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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第二章 天才アンドロイド
24/80

STEP22 ボクはね……

☆☆☆

――――数週間後


「ネロ君にご飯作ってもらえるのは幸せだなぁ……」


 エミリアはすっかりと回復して、いつものように――いやそれ以上のうるささでネロに絡んでいた。何かをごまかしているかのように。


「あー生きててよかった」

「まだ病人なんですから、ちょっと静かにしててください……」


 おかゆを運んできたネロはあきれてため息をついた。


「そんな心配しなくてだいじょ――」


 と言いつつスプーンを落としてしまっている。筋力がまだ完全に戻っていないようだった。


「……あーん♡ して」

「はぁ……」


 ネロは仕方なくスプーンをとったとき、


【失礼ですがマスター質問がございます先ほどの“あーん♡”にはどのような意味があるのでしょう?】


 M.I.C.が充電中だった端末を乗っ取り質問をしてきた。


【私は一刻も早く進化しなくてはならない身今の“あーん♡”にこめられt】


 エミリアはフォークをつかむと端末に突き刺した。

 静かに突き刺さった。


「……あーん♡」

「自分で食べれますよね?」

「……チッ」


 弱っている演技ができなくなったので彼女はあきらめて自分の力で食べ始めた。


「……ありがとうな、ネロ」

「どうしたんです? らしくもない」

「助けてもらったんだ、礼くらい言うべきだろ」

 

 かしこまった様子スプーンをくわえているがのエミリアに、ネロはなぜだかむずがゆさを感じた。いつもいつもいつも助けられてばかりで、助けることなんてほとんどなかったから。


「今まで散々助けられてきたから、当然です」

「いや、そっちもあるけどさ……ボクは昔にもキミに助けられたことがあるんだ」


 一体いつの話なのだろうか。少なくとも彼の記憶には残っていない。


「今から16年前、くらい前か。キミがボクの前に現れたときさ」


 のちにネロと名付けられる赤ん坊が入れられた脱出用のポッドがエミリアの前に落ちてきた。あと数瞬遅かったら、彼女は間違いなく命を絶っていただろう。偶然、降ってきた赤子を見て彼女はこう思った。

 この子()捨てられたのか、と。

 エミリアもまた、捨て子だった。無責任な母親が無責任に孕んで無責任に産み落とし無責任に死んだ。故郷の環境を考えれば当然のことだった。そして彼女は運良く生き延びた。

 放っておいたらこの赤子は死ぬだろう。

 だが運が良ければ生き延びるだろう。

 どちらにせよ、今から死ぬ運命にある彼女にとってはどうでもいいことだった。

 はずだった。

 脳裏によぎったのは、死んだ相棒の言葉だった。


『あんたが助けないならあたしが助ける。そんなくだらないお宝よりもよっぽど価値があるからな』


 このまま見捨てたら、死んだ相棒にあの世でぼこぼこにされる。

 そう思ったから助けた。せめて、代わりの親を見つけるまで。

 が、気が付けばその子は物心ついて言葉を話すようになっており、とっさにその子の名前を付けた。

 ネロ、という名前を。


「キミが何者かって? んなもん簡単さ。ボクの救世主さ、それ以上の意味が欲しかったら自分で見つければいいのさ」

「ああ…………っそうだな」

「ありがとう、ネロ」

「っそろそろ交代の時間だ、行ってくる」


 ネロは赤面しながら部屋を出ていく。

 エミリアはそれを見送ってから、ぼそっとつぶやいた。


「盗み聞きはよくないな、M.I.C.」

【おや、気づかれてましたか】


 呼びかけに答えるように部屋のコンソールから声がした。

「カマかけたんだ。あっさり引っかかったな」

【これはしてやられましたね。話は変わりますがエミリア氏、一つ伺ってもてもよろしいでしょうか?】

「何を、さ?」

【先ほどの過去話、どこまでが本当の話なのでしょうか? 私にはあなたの行動が非合理的過ぎて理解が出来ぬのです】


 エミリアはあきれてため息をついた。


「全部本当ですよーだ。非合理で悪かったね」

【でしたらなぜ生きようと思ったので? 心境の変化が唐突すぎて理解に苦しみます】

「知るかよ、んなこと。わかったら誰も苦労しないっつーの……まぁ、そこが人間らしさ、ってことかもな」

【それは興味深い仮設ではありますがなんとも検証が難しい命題ですね】

「あとはサラちゃんに聞いてくれよ。キミのマスターに、さ」

【お言葉ですが、サラ氏は私のマスターではありません】


 マスターがサラではない……?

 ならば誰がM.I.C.を完成させた? 























☆☆☆


 サラは操縦盤の前で考え込んでいた。

 あの時見た光景がいまだに信じられない。

 とても恐ろしかった。

 まるで――――


「交代の時間だ」

「っはい」


 その、ネロがやってきて彼女は一瞬息が詰まった。

 あの光景が頭をよぎる。

 怖い。ただただ怖い。

 得体の知れないものに触れるのが。


「あの、ネロさん……」

「どうした?」


 だが今は、普通だ。

 優しい、いつも通りの。


「いえ、何でもないです」


 いつも通りの、ネロだ。








































☆☆☆


『覚悟は、できてますよ。どんな処分でも僕は受け入れます』

「なんの冗談かね? 君はとんでもない功績をあげてくれたのだ。報酬を与えたいくらいだ」

『随分と皮肉がお好きですね、議長殿。僕は取り返しのつかない失敗を……究極のコンピューターチップを奪われるという失敗を犯した!』

「だから何だ? あんな”ガラクタ”などどうでもいい……」

『っいったい何を考えているのですか?』

「知る必要はない……フレデリック・ソーン。後で報告書を送ってくれたまえ」


 男は通信を切ると、何度も確認した映像を再び再生した。

 まばゆい光。 

 そして何かを創造しているネロ。

 彼の”白く輝く”瞳がカメラをとらえると、映像が途切れる。


「そこにあったのか…………"あれ"は」


 


無理やり終わらせました、まる。


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