STEP42 連盟議会議長
議長/マラク(イメージcv.速水奨)でお楽しみください
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「――誰だ……? 許可なく私に会おうとしているのは?」
「いつからそんなに偉くなった……マラク」
部屋の扉が炎とともに吹き飛ぶ。
「入る前には許可を求めろ……大昔には無かったマナーですか?」
「貴様に払う礼節など持ち合わせてないわ……」
全身に炎を纏った青年がデスクを蹴り飛ばす。
それを受けて議長――マラクは盛大なため息をついた。
「何の用ですか……残念ながら、私はとても忙しい」
「“シヴィラの書”は、どこだ……っ!」
青年は胸倉を掴み、問い詰めた。
「貴様が持っていることはもう知っているのだ! 答えろッ!」
「おやおや……欲しいのなら盗めばいいじゃないですか。宇宙飛行士のラピス・ホープ」
「その名を口にするな――!?」
彼の背中に麻酔弾が撃ち込まれる。
その手の力が緩み、崩れ落ちる。
「議長閣下、ご無事ですか?」
護衛の黒服が部屋に入り込んできた。
が、マラクは呆れたようにため息をつく。
「すぐに出て行った方がいい……命が惜しければ」
「へ――――っっ」
黒服達は次から次へと倒れていき、代わりに青年が体を起こす。
「“フェニックスライト”には適合しない人間の生命エネルギーを奪い取る力がある……成程、ひどいことをなさる」
「出来れば貴様の命も奪ってやりたいが……さては、“聖杯”でワシの血を飲んだか」
「そんなわけはない……あなたの考えはもは、もはや時代遅れだ」
マラクは懐から炎を模したペンダントを取り出した。
「まさか……アポロンの炎で」
「だから、その考え方が古い……」
「!?」
青年の体から紡錘形の宝石――フェニックスライトが離れ、ペンダントに吸い込まれていく。同時に、青年の纏っていた炎も消えてしまう。
「秘宝は、それだけでは完結しない。あくまで一部でしかない……」
「っ……どういう、意味だ?」
「これこそが、アポロンの炎の真の姿」
ペンダントが光を放ち、静かに燃え始める。
「万人に秘宝の力を扱えるようにする、それが対となる秘宝の役割。故に、私にはフェニックスライトの力は通用しなかった」
「その程度で勝った気になるなッ!」
青年は地を蹴り、静かに燃えるアポロンの炎を奪おうとした。
しかし、その手は空振り、逆にカウンターを決められる。
「どんなにあがこうと、シヴィラの書の内容を知っている私には敵わない」
「な……に?」
「あなたがエミリアとともに惑星ユグドラシルにやってくることも、こうしてあなたが一人で私の元にやってくることも、すべて知っていた」
「その程度で反応できるものか……っ!」
「ええ、それだけではありませんがね……」
マラクは窓の外の惨事に笑みをこぼす。
すべては彼の思惑通りに進んでいた。
「エミリアは私の妹だ。あなたがどんなに手懐けようと、どんなに再教育しようとも、必ず私に利するように動く……」
「それは、どうだか……」
「あなたはそこで見ているがいい……選ばれなかった者、ラズワルドよ」
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レーザーブレードの刃がセイレーンの髪を焦がす。
「私の名はセイレーン」
「違う! そういうタテマエを聞きたいんじゃぁない。お前がどうして、ネリーにそっくりで! ネリーの剣を持っているのかを、その理由を教えろッ!」
激昂するエミリアを、彼女は不思議そうに見つめる。
「分からない。気が付けば、私は存在していた」
刃が彼女の喉元をかすめる。
「ふざけるのも大概にしろよな……っ!」
「私の運命は、私も知らない。故に私が何者であるかという問いには返答できない」
「お前っ」
「殺したいのなら、そうすればいい。もしそうなら、それが私の運命」
そう告げると、セイレーンは踵を返し、奥へと進んでいく。
無防備に背中を晒し、何をされても反撃できないことは明らかだった。
レーザーブレードは出力をあげれば長さも伸びる。このまま、彼女の心臓を貫くことは容易だ。しかし、後姿はあまりにも、ネリーに似ていて。
つい、確かめたくなってしまった。
エミリアは彼女を押し倒し、スカートのすそをまくり上げ、そのきれいな腰をあらわにさせた。
「っ!?」
そこには、ネリーと同じ、拳大の弾痕があった。
「なんで……? お前、ネリー……」
「私はセイレーン。ネリーではない」
「違う、ここまで同じで、別人のはずはない……ッ!」
体を起こしてやり、目をしっかりと見つめる。
「この顔に、覚えはないか? いや、どんなことでもいい。ボクについて知っていることはないか!?」
「…………」
セイレーンは静かに目を閉じ、ゆっくりと口を開く。
「個体識別番号T-08851俗称“エミリア”連盟統一暦5482に誕生母親は個体識別番号T07982父親は個体識別番号T07679出身惑星タルタロス性別女――」
思わず平手打ちしてしまい、嫌悪感に襲われる。
自分が見殺しにしてしまった相棒が生きていたら、何度そう思ったことか。
あの時止めることができていたら。あの時代わりに自分が残っていれば。
ずっと胸の中でくすぶっていた思いに火を点けられ、わずかに見えた希望にすがって。
だが、期待するだけ無駄だったのだ。
同じ顔の人物が同じ場所にけがをしている可能性は、限りなく低いが、それでもゼロではない。
奇跡に等しい確率で、存在しうるのだ。
「ふざけんなよ……なんで、こんな奇跡みたいな偶然が、最悪な形で起こるのさ……ッ!」
エミリアの頬を、数十年ぶりの涙が流れていった。




