STEP24 流刑星
くりえいてぃぶなじかんは大切に。
「よし、それじゃ手分けして情報を集めよう。ここを基準として、ボクは向かい側、ネロくんは左、サラちゃんは右側を頼む。M.I.C.はそれぞれのサポートを頼む」
「了解」
「ぅ……わかりました」
【承りました。それではシステムを三つに分離、並行して作業を行うよう設定します】
☆☆☆
集落の跡。比較的大きな建物の中をネロは進む。カウンター、長椅子、本棚のようなものがあり役所をほうふつとさせる。
あたりをくまなく探していると、
「うっ!」
骸骨のような遺体――ミイラ化している遺体が今もなお存在しているのを見つけてしまった。
【マスター、ご安心を。死んでます】
「知ってる、驚いただけだ」
一応それに手を合わせ、近くの本棚の一冊をとる。紙製の本、見たことのない言語で書かれているようだ。砕いてしまわぬように慎重にページをめくる。
「おい、解読を」
【はい……おや? これは解読するまでもありません。古代言語、俗にいう英語、とやらで書かれた書物ですね】
「英語……なんて書かれているんだ?」
【かすれて認識できない文字もありますが、いわゆる聖典というものでございますね。神が世界を創造する過程を描いた教本のようなものです】
「神、ねぇ……」
【製本されたのは、記述に基づくと――――昔の暦で2108年】
つまりは本物の古文書、というわけか。昔の技術でも5000年近く保存できる紙が製作できたということか。
慎重にページを閉じ、元の位置に収納する。
ほかの情報源がないか探索してみると、あった。旧式のコンピューター。
機械音痴のネロには使い方がてんでわからない代物である。
「ったく……どう使えばいいんだ?」
【外部接続用のケーブルをつないでいただければ解析できます】
教えてもらいながら外付けのハードにケーブルをつないだ。
【これは……セルニウムを使用していない旧型のハードですそれに旧式のプログラミング言語にポンコツの回路とは昔の人はこのように劣ったものを使用していたとは尊敬に値します】
「内容は?」
【失礼いたしました。解析が完了したので翻訳し、転送します】
ネロの持つ端末へファイルが送信された。
それを開いてスクロールする。ところどころ違和感があったものの、なんとなく内容がわかる。受刑者の名簿だ。それも無期懲役に匹敵する罪を犯した人間ばかりだ。
つまり、この星はかつての流刑地。
直接的に手は下さないが殺す。確実に死ぬとわかっているのに人を送り込んだのか。
「悪趣味なデータだな」
【理解に苦しみます。今の言葉にはどのような意味があったので?】
「倫理的にアウトだ。昔の人間はどうも頭が狂っていたみたいだな」
【非常に合理的で寛大な措置であるかと。本来生存に値しない社会のごみを低コストかつ速やかに除去できるのですから。それに死刑よりはまだ望みのある罰かと】
「死ぬよりも苦しいだろ、この星じゃ」
名簿以外のデータもある。
どうやら不毛の惑星を流刑地にする計画は他にもあったようだ。
酸素濃度が非常に薄く、30Gに匹敵する重力、近日点ですら凍死してしまう温度の極限の惑星――タルタロス。そこには思想犯やテロリストが収容された。
高濃度の放射線物質、未知の植物、謎の巨大生物、人間お断りの惑星――ヘルヘイム。大量虐殺や精神のいかれた殺人者が収容された。
そして絶え間なく噴火する火山、常に揺れ続ける大地、地面を覆う溶岩、灼熱の惑星――シェオル。終身刑以上死刑未満の犯罪者が主に収容され、驚くべきことに一定の刑期を生き延びれば釈放も夢ではなかったらしい。
「灼熱の惑星か、言いえて妙だな」
【なるほど、ここは受刑者によって築かれた文明だったということですね】
「だが、謎は深まるな……受刑者ってことは限られた資源しかなかったはずだ。それなのに」
【ここまで高度な文明を発展させた】
「なぁこの惑星には人が住めそうな空洞ってどれくらいあるんだ?」
火山灰をしのぐことができる空間。それがあれば不可能ではないのかもしれない。
【0でございます。仮に存在していたところであっという間に溶岩で埋まってしまいます】
「だったらどうやって……っまさか」
【秘宝の力、でしょうね。それはそうとマスター、水分を取られてはいかがでしょう?】
「必要ない。運動してないからな」
【いえ、どうやらマスターの体内の水分が過剰に減っておりまして。気づかぬ間に脱水してしまう可能性がございます】
ネロは荷物の中から水筒を取り出し、中身を少し口に含む。のどが若干水っぽいが忠告を受け入れておこう。
余談
タルタロス→奈落の神
ヘルヘイム→北欧神話の冥界
シェオル→聖書とかでの地獄
なおにわか知識です




