、それに乗りたくなってしまう、が。
「おい、サラ」
「レンですっ」
「どっちでもいい……お前を助けてやりたい気持ちはある。でもな、この世界がなくなったら、お前を守った意味がなくなる」
「いいですっ……それでも」
ドアノブにかけた手が止まる。
「こんなっ……私をみとめてくれないせかいっ、なくなっちゃえばいいんです……っ」
「……俺は、捨て子だ」
「すてご……?」
「親に捨てられたんだよ、要らないって」
「ひ、ひどい……っ」
「でも、いい人に拾われたんだ……あんまり不幸とは、思ってない」
サラ(レン)を抱き寄せ、ネロは言った。
「誰も認めてくれないっていうんだったら、俺が認めてやる。お前はお前のままでいればいいんだ。だから“世界がなくなってもいい”っていうな……!」
「そんなの……っ!」
「信じなくたっていい。これから、行動で示すっ!」
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「……涙?」
「え……っ! くそ」
エミリアはレーザーブレードを投げ捨て、涙をぬぐう。
「あーあ! 何やってんだ、ボクは」
「なぜ、泣く? 人は運命に従って生きるのみ」
「知るかよ。なんか、出てくるんだよ」
頬を叩いて頭をすっきりとさせる。
「キミ、運命運命って、つまらなくないか?」
「分からない……その感情が……」
セイレーンの目は、どこか悲しそうだった。
「私には記憶も、感情もない。故に運命に従うしかない」
「……まて、今記憶がないッて言ったか?」
つまり、記憶喪失。
同じ顔の人間が同じ傷を持っているよりも、記憶を失い、別人としてふるまっていると考えた方が理に適っている。
そして、アポロンの炎は、ありとあらゆる病気を治す力がある。致命傷だろうが不治の病だろうがなんでも。記憶を元に戻すことなど、造作もないことだろう。
「ははっ……こいつはいいや……なぁ、キミ、感情が欲しくないか?」
「……止めた方がいい。その先に待っているのは破滅だけ」
「あのな、運命様が何て言ってるか知らないけど、ボクは止まる気はないよ」
目的地は軍の精鋭部隊の守る施設。対してこちらの手持ちはガラクタの没兵器たち。
「キミも“欲しい”って気持ちを知った方がいいよ」
「……貴女は何を欲する?」
「色々あるけど……今は――」
キミの中にいるかもしれない相棒の記憶が欲しい。
「ボクはこう見えても怪盗だぜ? 誰よりも“欲しい”気持ちは大きいし、負けないつもりさ」
「かい……とう……?」
「この宇宙にいっぱいいる、自分の気持ちに正直なおバカさんのことさ……ボク自身も含めてね」
手始めにステルススーツを引きずり出す。これがあれば大体の場所に潜入できる……三分間だけ。
そして“神の手”があれば、攪乱はたやすい。
これだけあれば、ほかにもあるはずだ。侵入を助けてくれる道具が。
要らないとされていたもたちで、最先端施設を攻略する。何とも心が躍る。
「ちょいと手伝ってくれるかな? セイレーン」
「……それが運命ならば、応じる」
一人の怪盗と一人の殺し屋。
かつてのコンビが別の形で再結成した瞬間だった。




