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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第五章 希望の炎
46/80

STEP43 私らしい私

☆☆☆


「あ……か、かってに入っちゃ」

「緊急事態なんだ、許せ」


 ネロはサラ(レン)とともに民家に押し入る。幸い……というか当然人はいなかったので不法侵入となる。

 だが、背中の傷を止血しなくては危険だ。薬箱を勝手に開け、包帯と消毒液を拝借する。


「ひ、人のものをとっちゃだめですよっ!」

「ん、そうだな……」


 注意を受け、メモ用紙に“借ります”と書いて治療を再開する。

 マフラー、剣、ワンピースとすべてを脱ぎ去り下着姿となる。姿見を使って背中を確認する。腰のあたりに大きな弾痕がある。さすがは殺し屋、場数を踏んでいるようだ。

 鞘で多少守られたのか、想定していたより傷は浅い。

 消毒液を付けようとするのだが、微妙に届かない。上からやっても、下からやっても。


「ぁ……んっ」

「か、かしてください」


 悪戦苦闘しているのを見かねたサラ(レン)が代わりにやってくれる。


「ひ、人のものをとったらお母さまにしかられます……で、でもっ、こまっている人を見すてたらもっとしかられますっ!」

「……ありがっ!?」


 かなりしみる。痛いが堪えた。

 包帯を巻いて止血を完了させると、着替えを済ませ(服は勝手に拝借した)戦闘準備を完了させる。


「よし……!」

「い、行くのですか?」

「ああ……この惨状を、放ってはおけない」

「で、でもっ……私は、どうすれば……?」

「怖いならここにいればいい。ついて来いと言った覚えはない」

「っいやです! ここで私をまもってください!」


 子供らしい我が儘だ。つい、それに乗りたくなってしまう、が。


「おい、サラ」

「レンですっ」

「どっちでもいい……お前を助けてやりたい気持ちはある。でもな、この世界がなくなったら、お前を守った意味がなくなる」

「いいですっ……それでも」


 ドアノブにかけた手が止まる。


「こんなっ……私をみとめてくれないせかいっ、なくなっちゃえばいいんです……っ」

「……俺は、捨て子だ」

「すてご……?」

「親に捨てられたんだよ、要らないって」

「ひ、ひどい……っ」

「でも、いい人に拾われたんだ……あんまり不幸とは、思ってない」


 サラ(レン)を抱き寄せ、ネロは言った。


「誰も認めてくれないっていうんだったら、俺が認めてやる。お前はお前のままでいればいいんだ。だから“世界がなくなってもいい”っていうな……!」

「そんなの……っ!」

「信じなくたっていい。これから、行動で示すっ!」





















☆☆☆


「……涙?」

「え……っ! くそ」


 エミリアはレーザーブレードを投げ捨て、涙をぬぐう。


「あーあ! 何やってんだ、ボクは」

「なぜ、泣く? 人は運命に従って生きるのみ」

「知るかよ。なんか、出てくるんだよ」


 頬を叩いて頭をすっきりとさせる。


「キミ、運命運命って、つまらなくないか?」

「分からない……その感情が……」


 セイレーンの目は、どこか悲しそうだった。


「私には記憶も、感情もない。故に運命に従うしかない」

「……まて、今記憶がないッて言ったか?」


 つまり、記憶喪失。

 同じ顔の人間が同じ傷を持っているよりも、記憶を失い、別人としてふるまっていると考えた方が理に適っている。

 そして、アポロンの炎は、ありとあらゆる病気を治す力がある。致命傷だろうが不治の病だろうがなんでも。記憶を元に戻すことなど、造作もないことだろう。

 

「ははっ……こいつはいいや……なぁ、キミ、感情が欲しくないか?」

「……止めた方がいい。その先に待っているのは破滅だけ」

「あのな、運命様が何て言ってるか知らないけど、ボクは止まる気はないよ」


 目的地は軍の精鋭部隊の守る施設。対してこちらの手持ちはガラクタの没兵器たち。


「キミも“欲しい”って気持ちを知った方がいいよ」

「……貴女は何を欲する?」

「色々あるけど……今は――」




 キミの中にいるかもしれない相棒の記憶が欲しい。




「ボクはこう見えても怪盗だぜ? 誰よりも“欲しい”気持ちは大きいし、負けないつもりさ」

「かい……とう……?」

「この宇宙にいっぱいいる、自分の気持ちに正直なおバカさんのことさ……ボク自身も含めてね」


 手始めにステルススーツを引きずり出す。これがあれば大体の場所に潜入できる……三分間だけ。

 そして“神の手”があれば、攪乱はたやすい。

 これだけあれば、ほかにもあるはずだ。侵入を助けてくれる道具が。

 要らないとされていたもたちで、最先端施設を攻略する。何とも心が躍る。


「ちょいと手伝ってくれるかな? セイレーン」

「……それが運命ならば、応じる」


 一人の怪盗と一人の殺し屋。

 かつてのコンビが別の形で再結成した瞬間だった。





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