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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第四章 イヌネコ合戦
32/80

STEP29 偶然立ち寄ったら


「っっっっっしゃぁぁぁあ!!」


 エミリアは念願の瞬間に思わず叫んだ。


「チェッッッックメイトォォォォォッ!!」


 1勝99敗。

 100戦目にしてM.I.C.(最弱設定)に勝利したのだ。

 なお、手加減に手加減を重ねた結果でありM.I.C.が”接待プレイ”や”舐めプ”を学んだということなのであるが彼女はそれを知らない。


「んっふっふ……これでネロくんにもサラちゃんにも勝てるってもんよ!」

「やりませんよ?」


 ネロは過去何年かの経験から、下手に勝ってしまうとしつこく再戦をせがまれ、最後には根負けしてわざと負けてあげるという流れになることを悟っていた。


「はぅ……おなかすいた………………」


 そういってだれているのはサラである。

 ブラディオニキスを盗って以来常に空腹を訴えるようになっていた。


「よし! ネロくんはご飯を作ってきなさい。そしてサラちゃんはその間ボクと勝負だ!」

「はいはい……」

「いいですけど……」



(――数分後――)



 あっさりとエミリアは負けた(笑)

 信じられないくらいの最短敗北である。

 

「な……なな…………」

「弱すぎて話にならないですね……まさかフールズメイトが起こるなんて」


 フールズメイトは最短2手で終わってしまう場合のこと。

 初心者ですら起こさない奇跡の手を成し遂げてしまったのである。


【もうゲームなんてやめてしまえばよいのでは?】

「う、うるさいっ! ボクだってやればできるんだよやればッ!」

「そういう人ほど、大したことないんですよね……お姉さまみたいに」

「きぃぃぃぃぃぃっ!」


 エミリアは駄々っ子のようにチェス盤をひっくり返したとき、エプロン姿のネロが戻ってきた。


「……しゃべっても、大丈夫か?」

「ふん! お前もボクを馬鹿にするっていうのか?」

「何の話か知りませんけど、緊急事態です。食料がほとんどないです」

「え……?」


 船の食料は半永久的に自給できる仕組みになっている。仮にサラが仲間になったのが原因だとしてもなお量は十分なはずだ。


「人口肉の材料も尽きてますし、作物も次の収穫までは時間がかかりそうです」

「まいったな……水は何とかなるにしても、食えないのはな」

「空腹で死んでしまいますよぉ……」


 特に、最近腹ペコなサラにとって断食はきついだろう。


「おいM.I.C. この辺で人が住んでいる惑星はあるか?」

【2.5光年先に惑星ミアキスがございます】

「ふぅん……どこぞの執事サマの出身地じゃありませんか。なら、ちょうどよさそうだな」


 食糧不足を解消するべく、行先はミアキスとなった。


















☆☆☆

 

 惑星、ミアキス。

 衛星はなし。

 発見年度、統一歴582年(大戦時より連盟側に与していたため)

 生存可能域98.2%

 居住域67%

 特産品、動物をモチーフとした彫刻。


 宇宙でも珍しい高居住適性の星である。主に犬や猫を始めとするかつての愛玩動物が数多く野生化しているため、安全な野生の王国としても有名である(感染症には注意) 元々はペット愛好家の人間が自らのペットを連れて移住したのが歴史の始まりであり、大戦時には森林部に住んでいた者達は機動力、平野部に住んでいた者たちは索敵能力にたけた進化を遂げていた。なお、近年では沈静化しているが犬派猫派の派閥争いが絶えないので不用意に立場を明かさず適当に流すのが賢明である。






――――エミリア特性の惑星データファイルより抜粋












 だだっ広い草原に着陸する。めったに母船を着陸させる機会がないので今回は特別である。

 機体のクリーニングやメンテナンス行うため仕方なく、でもある。

 ネロは機体の左半分を清掃することとなった。なお買い出しにはエミリアが行っている。


「……?」


 するとそこへ一匹の猫が現れた。

 物珍しそうに、ネロのにおいをかぎ、最新型のモップに興味を示す。

 猫は何を考えたのかモップに攻撃し、噛みついて猫キックを食らわせる。


「あ、おい……」


 先端をむしり取られ、戦利品を持ち帰ろうと猫は森のある方角へと歩いて行ってしまう。

 

「ちょっ!」


 と、慌てて追いかけるのは禁物である。

 なぜなら、猫という生き物は本来警戒心が高く、何者かに迫られると逃げ出す習性があるからである。

 ネロの動きに驚いた猫は、それでもくわえたブツを落とさないままダッシュで森の中へ消えていった。

 無論、彼もそれを追いかけ、森へと足を踏み入れた。
















 機体のメンテナンスはサラが行っていた。主にエンジンの不調がないか、システム系統に不備はないかのチェックを、M.I.C.のチェックが行き届かない部分を主に行っていた。

 空腹で今にも意識が飛びそうだったが、かろうじてそれをこらえる。

 そんななか、かぐわしい香りが来たらどうなるか?


「……おなかすいた」



 ふらりとその匂いにつられてふらりとついて行ってしまった。

















「ただいまー……あれ?」


 エミリアは町から戻ってきて首をかしげる。

 誰もいない。

 M.I.C.もシステムメンテナンスのため何が起こったのかすらわからない。 


「ネロく~ん……サラちゃ~ん……」


 彼女の声だけが草原にさみしく響いた。


久々のデータファイル。

一応考えてはいます。要望があったらエクスマキナやシェオルなど今まで登場した惑星のものも活動報告に乗せます。

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