STEP30 森の戦士(戦士とは言っていない)
☆☆☆
土の匂いだ。
自然と神経が研ぎ澄まされる。
モップをはぎ取っていった猫は三毛だった。
紛れ込まれてしまうのは厄介だが、何とかなるだろう。
毛色が森に適応していて見つけにくいが、観察していればわかる。
今通り過ぎて行ったのは茶色は違う。
あの黒猫も違う。
こちらをじっと見ている白猫も……。
――白猫?
保護色でも何でもないのになぜ?
直後、後ろから殺気を感じる。
持ってきていたモップ(持ち手のみ)で放たれた槍を弾く。
が、肝心なそこには誰もいない。
頭上を何かが通り過ぎて行ったのがわかる。
再び後ろへ棒を振るう。がそれも間一髪で躱され再び背後を取られ……を繰り返しては目が回ってしまう。
ネロはゆっくり息を吐きだし、どこから攻撃されてもいいよう構える。
再び背後から、と見せかけて前。
互いの武器がぶつかり合ってつばぜり合いが起こる。
しかし、失血でのダメージがまだ残っていたのか競り負けてしまう。
そこでわざと倒れ体勢を崩させ、技をかけ――ようとしたのだが、相手の逆関節の足からくる猫キックで吹き飛ばされてしまった。
「っ……」
「……お前、”犬派”の人間ではないな?」
「そうだよ……っ!」
相手はそれを聞くと構えを解いた。
「失礼した。てっきり犬派の刺客かと」
そういえば、ミアキスでは謎の派閥争いが繰り広げられているとか。
「ふぅ……どちらかといえば俺は猫が好きだ」
「なにぃっ!?」
ネロは地雷を踏んだかと焦ったが、違った。
「同じ、猫派の人間として歓迎しよう。私はサビ、いきなり攻撃を仕掛けてすまなかった」
どうやら歓迎されるようだ。
☆☆☆
「まさか、狩猟用の罠に人間が引っかかるとはなぁ……」
男たちは自分たちで仕掛けた罠に引っかかっているサラを見てしみじみといった。
つまるところ、かぐわしい香りの正体は獣用の罠であった、ということだ。
「ぅう……」
網で何重にもからめとられてしまい、脱出しようともがくもそんなことはできるはずもない。
男の一人が彼女のにおいをかいでいった。
「こいつ、ナリは女だが男だ。におい的に」
「ほぅ、そいつは怪しい」
「こいつ、俺たちを狩ろうとしてる”猫派”の連中の仲間じゃねぇのか?」
まずいまずいまずい。
なんだか不穏な会話が聞こえてくる。
このまま問答無用でぶすりと――。
「あ、あの」
「おい、質問に答えな」
「う、ハイ……」
はいかなかった。
「お前さん、犬は好きか?」
「え、まぁ……猫よりは」
サラの返答に、男たちはカッと目を見開いた。
これは殺されてしまうパターンかもしれない。
「聞いたかお前ら! こいつは犬好きだ! つまり悪い奴じゃねぇ!」
助かったようだった。
「よぅし。助けてやるからじっとしてな!」
するすると絡まった網がほどかれ、自由の身となれた。
「おい、そんなに腹が減ってんなら俺たちの村に案内してやるよ!」
「ぜひお願いしますっ!」
サラの胃袋は正直だった。
☆☆☆
「はぁ……二人ともどこ行ったのさ?」
エミリアはさらに食料を調達するべく川に来ていた。
釣糸を垂らすこと小一時間。
なんも釣れていない。
【申し訳ありません。カメラをはじめとした全機能をスリープ状態にしていたゆえ同行は皆目見当もつきません……ご安心を。街のシステムにアクセスしお二人の情報がないか調査いたしますので】
「いーよそんなことしなくても。そのうち帰って来るさ」
とか言いつつ彼女はふてくされたままだった。
「なんだいなんだい。ゲームに勝ったから何さ。そんなの現実じゃ何の役にもたちゃしないってのにさ」
【負けたのが悔しいだけ、と】
「そうですよーだっておお!」
釣り竿が大きくしなった。
ようやくかかったのだ。
しかも大物が。
「来た来たぁっ! やっぱボクだってやればっ!?」
糸がちぎれた。
【エミリア氏は釣りでもクソザコ、ですね。天に二物を与えてもらえなかったようで】
M.I.C.の煽りがうざかったので通信を切断した。
「一回失敗したっだけでなにさ。次こそはできるもんね!」
新しい糸に針をつけ、もう一度竿を振る。
今度はすぐに大物が引っ掛かった。
逃がさないよう素早く竿を引っ張り上げた。
「……ゑ?」
人間が釣れた。
その子がかぶっている大きな壺に針が引っ掛かっていたようである。
足が逆関節であるからミアキスの住人であることが分かる。
「…………??????」
人生経験豊富なエミリアでも硬直してしまったのだった。
☆☆☆
――――都市部
「ふぅん……思ったより栄えてるじゃない」
女は高そうなサングラスをずらし街並みを観察した。
「どこにあるのかしらねぇ……”ここ掘れにゃんにゃん”と”招き犬”は……………」
ルパン○世みたいになってきた気がする。




