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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第二章 天才アンドロイド
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STEP19 天敵

そろそろ一周年だなぁ


※誤字見つけたので修正

「――デバイスのスイッチを入れた。接続は?」


 エミリアはコンタクトレンズ型の録画デバイスを装着する。

 時刻は惑星時間2600。機械様の設定上は夜中となっている。


『良好です!』

『――なぁこれってどう使えば』

『きゃっそれは触っちゃダメなやつですッ!』


 通信機の向こう側が騒がしくなる。機械音痴なネロが四苦八苦している様が思い浮かび思わず笑みが浮かぶ。

 だが直後に、かつての相棒の顔が頭によぎる。

 彼とよく似た顔立ちの、最愛のパートナー。 妹のように愛していた。

 だが――今はもういない。

 死んでしまった。

 代わりにネロを拾った。かつての相棒が生まれ変わったかのようだった。もう二度と失いたくない。

 それゆえ――彼をバックアップに置いた。罠である可能性がわずかでも残っているなら、失ってしまう可能性があるなら、自分一人で行く。


「二人とも! 準備はいいか?」

『ああ』

『はいっ!』

「それじゃ、いきますか!」

















 指定された出入り口を発見する。ポケットからマスターパスを取り出し扉を開く。

 蛍光塗料の光のみが照らす廊下はなんとも不気味だった。


「暗視モードに切り替える」


 深く息を吸い込んで、吐く。全神経を研ぎ澄ませ警戒する。

 待ち受けているのは殺人ギミックだ。生半可な気持ちでは危ない。

 一歩、二歩と踏み出していく。

 ――――!

 反射的に上体をのけぞらせ飛来したモノを間一髪でかわす。

 回転するノコギリの刃。反射しないよう黒く塗装されていた。


「うっ!」


 赤い光が眉間に当たっている。

 そのまま倒れるように地面を蹴る。と、天井からトゲの付いた鉄板が落ちてくる。


「っざけるな!」


 反射的に足を突き上げ鉄板を受け止める。レーザーが足をかすめる。


『大丈夫ですか!?』

「ギリギリ、な」

『殺人トラップは伊達じゃないってことですね……』


 エミリアはトゲ付き鉄板を脇に捨てる。トラップが無いかをしっかり確認しながら起き上がる。

 先の通路を見据えていると、妙に視界がちらつく。


「サラちゃん、この映像をスキャンしてくれ」

『はい……っこれ、赤外線センサーです』

「ひゅー……油断させておいてこれか」


 慎重に歩を進め、壁を観察してみる。

 僅かな窪みの奥に何かがあった。

 試しに先ほどの鉄板を引っ張ってきて先の通路に放り投げる。


 ――――バツッッ!!


 両脇の壁が瞬間的に閉じ、それを押し潰してしまった。


「おーこわ」


 再び壁が開くと、ぺらっぺらになった鉄板が姿を現す。

 彼女は赤外線用のゴーグルを身につけ、息を深く吸い込む。

 髪をしっかりと束ねて垂れないようにし爪先を危険地帯へ突入させる。ゆっくりと、まずは上半身を通す。慎重に足を持ち上げ先に進む。が、その先に踏み下ろせないので宙に浮かせておく。


「一旦引いて……」


 足を引き戻しルートを検討する。今度は壁際に進み、前へ出る。今度は足を壁に押し付け上半身を極力動かさないように反対の足を浮かせ一気に難関を突破させる。そこを軸とし体をのけぞらせながら回転し着地する。

 危なげなく進んでいくも、ゴール地点で問題が発生する。

 線が格子状に張り巡らされていて抜ける隙がないのだ。


『そんな……』

『通す気はない、ってことですか』

「んにゃ……通れるぜ、多分な――――っ!」


 エミリアは思い切り跳んだ。センサーが反応してから壁が動くまでの僅かな時間で突破するっ!

 着地に失敗し転がりながらぴったりと閉じる壁を確認する。成功だ。


「ふぃ~……セーフ」


 お宝は目前だった。彼女は髪を解きながらカードキーで扉を開ける。計器盤やらモニターやらがいっぱいある部屋だった。中央には一際大きな柱――これの中にM.I.Cとやらが内蔵されたメモリーが格納されているのだろう。


「ネロくん、サラちゃん。問題はないか?」

『なさそうですね』

『不審な反応はありません』

「うん、取り越し苦労だったな」


 エミリアはチップを本体にセットし目的を果たそうと――


「っ誰だ!?」


 振り替えるより早く、体に鋭い痛みが走り何かを注入される。

 しかし彼女の体は大抵の毒物が効かない。この程度なら耐えられる。反撃のため武器に手を伸ばす。


「ネリー―――?」

 

 襲撃者の顔が、かつての相棒を思い出させる。わずかに生まれた隙をつかれ再び謎の薬剤を注入された。一気に全身が弛緩し背筋に悪寒が走る。

 紫色のセミロングの髪。背にある一対の剣。覇気がかけた気だるそうな表情。

 何から何まで、似てる……!


「ぁ…………っぅ」


 たまらず柱に寄りかかる。息をするのがつらくなってくる。


「――ククッ……ファッハハッハハハハハッ!!」


 急に電気がつく。眩しくて目を細めようとしたが瞼を思うように動かせない。

 息を吸い込むのでさえ重労働だった。

 かろうじて声の方向へ顔を向けた。


「お、まえ……っ!」


 完全武装した部下を多数従えたフレデリック・ソーンの姿があった。


「おいおい……辛そうな”演技”はやめろよ」


 彼はスーツの懐から無針注射器を取り出しエミリアの首筋に押し当てる。避けようとしたが思うように動けず薬剤を注入されてしまう。


「ぁぅっ…………」

「たかが筋弛緩剤で君がやられるわけもないだろう? まぁこれは死刑執行に使われる特注のものだがね」


 足の力が完全に抜けてしまい、柱を背にへたり込む。


「君に打ち込んだ量は致死量の20倍! これぐらいしないと効かないだろ?」

「っあい、かわらず……だな」

「………まだ口を動かせるか」


 再び薬を注入される。胸が苦しくなってきた。


「っ――――――はぁっ!」

「そうだよ……その顔だよっ! 屈辱でゆがむ君のその顔が見たかったのさァッ!」

「だまし、やがって……」

「クク……とんでもない! M.I.Cは君の後ろにあるさ……まだ未完成だがなァ」


 彼女は気取られぬよを右手を後ろに引く。


「苦労したよ……人生経験豊富な君の隙を作るためにどうするべきか。ちょっとやそっとの衝撃じゃ君の心は動くはずもない」


 ゆっくり腕を柱に当て、体を持ち上げる。


「そこでこいつの出番だ。君の死んだ相棒にそっくりな殺し屋を見つけたのさ! そこからは簡単さ。君が通りそうな宙域を通る政府の船を襲わせる。そうすれば警戒心の高い君なら戦力を強化しようとするだろう? となれば僕のえさに食いつかないわけがない!」

「……っ」

「くやしいか? 他人の掌の上で踊らされるのは?」

「………」


 体を持ち上げ、チップをセットした箇所に手を伸ばす。


「――――!?」


 気が付くと腕に剣が突き刺さっていた。一瞬の出来事だった。殺し屋の少女に刺されていたのだ。焼けるような痛みが走る。


「ハハハハハハッ! 妙な動きはしないほうがいい……彼女に殺されるぞ?」

「つっ…………」

「忘れもしない……君が僕らの獲物を横取りした! あの時の鮮やかさ、演技力……嫉妬してしまったよ。だがそれでもなお美しいと感じた。だからこそ僕は君がほしい! 君の技術と美貌を独り占めしたいのさ!」

「…から……んだ」

「うん?」

「うざいんだよ……お前」


 何気なくはなったエミリアの言葉が彼の逆鱗に触れた。


「うるさいッ! 僕は何も悪くない。悪いのは僕の心を刺激した――――――君の方だッ!」


 左胸に注射器を当てられる。

 

「これ以上受けて、生きていられるかな?」

「ボクが、死んで、いいのか?」

「君の脳データを取る準備はできているさ」


 突如、爆発音がした。

 彼の部下たちが蜂の巣をつついたようになる。


「……ふん、命拾いしたな」


 彼は部下の指揮をとるべくエミリアを放置してその場を離れる。

 だがエミリアは安心できなかった。

 爆発を起こした犯人に心当たりがあったからだ。


「ネロ……っ!」

ゲ○ムの社長に感化されたとこある

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